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2022.03.12
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マーダーボット・ダイアリー(上)

マーダーボット・ダイアリー(上)

 弊機は自分がなにをやりたいのかわかりません。これはすでにどこかで述べたと思います。だからといって、やりたいことをだれかに教えられたり勝手に決められたりするのはいやなのです。だから弊機は去ることにしました。(154ページ)
著者・編者マーサ・ウェルズ=著
出版情報東京創元社
出版年月2019年12月発行

作者のマーサ・ウェルズは、テキサスA&M大学で人類学の学位を取得。1993年に長編 "The Element of Fire" で単行本デビュー。「システムの危殆」は2017年に発表され、ヒューゴー賞・ネビュラ賞・ローカス賞の各部門を受賞した。

「システムの危殆」
保険会社から惑星探査クルーのもとに派遣された人型警備ユニットの“弊機”は、ひそかに自らをハックして自由になりましたが、対人恐怖症で、娯楽フィードに逃避しがち‥‥。
弊機自身は勤務をするうえで、顧客について必要なこと以外はモニターしていませんが、弊社は全記録にアクセスできます。そして勝手にデータマイニングをかけて外部に販売しています。これについて顧客の同意は得ていませんが、みんな知っていることです。
今回は、ストレスの少ない顧客たちで、喧嘩や気まぐれな対立は起きず、そばにいても疲れません。ただし弊機に話しかけたり交流を求めたりするのは迷惑です。通話で直接質問されるのではなく、フィード経由の問いあわせにしてほしいものです。
そんな顧客たちが生命の危機に晒されています。惑星の反対側に着陸したクルーは全員が殺されていました。衛星通信が途絶し、弊機のシステムが乗っ取られそうになりました。
弊機はクルーに全てを打ち明けました。これまでの雑な仕事ではなく、顧客の命が狙われる状況になって以後の真剣な仕事においてはとりわけそうです。気が進まなくても。
メンサー博士がプリザベーション連合の政体そのものでした。弊機はメンサー博士を助けながら敵と対峙し、その機能は最小限まで低下してしまいました。遺棄を推奨します。
そのとき、メンサーが声を荒らげました。「静かに。遺棄はしない」
クルー全員が助かりました。そして、メンサー博士は、弊機の契約を恒久的に買い取りました。もしこれが幻覚だとしても、弊社がいきなり英雄的救助隊のようにあらわれてプリザベーション補助隊を救い出すなどという内容は奇抜すぎます。
弊機は自分がなにをやりたいのかわかりません。これはすでにどこかで述べたと思います。だからといって、やりたいことをだれかに教えられたり勝手に決められたりするのはいやなのです。だから弊機は去ることにしました。大好きな人間のメンサー博士、あなたにこれが届くころには、弊機は企業リムから出ていっているでしょう。備品リストから消え、姿も消します。マーダーボットからのメッセージは以上です。

「人工的なあり方」
警備ユニットはニュースを観ません。弊機が統制モジュールをハッキングしてフィードにアクセスできるようになったあとも、世の中のニュースには無関心なままです。理由の一つは、娯楽メディアのほうがダウンロードするのに安全で、通信衛星やステーションのネットワークに仕掛けられた監視プロセスにひっかかりにくいからです。
弊機は補給物資を必要としません。自己完結型のシステムなので食料も水も不要。液体も固形物も排出しません。空気もほとんどなくてかまいません。人間が不在なら生命維持系は最低水準で生きられます。
弊機は、不愉快千万な深宇宙調査船「ART」とフィードのやり取りをしています。弊機は、人やものを守るのは好きです。効率よく守る方法を考えるのも好きです。正義をなすことも好きです。
弊機は、不具合が起きて大量殺人を犯し、そのあとで統制モジュールをハックしたのか。それとも統制モジュールをハックしたから大量殺人を犯したのか。可能性はこの2つのどちらかと考え、ガナカ鉱区へ向かおうとしています。しかし、ARTは〈そもそもその事件は起きたのか、起きなかったのかよ〉と反論してきました。たいへん不愉快です。
弊機はARTの提案を受け入れ、形態変更し、標準的な警備ユニットではなくなりました。鏡に映る自分をしばらく眺めました。人間に近くなったように見えます。これではロボットのふりをできません。
弊機は警備コンサルタントのふりをして、ラミ、タバン、マロの依頼を引き受けることで、ステーションへ簡単に侵入できました。
彼らは、明らかに罠であるにもかかわらず、トレーシーのところへ行こうとします。はっきりいって殺されにいくようなものです。弊機が期待していたのはもっと簡単な、たとえば文書の配達のような仕事でしたが、これは危険を承知で行動する人間を警護する仕事です。ですが、弊機の仕事は、今回の顧客を生き延びさせることです。
着陸態勢にはいったシャトルのシステムがキルウェアに制圧され、危うく墜落するところでした。弊機がこれ以上かかわる必要はありません。彼らが殺し屋の元雇用主と対面したいというなら勝手にさせればいい。しかしそれでも顧客です。弊機は、内心でため息をつきました。
3人はファイルの奪還に失敗しました。しかし、顧客たちは生きています。彼らの知的財産はとりもどせなかったとはいえ、それは業務の範囲外。そう思おうとしましたが、だめです。
弊機は、3人をステーションへ送り出し、一人、ガナカ鉱区へ向かいました。そこで手に入れた情報は、慰安ユニットに感染させるはずだったマルウェアが警備ユニット、ボット、ドローンに感染し、施設内を行動できるすべての機械が異常を起こしたということでした。
これからどうするのか、計画を進めるのか、まだ決めていません。ガナカ鉱区の真相を知れば、やるべきことはおのずと決まると思っていました。しかしそんな都合のいい展開はメディアのなかだけのようです。
そういえば、目当ての船に乗るまえに新しいメディアをダウンロードしておくべきでしょう。また長い旅になりそうです。






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最終更新日  2022.03.12 13:09:37
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