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幼女戦記 第11巻 -Alea iacta est-

幼女戦記 第11巻 -Alea iacta est-

 カランドロ大佐「要するに、帝国には滅んでいただきたい。それが、先方の嘘偽りなき希望です」(118ページ)
著者・編者篠月しのぶ=著
出版情報KADOKAWA
出版年月2019年2月発行

統一暦1927年9月10日、ともに大将に昇進したハンス・フォン・ゼートゥーアクルト・フォン・ルーデルドルフは帝都でクーデターを起こすことを検討する。だが、ルーデルドルフの執務室を出たゼートゥーア大将は、ターニャ・フォン・デグレチャフ中佐にルーデルドルフ大将の殺害計画を打ち明けた。
一方、エーリッヒ・フォン・レルゲン大佐は、イルドア王国のヴィルジオニ・カランドロ大佐に講和の仲介をするよう工作していた。レルゲン大佐は、無賠償・無併合・民族自決の3本軸が帝国が最大限譲歩しうるラインだと考えていたが、カランドロ大佐は理解できなかった。交戦国が望んでいるのは帝国の滅亡だったからだ。

統一暦1927年9月26日、海上封鎖をしていた帝国軍潜水艦が、中立国である合衆国の貨客船を2隻も攻撃してしまう。
10月2日、東部方面軍司令部にて、ルーデルドルフ大将ゼートゥーア大将は今後の作戦計画を巡って激論をかわした。ルーデルドルフ大将が退出した後、ゼートゥーア大将はターニャにルーデルドルフ大将の殺害を命じた。
翌10月3日、ルーデルドルフ大将が乗った帝都へ帰る輸送機の護衛として、ターニャが率いる第二〇三航空魔導大隊の選抜中隊が護衛任務に就いた。帝都へ帰着する前にルーデルドルフ大将を殺害する計画だった。しかし、帝国の領空にも拘わらず連合王国の爆撃機が襲いかかり、航空支援を得られない第二〇三航空魔導大隊の奮戦虚しく、ルーデルドルフ大将が乗った輸送機は撃墜される。計画は失敗だったが、結果としてルーデルドルフ大将は帰らぬ人となった。
10月4日、ゼートゥーア大将が東部方面軍から参謀本部に帰還し、大将、戦務参謀次長、査閲官を兼ね、軍を掌握した。ゼートゥーア大将レルゲン大佐に、合衆国と同盟を結ぶ兆しがあるイルドア王国への攻撃を命じた。そして、ターニャのサラマンダー戦闘団にも参戦を命じた。命令とは、伝達されるものだ。上位者から、下位者へ。そこには、いかなる例外もあり得ない。

イルドア戦は時間との勝負だ。11月11日に帝国軍は、宣戦布告と同時に国境線を超えた。レルゲン大佐はイェルク中将が戦死した後の第八機甲師団を率い、とんでもない速度でイルドア国内へ侵攻し、イルドア国境司令部を急襲した。カランドロ大佐は司令部を放棄して脱出せざるを得なかった。
帝国軍の完勝だった。ターニャたちはイルドア王国の豊富な食材を使って勝利の宴を催した。だが、ゼートゥーア大将は容赦なく、ターニャに命じる。改良型V-1に乗り込み、改修中のイルドア海軍艦船を破壊しろと。
ゼートゥーア大将は敗北を前提に足掻いているのかもしれない。賽は投げられた。だが、詐欺師のゼートゥーア大将のことだ。サイコロにイカサマの一つも仕込んだと想定するべきだろう。

ルーデルドルフ大将が去り、いよいよ帝国の敗色が濃厚になってきた。
だが、ゼートゥーア大将は権力を掌握し、イルドア王国に攻め込むという博打に打って出る。本来、参謀本部という後方で作戦指揮を執るレルゲン大佐までもが最前線に出て高揚する姿は、デスマーチで徹夜ハイになっているプログラマのようである。
「戦争へは、真面目にのめり込みすぎては心を病んでしまう。思い詰めるのは精神衛生に甚だ望ましからず」(270ページ)と思うターニャ。仕事と同じである。






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最終更新日  2022.11.07 18:08:47
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