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黄泉比良坂を訪ねて島根を旅したとき、そういえばギリシア神話のオルフェウスの話と同じプロットだな、と感じ、本書を手に取った。著者は、海洋人類学および物質文化や言語文化の人類学的研究を専門としている後藤明さん。 2013 年、ハーヴァード大学のマイケル・ヴィツェルが『世界神話の起源』の中で、世界中の神話はゴンドワナ型とローラシア型の 2 つに大別できるとした。本書は、その仮説を下敷きに、考察を進めてゆく。 第4章では、ローラシア型神話を紹介する。「ローラシア型神話にとっての究極的な問いは、世界と人間の起源はどのようなものだったのか」(146 ページ)だという。世界の創造から、世界各地の神話には共通項が多い。「そしてローラシア型神話は、最終的な世界の破滅を語る黙示録をしばしば伝える」(180 ページ)。 第5章では、世界神話との比較で日本神話を眺める。後藤さんは、日本神話がローラシア型神話と考えている。そして、黄泉比良坂に関わるオルフェウス型神話について、「イザナキ・イザナミのように、2 人の神がこの世とあの世の聞で離縁を誓いあう『誓建』モチーフがある。オセアニアでは、『誓建』はミクロ、不シアのカロリン諸島やメラネシアのフィジー諸島にも見られる」(221 ページ)と紹介している。 第6章では、再びゴンドワナ型神話群について振り返り、「解決の糸口が見えない、現代の人類社会。どんな思想も大宗教も解決策を提案できないでいる今日、よほどの革新的な思考の転換が必要だ、そう多くの人々が感じ始めているのではないだろうか。私にも答えはわからない。しかしとんなときにとそ、人類としての原点にもどってみるべきではないか、このところ私はそう考え始めている」(268 ページ)と結ぶ。 私は、文字が無いという理由だけで、旧石器時代を軽んじていたのかもしれない。北極星の周りを恒星が回っているという空間認識ができることをとってみても(小学校の理科で苦労する子どもが多い)、現代人と同等の思考活動をしていたことは明らかだ。歴史を学ぶものとして、視点を 1 万年以上遡ってみることにしよう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2018.09.04 12:37:45
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