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M17星雲の光と影

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2006.06.17
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カテゴリ:その他
昨日のブログにいただいたコメントに返事を書こうと思ったのですが、ちょっと長くなりそうなので、こちらで答えることにします。

説明なしで、いきなり「男性性」とか「女性性」ということばを使ったので、おそらくわかりにくかったかもしれませんね。あらためて男性性と女性性について一言述べておきます。

私の考えを箇条書きで示します。

1 まずこの「男性性」、「女性性」は、男性の性質、女性の性質という意味ではありません。

そもそも人間のある種の性向や性質を一方の性のみに負わせ、もう一方はその性質とはまったく無関係というようなことは現実的にもありえないと思います。だから、男性特有の性質、女性特有の性質というようなものは存在しないと私は考えています。

2 「では、男性性も女性性も存在しないとおまえは考えるのか」と問われたら、それに対する答えはノーです。それらは存在している。ただし、それは「フィクション」としての存在である。私はそう考えます。

私の考えのいちばん基本にあるのは、「人間というのはとにかく複雑怪奇な性質をもった生き物だ」ということです。何を考えているのかさっぱりわからないし、自分の考えに矛盾するような行いをしばしば行う。それが人間の「本性」だと私は思っています。

だから自分の理性が考えるところの「正しい」ルールを社会の隅から隅まで浸透させて、それによってよりよい社会にしようというような考え方に私は絶対に与することはできません。なぜかといえば、それは人間の本性に反する行為だからです。そして、日常的な感覚ではおよそ想像もできないような残虐な行為、非人間的な行為は、すべてこの「正しいことの徹底」という形をとってきたと考えています。人間も、その人間が作る社会も基本的に「ねじれて」いるものであり、さまざまな矛盾をはらんだものである。だから、理性によって世の矛盾や不正を「徹底的に」正すのだという考え方には、私は徹底して異を唱えます。理性の単純化ほど危険なものはないからです。それは歴史が証明していると思います。

おっと横道に入りかけてますね。いまは男性性、女性性の話だった。とにかく私がいいたかったのは、人間はそのようにわけのわからない生き物だということです。でも、そのようなわけのわからないものをそのまま野放しにしていたのでは、秩序というものが形成できません。若干無理はあったとしても、いくつかの基本的なラインで人間を分割し、よりコントロールしやすい社会秩序を作り出そうじゃないか。昔の人間はそう考えたのだと思います。

人類全体をいくつかに分けることによってコントロール可能な状態を作り出そう。その一番最初の分割線がおそらくは「性別」だったんだろうと思います。この分け方に異を唱える人間はいないはずです。それは生物学的、性的特徴によって、一義的に分類できるからです。

そして、性別によって人類を二分し、「ほんじゃ、男というのはこういうもんで、女というのはこういうもんでってことにしとこうか、暫定的に」という考え方で、素朴な男性性、女性性というものがその社会に生まれたのだと思います。

そして、これは特定の文化においてはかなり共通性、普遍性をもっていた。その社会に住んでいる限り、暗黙のうちに「男性はこう、女性はこう」という分け方が社会の隅々にまで浸透している。それは基本的にはフィクションです。つまり、「暫定的にこういうことにしとこうね」という取り決めの世界です。そういう仮の取り決めとして、社会には男性性も女性性も存在している。私がいいたかったのはそういうことです。

ただこの取り決めはかなり浸透力が強い。単なる社会的虚構というだけではなく、個人個人の意識の中にまで、それは染み通っている。だから、「オレは男だから、こんな情けないことはできない」とか、「女ですもの、ここはじっとがまんして」というふうに、自分の内面まで縛られてしまう。そういう規制力をもっているわけです。

その規制を束縛と感じる人も当然出てくる。とくにそういう社会意識に基づいて、特定の性が社会的に不利な状況に置かれているとしたら、「そういう性差別には根拠がない」と支配されている側が考えるのは、ごく自然な反応です。

そこで性差別に対する反対運動が起こってくる。私はこれは自然な流れだと思うし、妥当な方向性だと思います。

でも、そこで「徹底的に性差そのものをなくしてしまおう」とすると、そこでいろいろな問題が生じてくる。そうも考えます。それはたしかにフィクションとしての区別だったのですが、少なくともフィクションとしては必要だったわけです。混沌の中から秩序を形成するために。

長くてすみません。つまり、私のいう男性性、女性性というのは、人間が普遍的にもっている性質のある特定の側面という意味なのです。だから、その人間が男女どちらの性に属するかということには基本的には関係がありません。あえて他のことばでいいかえれば、男性性は「切断」機能、女性性は「包含」機能、そういう性質を指すことばだとお考えください。

当然、どんな人間の中にもこの両者は存在しています。ただし、両者の比率は人それぞれでしょう。その比率のあり方がその人間の性格をかなりの部分で規定する。そう考えてもいいと思います。

でも歴史的に男性は、その「切断」機能を多めに負わされてきたし、(「きっぱり、合理的、理性的に行動せよ」)、女性は「包含」機能をより多く担わされてきた。(「あたたかく、包みこむ母性をもちなさい」)

だから、男性にも当然女性性が存在し、女性にも男性性が存在している。でも、同時にそれらは社会的に抑圧されてもいる。男性の女性性、女性の男性性については「そんなものもってないことにしとけよ」という社会的圧力がたえずかかっている。そういうことだと思います。

だから、多くの場合、男性が想像の中で作り上げた女性像というのは、しばしば女性性を必要以上に誇張、強調する傾向がある。(だからといって、女性が想像の中で作った男性像が必要以上に男性性を帯びているとは私には思えないのですが、これはなぜでしょう。私にはその理由はよくわかりません。)

えっと、ようやく終着点についたかな。だから、昨日のブログに書いた唄の歌詞よりも、つまり男性が想像で描いた女性のあり方よりも、現実の女性はもっと「男性性」をもってるんじゃないでしょうか。私がいいたかったのはそういうことなんです。現実の女性は、そんなに都合よく男性のイメージ通りの「女性」はやってられないわよ。そう思っておられるのではないか。そういうことなんです。

なにぶん私は男ですので、こういう考え方自体にも、日本社会の男性特有のバイアスがかかっていると思われ、以上述べたことが女性の方の賛同を得られるかどうか、まったく自信はありません。

以上述べたような理由から、私は染色体が性差を決定するという考え方にも正直言って賛成できません。それはあくまでも人間が社会の中で作り上げたフィクションだと思っていますから。

でも、最近時々思うのは、これまでの抑圧が強かったばかりに、その反動が起こり、「そんな抑圧ははねかえせ」(これはまったくもって当然の動きだと思いますが)とばかりに、性差そのものを根本から否定しようという動きがやや強くなりすぎているのではないかということです。

若い女性の言葉遣いにもそれが表れているようにも思えます。女性性の否定が自分にとって自然であればそれは少しもかまわないと思うのですが、「えっと、私はもう少し、すなおに女の子やってたいんだけど、それって反動派扱いされちゃうおそれがあるから、思い切って女性性捨てちゃおう」というような「反動の反動」に突き動かされている人がいると、ちょっとかわいそうかなという気がします。まあ、少し考えすぎかもしれませんが。

私の男性性、女性性に関するお話は以上です。あんまり面白い話ではないと思うのですが、いわゆる世間の常識とは異なるところがあるかもしれないので、あえて長々と説明してみました。退屈だったらごめんなさい。

こんなへたっぴいな文章のブログですが、なんとなく知性と理性のバランスがとれた多くの女性の方々に支えてもらっているような気が日頃からしているものですから、だらだらと書いてしまいました。

ももさん、これで答えになってますかね。「ったく、だから男って理屈っぽくていやなんだよ」といわれれば、「うーん」といって沈黙するしかないわけですけれど。





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Last updated  2006.06.17 21:34:47
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和久希世@ Re:大江健三郎v.s.伊集院光1(03/03) >「彼はこう言いました。「それもそうだ…
kuro@ Re:「チャンドラーのある」人生(08/18) 新しいお話をお待ちしております。
あああ@ Re:大江健三郎v.s.伊集院光2(03/03) 非常に面白かったです。 背筋がぞわぞわし…
クロキ@ Re:大江健三郎v.s.伊集院光2(03/03) 良いお話しをありがとうございます。 泣き…
М17星雲の光と影@ Re[1]:非ジャーナリスト宣言 朝日新聞(02/01) まずしい感想をありがとうございました。 …
映画見直してみると@ Re:大江健三郎v.s.伊集院光1(03/03) 伊集院がトイレでは拳銃を腰にさして準備…
いい話ですね@ Re:大江健三郎v.s.伊集院光1(03/03) 最近たまたま伊丹作品の「マルタイの女」…
山下陽光@ Re:大江健三郎v.s.伊集院光1(03/03) ブログを読んで、 ワクワクがたまらなくな…
ににに@ Re:非ジャーナリスト宣言 朝日新聞(02/01) 文句を言うだけの人っているもんですね ま…
tanabotaturisan@ Re:WILL YOU STILL LOVE ME TOMORROW(07/01) キャロルキングの訳詩ありがとうございま…

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