テーマ:ミステリはお好き?(1432)
カテゴリ:日本ミステリ(あ行作家)
萩原浩さんの作品は、『オロロ畑でつかまえて』(感想)しか読んだ事ありませんでした。ユーモアあふれる楽しい作品でした。
あむあむ108さんの日記がきっかけで読んだ『ハードボイルド・エッグ』も、 やっぱり笑えます。笑わされます。 電車の中で読まない方がいいかもしれません。 主人公はフィリップ・マーロウに憧れ、ハードボイルドを実践しようとする探偵。 「探偵になるために私は生まれてきた。三十三になる今でも、そう信じている。」 でも現実に依頼が来るのは、動物探しと浮気調査。 迷い猫を探し出すついでに雑用を頼まれる事もあります。 そんな時の会話だってこんなもの。 「ねぇ、便利屋さん」 「探偵です」 顔の前でひとさし指を振りながら私は訂正する。 やめてよ~。 大真面目にひとさし指を振る人なんて、見た事ありません。おかしすぎます。 そしてさらにハードボイルドの探偵らしくあるために、秘書を雇おうと決心します。 イグアナを捜すチラシと一緒に秘書募集のチラシもばらまいた結果、一人の女性が電話をかけてきます。 彼女がダイナマイト・ボディらしいことがわかって即決。 これじゃ、ただの女好きです。 秘書についての詳しい事は読んでからのお楽しみとして、この秘書と探偵のかみ合わない会話がまた妙におかしいのです。 念願の秘書を雇っても、やっぱり仕事は動物捜しでしたが、ついに殺人事件が起こります。 知り合いとその美人の奥さんのためにも、(特に奥さんのために)事件を解決しようと頑張る探偵。 ある犬を探さなければならなくなり、秘書と二人で必死の捜査をします。 その後はヤクザに追われたりと、命がけの大騒動の末につかんだ真相は甘いものではありませんでした。 最後には秘書の私生活も明らかになって、ホロっときます。 実はホロッとどころではありません。 こんなの反則だよ、と言いたいくらい込み上げるものが…。 彼はかっこ悪くてどうしようもない探偵だけど、だんだんかっこ良く見えてくるんです。 悲しい過去のトラウマから昆布や蟹は食べられないけど、 狭いところがだめだけど、 女好きだけど、 口は悪いけど……。 色んなつらさを乗り越えた者だけが持つ優しさが心に沁みて、思い出すだけでまた涙腺がゆるんでしまいそうです。 やっぱり電車の中で読むのはやめた方がいいようです。 ハードボイルド・エッグ :荻原浩 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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