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テーマ:洋楽(3312)
カテゴリ:ビートルズ
「ビートルズのアルバムから何か一枚」と言われたらコレを挙げる人も多いのではないだろうか。 四人の個性がよく出た作りであり聴き所満載といえる内容だが、本作の評価を決定づけているのはB面の2/3を占める"メドレー"だろう。 そのメドレーに関しては興味深い事実がある。 ポールはそれについて「うまくいったと思う」と言っているのに対して、ジョンは「あれはジャンク(ガラクタ)を集めただけ」と発言しているのである。 この正反対ともいえる、ふたりの評価の違いは面白い。 そして、僕はこのふたつのコメントの両方に「なるほど」と思えるのだ。 ポール・マッカートニーの作品である「You Never Give Me Your Money」は、メドレーの冒頭を飾る曲である。 「あんたは金をくれない」という一節からはじまる、アップル(ビートルズが起こした会社)の財政難を嘆いた歌だ。 時間にして4分2秒の曲だが、これ自体がひとつのメドレー形式となっており、バラード→ブギウギ風味のロック→ブルース・ロック風という具合にわりと目まぐるしく展開していく。 この楽曲構成は、後のソロ作「Uncle Albert~Adminal Halsey」や「Band On The Run」にも引き継がれる、彼十八番の作風だ。 ここで特筆すべきは、弾き語り風のバラード部分だろう。 ピアノによる物悲しい響き、じめやかなポールの歌唱、マイナー調を使ったメロディの美しさは絶品。 多重録音のヴォーカルで「...your funny paper」と歌われる部分などは鳥肌が立ちそうだ。 "バラードのポール"と言われる彼の作品中でも、トップ・クラスに位置するものだと自分は思う。 なのに、この弾き語りパートはわずか1分7秒。 こんないい曲をメドレーの一部として放りこむなんて、ポールどんだけだよ!? ---というのが今も昔も変わらぬ感想だ(笑 かと思いきや、メドレー後半のポール作品「Carry That Weight」でもこのフレーズが顔を出すという仕掛け。 ポールもやはりもったいないと思ったのだろうか。 よいメロディを活用し、構成の妙も見せつけるという、ひと粒で二度おいしいメドレー技ですな。 一方、1:08あたりから飛び出すブギウギ風演奏は、やや唐突な感じがして、どうも違和感を払えない。 歌い方がまったく違う上に曲自体の出来もポールにしては凡庸で、前パートからのつながりも考えると若干チグハグな印象。 それでも、ジョンやジョージも加えたウーアー・コーラスなどはなかなかにグっとくる。 後ろで鳴る鐘の音もなんだか耳に残りますね。 第三パートも楽曲の出来は可もなく不可もなくといったところか。 ただし、ハードにうなる演奏はそれなりにカッコよく、ジョージ・ハリスンの弾くギター・リフも強い印象を残す。 ジョージらしい旋律を持つこのリフは、彼が前年にエリック・クラプトンと共作した「Badge」(←クリームの曲)のそれを元にしたもの。 このリフもまた「Carry That Weight」で再度顔を出している。 「1-2-3-4-5-6-7 いい子はみんな天国に行ける」と繰り返すラストも意味深で好きだ。 曲がフェイド・アウトするのと同時に聞こえてくる虫の声は、ポールが自宅で録音したもの。 次に控えるジョンの「Sun King」につなげるためのSEだが、これも雰囲気作りにひと役かっている。 そして、それは同時に、XTCの'86年の傑作『Skylarking』へもつながっていくのである。 圧倒的な評価をものにした"アビイロード・メドレー"だが、結論を言うならコレは(よく言われるように)70%くらいポールとジョージ・マーティンの作品だろう。 実際、メドレーの幹を支えているのはポールの楽曲だ。 ジョンの曲は、メドレーの一部としてだから聴けるものの、彼の作品としてははっきり言って弱い。 ポールの活躍が目立つこれをジョンが面白く思ったはずもないだろう。 自作に対するクールな評価とポールへの嫉妬心が、先述の辛辣な発言を生んだといったらどうだろうか。 一方のポールは、このメドレーを「僕らの最高傑作のひとつ」とまで言っている。 もっとも、細部のつながりがうまくいってない部分はあるし、小奇麗で"出来すぎ"な印象があるのも事実だ(ジョンが嫌がる理由はこの辺もあるのだろう)。 それでも、ここにある緊張感とカタルシスは何物にも代えがたい。 ビートルズの"有終の美"として確かにこれ以上のものはないだろう。 シャレとも別れの挨拶ともとれる「The End」には、言いようのない淋しさが漂っている。 ポールは90年代以降のライヴで「Golden Slumbers~Carry That Weight~The End」をたびたび演奏し、ファンを喜ばせている。 エリック・クラプトン、フィル・コリンズ、マーク・ノップラー、そしてジョージ・マーティンを迎えたロイヤル・アルバート・ホールでのライヴ('97年)は涙モノでした。 「You Never Give Me Your Money」を聴くにはここをクリック! 豪華メンバーによる「Golden Slumbers~Carry That Weight~The End」のライヴ・バージョンはこちら。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[ビートルズ] カテゴリの最新記事
アビィロードは全17曲。コストパフォーマンスでは史上最強のアルバムではないでしょうか。
(2008.09.07 02:50:07)
好き過ぎて上手く書けない(笑)
ポールのコンサートでメドレーが聴けてやっぱり嬉しかったです。 (2008.09.07 08:39:00)
10代の時はよくビートルズを聴きながら踊ったけど(よく針が飛んだ)この曲になるといつもクラシックバレエ風の振り付けになるんだわ(笑)
あ、もちろん自分勝手の振り付けだけどね。 (2008.09.07 19:33:59)
この曲は、中高生の頃、よくピアノで弾き語りしてたけど、
曲想がホンキートンク風になる所からは、私も違和感があって飛ばしてました(^^ゞ やっぱりレコードの方が味があっていいですね。A面を聴いた後で、裏返す手間をかけてこそのB面。 A面最後で我慢大会のような「I want you」を最後まで聞き、 B面の1曲目でジョージを聞いた日には、涙・涙でした。(大袈裟…) いきなり目的地に着けちゃうCDは、どうも有難さがありませんね。 ポールのライブでメドレーを聴けた時には、「やったね!!」って感じでした^^ (2008.09.07 20:29:01)
jboyひろさんどうもです。
>コストパフォーマンスでは史上最強のアルバムではないでしょうか。 -----例のメドレーをはじめとしてゴージャスな印象がありますよね。 コストもかかったでしょうが、売り上げも当時としては最高でした。 ではでは。 (2008.09.08 04:57:50)
元テンさんどうもです。
>好き過ぎて上手く書けない(笑) ---↑これ自体が熱いコメントです(笑 >ポールのコンサートでメドレーが聴けてやっぱり嬉しかったです。 ----ファンの人はそろって「キター!!」という感じだったでしょうね(笑 ではでは。 (2008.09.08 05:02:45)
オンデン1970さんどうもです。
>この曲になるといつもクラシックバレエ風の振り付けになるんだわ(笑 ----バレエですか… 想像してワロタwww >あ、もちろん自分勝手の振り付けだけどね。 -----オンデンさんの振り付け、一度見てみたいです(笑 ではでは。 (2008.09.08 05:06:11)
lavender80さんどうもです。
>この曲は、中高生の頃、よくピアノで弾き語りしてたけど、 ---「Let It Be」のイントロと並んで"弾いてみたくなる曲ですよね。 >曲想がホンキートンク風になる所からは、私も違和感があって飛ばしてました(^^ゞ ---同じ感想の方がいて嬉しいです^^ 個人的には、あのバラード部分をメインにして単独の曲に仕上げてほしかったです(それやるとアビイロード・メドレーの価値がグンと下がるんだけどw)。 >A面最後で我慢大会のような「I want you」を最後まで聞き ----我慢大会…ワロスww まあ、「I Want You」は聴き方とか視点を変えれば面白く聴けるのですが、ラヴェさんの気持ちよく分かりますよ。 >やっぱりレコードの方が味があっていいですね。A面を聴いた後で、裏返す手間をかけてこそのB面。 >B面の1曲目でジョージを聞いた日には、涙・涙でした。(大袈裟…) >いきなり目的地に着けちゃうCDは、どうも有難さがありませんね。 ----おっ、今日のラヴェさんはアナログ礼賛モードですね。 自分は基本的にCD世代ですが、レコードの持つ味わいとか"音の温かみ"は分かるつもりです。 自分の場合はむしろ、完全なオタになってからLPを購入する機会が多くなりました。 CD化されていない過去の名盤を探しあさった結果です。 もうそれすらもあまり必要のない時代になってきましたがね(苦笑 >ポールのライブでメドレーを聴けた時には、「やったね!!」って感じでした^^ ----うおぉ、キター!という感じでしたね。 みんな思うことは同じなんだなぁ。 リアル・ビートルズ世代の人は感慨もひとしおだったでしょうね。 ではでは。 (2008.09.08 05:26:02)
ああ 懐かしや。
自分の結婚披露パーティーのとき、締めでやった メドレーですわ。 ライブハウス貸切で 楽しかったなあ。 その後の 結婚生活は... ま、ええ経験させてもらいました。 ぼちぼち 一人暮らしも卒業したい 今日このごろ(笑) (2008.09.11 18:51:59)
よさこい鬼工房 Jackieさんどうもです。
>ああ 懐かしや。 >自分の結婚披露パーティーのとき、締めでやった メドレーですわ。 >ライブハウス貸切で 楽しかったなあ。 ----メドレー丸ごとやられたんですか? 盛大な結婚披露パーティーでしたね。 >その後の 結婚生活は... >ま、ええ経験させてもらいました。 ----「And in the end the love you take...Is equal to the love you make」なカンジになったとか?(苦笑 >ぼちぼち 一人暮らしも卒業したい 今日このごろ(笑) -----次の披露宴にはベタに「My Love」あたりでも(笑 ではでは。 (2008.09.12 06:47:57) |