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カテゴリ:メキシカン・アメリカンな暮らし
ある日、ネットで公開されている投稿写真を何気に眺めていたのだが、その中に、『Mexican stare down(メキシカン ステア ダウン)』と題した写真があった。
『Mexican stare down』という言葉の存在をその時初めて知った私は、ネットで色々意味を調べてみたのだが、新しい俗語らしく、意味もはっきりとは確定していないようである。 ただ、『Mexican~(メキシカン~)』と表現されているように、語源はメキシコ人に関係しているということは確かで、なんでも、『メキシコ人は人をジロジロ見る傾向にある』という考えから、『人をきまり悪くさせるほどあからさまにジロジロ見つめること』という意味で『Mexican stare down』という言葉が使われるのだそうだ。 実際、私が見かけた例の写真にも、何人もの女の子たちが一斉に一方向をじっと見つめているという場面が写されており、『Mexican stare down』というタイトルがつけられた理由もやっと分かったのだが、場合によっては、『Mexican stare off(メキシカン ステア オフ)』が使われる場合もあるという。 以下に、『Mexican stare down』(もしくは、『Mexican stare off』)の使われ方をいくつか紹介していきたいと思う。 意味1:『きまり悪くさせるほどあからさまに人をジロジロ見つめること。または不快感を感じさせるほど露骨に視線を送ること。特に、男性が女性を性的な興味を示してジロジロ見ること。』 例1:I saw the boys who sat next me on the bus giving me a Mexican stare down. (バスで隣の席になった男の子たちったら、私のことをジロジロ見つめていたのよ。) 意味2:『目を反らさずにじっと互いを睨みあうこと(*威圧感・緊迫感を伴ったり、挑戦的な意味が含まれることが多い。)』 例1: It was a Mexican stare off, from her to him and from him to her. (あの娘とあいつ、互いにジーッと睨み合っていたぜ。) 例2:This morning, I entered into a Mexican stare down with a stray cat, and we were just staring at each other for about 30 seconds.(今朝ね、野良猫とものすごい睨み合いになって、30秒もの間ひたすらジーッと互いに睨んでいたのよ。) 意味3:『目を反らさずにじっと互いを見つめあうこと。にらめっこすること。(*意味1と意味2と異なり、行為に伴う感情や意図は特に重視されない。)』 例:I was having a Mexican stare down with my newborn baby. (僕は、生まれたばかりの赤ちゃんとにらめっこしていた。) *注: stare offは、意味1では用いられず、特に意味2の意味で活用されることが多い。 以上が私なりに分別した意味と使用例である。 私個人としては、メキシコ人が聞いて余り気持ちのいい思いをしない表現なので使うことはないのだが、みなさんにも意味を参考程度に分かって頂けたらと思い、今回取り上げた次第だ。 アメリカでは、『メキシコ人は人をジロジロと見る』と思う人もいることは事実で、最近は特にネットの質問コーナーのようなサイトでも、『何故メキシコ人は人のことをジロジロ見るのか?』などという質問も少なくない。 もちろん、「メキシコ人全てが」という前提ではないとは思うのだが、Mexican stare downという言葉が誕生したくらいなのだから、『メキシコ人は人をジロジロと見る』説に何か根拠があるに違いないという思いも否めないところだ。 以下に文化的なことも含めて、『メキシコ人は人をジロジロ見る』という考えを検証してみたいと思う。 説1:メキシコでは人を見つめることは無作法なことだと見なされていない。 everythingESL.netのJudie Haynes(ジュディー・ハインズ)氏によると、多くの中南米の国々においては、人を見つめることは特に無作法なことではないのだそうだ。 また、中南米に限らず、ヨーロッパ、地中海、アラブ諸国などの国々の中にも、人を見つめることは無作法なことではないと見なしている国もあるのだとか、、、。 人を見つめると失礼になる国、人を見つめることは自然の行為とみなされる国があるというが、メキシコは恐らく後者にあたるのではないかとされている。 説2:メキシコは男性優先主義の国であり、特に男性が女性を見つめても構わないとする傾向がある。 特に、男女間の駆け引きにおいては、見つめることもコミュニケーションの一つと考えられている場合もあるそうで、相手と視線が合うまで見つめることもあるのだとか、、、。 また、メキシコでは、あたかも社交辞令のように、男性が女性に口説き文句で話しかけたり、口笛を吹いたり、注意をひくために車のクラクションを鳴らしたりする場面も割と多く見られるように思うのだが、男性が女性を見つめることもごく自然な行為であるとされ、かえって、見つめることも「おだてる」という意味合いがあるのだそうだ。 つまり、「興味がある」と思っていることを示すことが別に恥ずかしいことではないとされているという。 私の周りでは、『外国に来て、まだ戸惑っているから(または、興味津々だから)ついジロジロ見てしまうのでは?』、『メキシコ人に限らないのでは・・・?』、『見つめ方が違うだけで、特に男性が女性のことを眺めたりするのは万国共通ではないか?』などという声も聞かれたが、いずれにせよ、アメリカにおける『メキシコ人は人をジロジロ見る』という考えには、既記のような文化的な事情が幾分関わっているのではないかとも思ったりする。 と同時に、近年もアメリカにおいて、メキシコ人を含めた中南米の人々の移民人口が増え続ける一方で、ある種の戸惑いを隠せないアメリカ人もいるということが垣間見れたような気がするのである。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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初めて聞いた言い表しです。桃太郎に聞いて見ます。
それとも、テキサスとかメキシコ系が多い所だけにしか使われてないとか?(そんなことはないと思いますが。。苦笑) こちらにもメキシコ人の留学生とかかなり多いですが、そうですねー、男性は結構ジーっと見る人多いかも。。女性はそうでもないと思うのですが。。 (2008.03.06 04:05:51)
日本人からしてみると、白人だってそうとう人のことジロジロ見ますけどね(^_^;)。
まぁ中華系スーパーに行けば、中国人もジロジロ見ますし、韓国スーパーに行けば韓国人もジロジロ見ます。 そして日本語補習校では、アメリカで生まれてアメリカで育った子どもたちが半分以上いるところなんですが、それでも校内を隣のグラウンドに行くアメリカ人のサッカー少年たちが通るとみんなでジロジロ見ちゃうそうです(^_^;)。 自分と同じ種類の人間が固まっているとき、ちょっと毛色の違う人間が混ざってくるとジロジロ見ちゃうもん‥‥なんじゃないか、という気がしますね。 そういう意味で、アメリカに住む白人たちは、これまでマイノリティになった歴史がなかった、一種『幸せな人たち』なわけで、その幸せさがこういう俗語を産んだという、ある種の無神経さがあるように感じるんですけど、それも常にマイノリティである者の僻みなのかもしれませんしね。 この言い回しには、そうした微妙な難しい面をはらんでいる気がするんですけど、それに気付いていない人はちょっと問題あるのかな‥‥、なんて、うがった見方をしてしまいそうです。 (2008.03.06 08:30:47)
>初めて聞いた言い表しです。桃太郎に聞いて見ます。
それとも、テキサスとかメキシコ系が多い所だけにしか使われてないとか?(そんなことはないと思いますが。。苦笑) 私の周りでも、この言い回しは聞いたことがないという人が多く、どうやらまだまだ浸透していないようですが、ふぐ太郎さんの仰るように、やはりメキシコ人の移民が多い地域では使われているようです。 ただ、時として、メキシコ人に対しての中傷ともとれるような使い方がされるので、メキシコ人やメキシコ系の人がこの表現を使っているのは聞いたことが余りないですね、、、。 元々は、Mexicanという言葉を『stare down』の形容として使っただけの表現だったらしいのですが、徐々に意味が膨らんでいき、ただの『stare down』とはまた異なった意味にも派生していったようです。 >こちらにもメキシコ人の留学生とかかなり多いですが、そうですねー、男性は結構ジーっと見る人多いかも。。女性はそうでもないと思うのですが。。 確かに、視線が熱い人が多く、特に男性の方に多いですよね。 今はもう慣れてしまったせいか、余り違和感も感じなくなったのですが、日本から来たばかりの時は、アメリカ人が目を合わせて話そうとすることにも驚いたことを覚えています。 視線にしても、やはり文化の違いというのはありますよね。 (2008.03.06 08:40:35)
>日本人からしてみると、白人だってそうとう人のことジロジロ見ますけどね(^_^;)。
確かにそうですよね~。(笑) 私が住んでいる地域はアジア系が2%しかいない為か、恐らくもの珍しいという意味で、かなりの頻度でジロジロ見られたりします。(^^:) それでなくとも、視線に関してはやはり日本人よりも遠慮が余りないような気がしますしね、、、。 >まぁ中華系スーパーに行けば、中国人もジロジロ見ますし、韓国スーパーに行けば韓国人もジロジロ見ます。 うちの主人に言わせれば、日本に居た時は日本人にジロジロ見られた経験が多いそうですから、結局どこでもジロジロ見られるというのはあるんですよね、、、。 >そして日本語補習校では、アメリカで生まれてアメリカで育った子どもたちが半分以上いるところなんですが、それでも校内を隣のグラウンドに行くアメリカ人のサッカー少年たちが通るとみんなでジロジロ見ちゃうそうです(^_^;)。 自分と同じ種類の人間が固まっているとき、ちょっと毛色の違う人間が混ざってくるとジロジロ見ちゃうもん‥‥なんじゃないか、という気がしますね。 作法がどうのというよりも、反射的なことや集団行動の心理も少なからず関わっているのかもしれませんね。 良く、グループでいるメキシコ人がジロジロ見ると指摘されるようですが、この場合は、こずえさんの仰るように、「ちょっと毛色の違う人間が混ざってくるとジロジロ見」てしまうものであって、特異に見られる行為でもなさそうですよね。 (2008.03.06 09:10:15)
初めて聞きました。。。。って、言える程、英語、分かってないのですが(^_^;)
国民性でそう言う傾向があるにせよ、 あまりいい意味合いには聞こえないので 使い方には要注意なのでしょうね。 皆さんのおっしゃるように、メキシコの方に限らずアメリカ在住中はじろじろと見られたように思うのですが。 移民の国とはいえ、他所から入ってきたって言うのに対して厳しい所がありますよね。 (2008.03.06 10:35:07)
>そういう意味で、アメリカに住む白人たちは、これまでマイノリティになった歴史がなかった、一種『幸せな人たち』なわけで、その幸せさがこういう俗語を産んだという、ある種の無神経さがあるように感じるんですけど、それも常にマイノリティである者の僻みなのかもしれませんしね。
>この言い回しには、そうした微妙な難しい面をはらんでいる気がするんですけど、それに気付いていない人はちょっと問題あるのかな‥‥、なんて、うがった見方をしてしまいそうです。 ヒスパニック系がマジョリティーになりつつある今となっては、焦りに似た戸惑いをかつてはマジョリティーだった白人から感じることもあるのですが、例の俗語に関しても、メキシコ人に対しての批判や軽蔑を含意している部分もあるような気がします。 メキシコ人がジロジロ見ることを、『マナーがなっていない』とか『教養がない』などと指摘するパターンも良く目にしますが、自分はtrue Americanだと主張して他の人種や他の文化を排他する人たちを見ていると、アメリカ社会の意識というか、社会的地位は昔と余り変わっていないのだなと気づかされますし、まず、『Mexican stare down』という言葉が出来あがってしまうこと自体、それを物語っていますよね、、、。 実は、このテーマについてずっと書きたいと思いながらも、正直どのように書けばいいのかかなり迷いました。 こずえさんが仰っていらっしゃった、『この言い回しには、そうした微妙な難しい面をはらんでいる』ことには私も同感で、この俗語の誕生の背景には、移民問題、文化の衝突、ヒスパニック系人口の増加によるアメリカ社会の動揺など、一言では語れないような問題をはらんでいると感じましたが、そのことについてもいつか是非じっくり書いてみたいものです。^^ (2008.03.06 10:38:30)
サンディエゴからユタカン。です。
へえ~、そのような言葉があったんですね。 知りませんでした。 名詞で使われるん ですね。 僕も人のことじろじろ見ちゃう人 なので、メキシコ人にそういう特徴があるなんて 気にも留めませんでした。爆笑。 (2008.03.06 12:00:33)
>初めて聞きました。。。。って、言える程、英語、分かってないのですが(^_^;)
国民性でそう言う傾向があるにせよ、あまりいい意味合いには聞こえないので使い方には要注意なのでしょうね。 私もつい最近初めて知ったのですが、初めてこの言葉を聞いた時は全く意味が分かりませんでした。 意味を知ると、使いたい言葉ではないなと思いましたが、実際、メキシコ人やメキシコ系の人が使っているのは余り聞いたことがないですね、、、。 ほんとに、まめちびぽちさんの仰る通りで、余りいい意味には聞こえないので使い方には気をつけたいものですよね。 >皆さんのおっしゃるように、メキシコの方に限らずアメリカ在住中はじろじろと見られたように思うのですが。 私も、アメリカ(特にアジア系の人口が少ない地域)では割と周りからジロジロ見られていますが、やはりメキシコ人に限らず、、、といった具合です。 アイコンタクトを避ける日本人からすれば、欧米人は視線に関しては余り遠慮がないように思えますね。 今ではもう慣れてしまったのですが、興味があるもの、または自分が見たいものは堂々と見てもいいという風潮も少なからずあるような気がします。 (2008.03.06 23:57:50)
>移民の国とはいえ、他所から入ってきたって言うのに対して厳しい所がありますよね。
アメリカに来る前には、アメリカは「人種のるつぼ: melting pot」というイメージがありましたが、実際に住んでみると、見えてくるものって沢山ありますよね。 最近では、「人種のサラダボウル」という表現のされ方がなされているようですが、確かにアメリカは色んな人種の人たちが住んでいるものの、互いに融合するという訳でもなく、人種による住み分けが自然になされており、また、それが裏目に出てしまって移民同士の間にも見えない壁を作っているようにも思えます。 最近は特に、ヒスパニック系の人口増加をアメリカの最大の移民問題として取り上げていますし、それに伴う人種差別もあるようですが、移民大国としての課題はかなり多いですよね、、、。 (2008.03.06 23:58:10)
>へえ~、そのような言葉があったんですね。
知りませんでした。 名詞で使われるんですね。 私もつい最近この言葉と出会ったのですが、意味を知ると、余り使いたい類の言葉ではないなと思いました。 日本に居た時に、外国人をジロジロ見る日本人の視線を『the Japanese stare down』とほぼ軽蔑の意味を込めて表現する人がいましたが、やはり余りいい気はしなかったですね、、、。(^^:) Mexican stare downの場合はどんどん意味も派生していっているようですが、今のところは名詞で使われることの方が多いようです。 >僕も人のことじろじろ見ちゃう人なので、メキシコ人にそういう特徴があるなんて気にも留めませんでした。爆笑。 考えてみれば、私もアメリカに来てから視線が熱くなったような気がしますね。(笑) 日本にいた時には、ちら見をかなり意識していたのですが、アメリカでは堂々と見てしまうこともしばしばです。(^^;)ゞ あと、会話をしている時もアイコンタクトをしてしまいますね。 日本に帰国してから、日本人の友人たちと話をしている時に、相手に目を反らされることが多かったのがとても印象的でした。 視線にもやはり文化的な違いというのが幾分あるように思えますし、視線に対しての考え方の違いというのもありそうですが、ジロジロ見てしまうというのは結局人種に限らず、なんでしょうね。 (2008.03.07 00:12:07) |
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