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映画にもなった小説『チームバチスタの栄光』でお馴染みの、作家で Ai(Autopsy Imaging)を提唱した医師の海堂尊さんをはじめ、40 代の働き盛りの医師たちが記した Ai 待望論だ。『死因不明社会』の続編という形をとっているが、本書はより専門的な、Ai を実践している医師による論文のような体裁をとっている。 日本では毎年およそ 100 万人が死ぬ。このうち 85 万人は病院で死亡するので死因は特定できていると考えられるが、残りの 15 万人のうち解剖されるのは 1 割に過ぎない。つまり、13 万人強の死者が、死因が分からないまま葬られているというのが現状である。もし親類縁者が死因不明のまま葬られたら、あなたならどう思うだろうか。 海堂さんは、Ai を行うためのインフラは整備されているとした上で、「Ai の問題点は『検査費用が拠出されていない』の一点に集約される」(21 ページ)と指摘する。 千葉大学 Ai センター副センター長の山本正二さんは、東日本大震災で大量の死者が出たにも関わらず個々の死因究明に手が回らなかった点について、Ai を活用すべきだとした上で、「被災地での Ai 実施は電源が確保されないと稼働しない。解決策は車載式 CT装置の活用だ」(97 ページ)と、自家発電装置を搭載した車載式 CT装置の活用を提案する。 自治医科大学医療安全対策部教授の長谷川剛さんは、「患者を救うべく医療行為を行っているにもかかわらず、結果が悪いだけで刑事責任が問われるというのは、医療者には大きな矛盾と感じられる」(213 ページ)と現在の医療裁判の疑問を呈し、ジャーナリストの柳田国男の文章からこう引用している――「人間のエラーを規則被りの犯罪という眼でとらえたり、『悪い奴は誰か』という発想で捜査したりしても、安全性向上に貢献しないどころか、逆にマイナスの役割を果たすことになる」(214 ページ)。そこで法医学者によらない Ai の運用を提唱する。 日本では毎年 3 万人超の自殺者がいる。今後は孤独死も増えていくだろう。こうした死体の多くが解剖されていないともいう。もしかすると他殺もあるかもしれない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2012.01.27 18:22:53
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