白い鹿の森へ行った帰り道。
ラジオから流れるアレサ•フランクリンの
歌に合わせてがなりたてながら
私たちは、曲がりくねる海岸沿いの1号線を南下していた。
日が少しずつ傾き、西の空が暖かい色に染まり始めていた。
道の右側に広がる干潟では、何千、何万羽という水鳥が
思い思いに時を過ごしている。
「あ、またいたよ!」
私が叫ぶと、Lはいつものように噛み付いてきた。
「またそうやって嘘ばっかり。」
「さっきの鹿はホントだったじゃない。」
「さっきは、さっきよ。」
「今、すぐそこで「ばいばーい」って手を振ってる。」
「鳥じゃないの?」
「鳥はあんなに大きくないよ。」
「石じゃないの」
「石は手を振らないよ。あ、そこ!!車止められるよ!!」
私たちは車を止め、
乾いた場所を慎重に選びながら干潟に降りた。
西日がまぶしかった。
手をかざして目を細めると…
寝返りをうつ、アシカが見えた。
ひらひらとヒレを揺らすアシカに手を振ってから
私たちはまた、曲がりくねる道を南下した。
ラジオから流れてくる曲は、ファウンデーションズにかわっていた。