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カテゴリ:本
古来より「天は二物を与えず」といいますが、医者にして文筆家(作家)という器用な方が多くいらっしゃいますね。 古くは斉藤茂吉、この方は精神科医にして歌人でした。先ごろ亡くなられた渡辺純一は、医学博士にして直木賞作家。「失楽園」を知らぬ人はいないでしょう。漫画・アニメ界の巨匠手塚治虫も医学博士でありながら、メスではなくペンの方を取った。もっとも手塚はインターンのときを除いて一度も患者を診たことはなかったといいますから、医者とは言えないかも知れない。血を見るのをひじょうに怖がったといいます。 現代にもどって売れっ子時代小説作家上田秀人は、現役の歯科開業医。出すシリーズことごとくヒットするのですから、人の口の中を覗きながらも、次に出版する作品のストーリーを考えているに違いないと思ったりしています。(笑! もう一人私の好きな作家、篠田達明も現役の整形外科医。この方の「カルテ」本は歴史上の有名人物を医者ならではの視点から考察したものだけに説得力があります。その「カルテ」本の一冊、「歴代天皇のカルテ」より、第45代聖武帝の記述。帝が唐より招いた高僧鑑真和上の意外な秘密に興味が駆られました。 数年前に正倉院から納められたという仏具の箱が東大寺の地下から発見され、中から奈良時代の中高年男性の歯が出てきたというニュースが報じられたことと関連があります。この歯は当時50歳後半で亡くなった聖武天皇のものではないかと。 子どものころ乳歯がぐらぐらになって抜けると、上の歯なら下へ、下の歯なら上へ窓から放り投げると丈夫な歯が生えてくると言われ、疑いもせずそうしていたものでした。 このような風習は当地だけのものか、或いは他の地域にも残っているのか知りませんが、それが奈良時代にまで遡ることが出来るのかどうかは、私の知るところではありません。 聖武天皇といえば、熱く仏教に帰依し、当時流行した疫病に苦しむ民のために大仏殿を建立したことで有名ですね。また唐より名僧鑑真和上を招へいし仏教を広めようとしたと歴史の時間に習いましたが、鑑真和上には隠れた一面があったようです。 篠田達明著「歴代天皇のカルテ」によれば、鑑真和上は名僧に違いなかったが、当時の唐でも指折りの薬師でもあったとあります。
なるほどそういうことであれば、生まれつき病弱であった聖武帝は、鑑真の僧としての仏教の力にすがると同等以上に、薬師としての力にその権力と富を行使したのではないかという思いを強くします。 その聖武帝のものと思われる歯が、東大寺の地下に埋められた鎮壇具の中から出てきたというのですから、歴史好きにとっては"ロマン"がかきたてられます。 ひょっとしてこの歯は、鑑真和上の手によって聖武帝の口から抜かれたものかも知れませんね。そのとき和上はどのような治療・投薬を天皇に施したのでしょう。あるいはどのような経を読んだのでしょう。 はたして、聖武天皇も古今東西の絶対的権力者がたびたび陥ったという不老不死の薬を鑑真和上に求めたのであろうか?このとき鑑真和上はどう応えたのであろうか?静かに経を読んだだけだったのだろうかと・・・。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2016年11月04日 19時55分10秒
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