面白かったですね。ドキュメンタリータッチなのがすごくよかったと思います。インタビュー形式により大日本人にまつわる背景や境遇、世間の目線等が描かれていてほどよい距離感でこの映画の世界観を楽しむことができました。笑いの部分も徐々に盛り上がっていきよかったです。愛知で変身する儀式のシーンでハンコする場面がチラッと映ったのですが、すごい良かったですw。ああいう細かいネタって結構個人的に好きなんですよ。でかいパンツに顔擦ってるとことか。戦いのシーンでは臭ウノ獣の板尾氏との掛け合いが面白かったですね。最後の戦いのシーンはさらに良かったです。バスで殴ったり、フィニッシュに手こずったり。ただそのあとのエンドロールでのやり取りはいらなかったですね。ギャグの説明をいちいちされているみたいでシラケてしまいました。受けなかったときのための言い訳っぽくも感じてしまいました。まあ、アメリカのヒーローだって裏ではこんなもんなんだといいたかったのかもしれません。この映画が最初から語っていたところですからね。ヒーローの孤独とか生活感とか。
あまりにも孤独なこの映画の主人公である大佐藤はいい味出てました。最後の戦いの前に飲み屋でインタビューを受けたあとの大佐藤の振る舞いやBGM、家に忍び込んでくる軍等の絵に思わず最悪のエンディングがくるのではないかと危惧しました。マネージャーとの確執、人気、視聴率、スポンサー等あらゆる要素が入り交じったあとでのあの演出でしたから。でも悲しみとお笑いって結構紙一重なところありますから。暴力だってそうです。北野監督が暴力なら松本監督は悲しみって感じですね。全編に漂っている物悲しさってこの映画を形作る上で大きい意味を持っていたと思います。その反動があってか、ラストバトルはかつてない盛り上がりをみせてくれましたw アメリカから颯爽と現れたヒーロー家族の各ネーミングのバカバカしさは見事でした。”ごっつええ感じ”を彷彿とさせるクライマックスは最近ダウンタウンのコントを見れなくて寂しかった欲求を満たしてくれるものでした。
今回は初の映画ということでしたが、これからも撮り続けるのでしょうか?今回は興行15億円を目指すらしいですけど意外と厳しそうですね。正直ファン以外あまり楽しめそうな感じはありませんでしたから。話題性だけでどこまでいけるのかなって感じです。作家性が強いと思いました。雑誌で見る限りでは一般向けとのことですが、私自身今の笑いの流行とは違う印象を受けましたし。それが松本人志(作家性)なんですけどね。彼の笑いって唯一無二の存在で一番個性が強いので、今の世の中の流れ的に見ればその時点で既にマニアックな部類に入ると思います。何よりも細かいネタが多い!ある意味常識やお約束を知らないと楽しめないところがあるのでその細かさが見ている人に行き届いているのかが非常に気になります。ましてや今の世の中が余計松本人志の笑いを感じる感性を鈍らせている気がしてなりません。時代の流れがいい方向へ向かっていません。これは古い、新しい、ではなく良い、悪い、の問題です。情報過多、無責任な自由、自己主張を掲げるもの、商業主義に走りすぎた企業、それらが招いた悪しき習慣等は枚挙に暇がありません。大日本人の境遇が松本人志の境遇に重なって見えてきます。作品は自ずとその個人を浮出させてしまうものだと改めて実感しました。もっと日本人は日本を大事にしてほしいですね。真の意味で自立することが大事なのではないでしょうか?話がそれてしまいましたが、この映画は一人の男のドキュメンタリーとして見ても面白い映画だと思いました。
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