高級車が嫌いである。
特におベンツ、おBMW、
以前乗ったことのあるおセルシオは
貰っても乗りたいとは思わない、と言っても誰もくれないのだが、
大富豪は黙って
こいつである。
というかこいつはガレージで寝たきり老人状態である。
ただ1度、おBMに乗った人が格好良く見えたことがある。
僕が貧乏どん底で日雇い土方をやってた時のことだ。
ある現場で足場を組んでいると、バイト先の会社の社長の奥さんが
僕を別の現場への応援に移動させるためにおBMで連れに来た。
僕の服は土でかなり汚れていた。
寒い冬の日だった。
乗って、というアネさんに僕はためらって上着を脱ごうとした。
質の良い本革のシートだったからだ。
「気にしないで、洗えばいいだけだから」と言ったアネさんが
とても格好良く思えた。
確かに社長婦人であるからお金はあるので
そんなことは気にしないのかも知れなかった。
それでも世の中には「これ高かったんだから」と
金持ちでも暗に自慢する人達もいる。
それから2~3ヶ月後の仕事納めの日、
日雇いの人達みんなでトラックやバンを洗った。
僕はアネさんのBMWを洗わせて戴いた。