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千夜の本棚 ネット小説創作&紹介

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2012.10.09
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カテゴリ:本棚  ギレイ
ギレイ目次
<1>

「シャーロットと言う少女を殺していただきたい」

薄暗い部屋の中でくぐもった声がそう告げる。

「殺しか、報酬は?」

もう一人の声は高い。女性、でなければ子供だろうか。

「聞いています。二つで」

くぐもった声の主が指を二本立てる。

「ふん、いきなり出すか。どうしても消してほしいらしいな」

高い声に、依頼主は明らかに機嫌を悪くする。

詮索はするな、と瞳に力を込める。

「いいだろう。相手の特徴は?」

「写真がある」

男がテーブルの上に写真を滑らせる。

写っているのは、金の長髪に深い青の瞳の美しい少女。

「歳は14。身長は145cm。追われてるのはわかってるため、変装しているかもしれん」

「なるほど、わかった」

そう言って、高い声の主は立ち上がる。白い外套に包まれたその背は150cm程。やはり子供だろうか。

「居場所はわからないが、フェード国内にいるばずだ。前金に500振り込んでおく。資金にあてろ。頼んだぞ、ゼラード」

くぐもった声も立ち上がると、その部屋を後にした。

「シャーロット……ね。写真まであるなんて、余程金のある貴族か?」

ゼラードと呼ばれた白い影は、写真をズボンの後ろポケットにしまい込む。

「少女か……」

小さく呟くと、男が出たのと反対のドアから部屋を後にした。


<2>

それから三日後、ゼラードは国境付近の街中にシャーロットの姿を見つけた。

「あれで変装したつもりか? 髪切って色眼鏡かけてるだけじゃないか」

ゼラードはばかにしたように、獲物を捉えた余裕の笑みを浮かべる。

それは狩人の表情で、決して人が人に向ける類の笑顔ではなかった。

 ギロッ

突然、強い殺気と視線を感じて、ゼラードは瞬時に木の幹に身を隠す。

(気付かれた?! まさか……)

今、シャーロットの隣りにいた少年を思い返す。

(あいつ、ただもんじゃねぇ。あれは……『黒獅子』。少し、策を練らなきゃな)

ゼラードは気配を絶ったまま音もなくその場を離れる。

「どうしたの? 獅子?」

突然おかしな方を向き、真面目な顔で殺気を放つ獅子。

儀礼はそれを隣りで不思議そうに見ている。

通りかかる人はあきらかに、遠巻きにして避けている。

「いや、なんかよくない気を感じたんだが……。消えちまった」

真剣な顔で辺りを見回した後、諦めたように獅子は言った。

千夜 作2008年3月2日   (2012年10月30日改)ギレイ目次





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最終更新日  2012.11.02 16:47:18
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