テーマ:ミステリはお好き?(1430)
カテゴリ:日本ミステリ(ま行作家)
「何とかと煙は高いところが好きと人は言うようだし父も母もルンババも僕に向かってそう言うのでどうやら僕は煙であるようだった。」
―煙になれなかった「涼ちゃん」が死んで二年。 十五歳になった「僕」と十四歳の名探偵「ルンババ」が行く東京への修学旅行は僕たちの“世界と密室”をめぐる冒険の始まりだった! 『煙か土か食い物』( 感想 )を読んでいたので、ある程度の覚悟はできていました。 独特の文体、独特のリズム、なかなか改行が来ないことにも驚きません。 けれども痛そうな描写に力が入らなくなり、その後気持ち悪い場面に鳥肌が立ち、途中で読むのを止めようかと思いました。 凄惨な事件が起こります。奇妙な密室が作られます。どんでもない動機やふざけたトリックにあきれます。 でも、最後まで読んだ時には妙な感動を覚えていました。 「僕」友紀夫とルンババは隣同士に住む親友。 14歳の時にルンババの姉である涼子が死んでしまいます。 その後大変な事件に巻き込まれていく二人。 ルンババは次々に事件を解決してしまい、エキセントリックな姉妹に出会い、殺人があっても妹のエノキとは青春しています。 文体の持つスピード感であれよあれよと言う間に最後まで連れて行かれるのですが、いつのまにか他の事がどうでもよくなっていました。 言葉に出すと恥ずかしくて薄っぺらに聞こえてしまうけれど、愛と友情があればいいんだ、と。 それさえあれば何だって乗り越えられる、という気持ちになっていました。 ルンババは「煙か土か食い物」に出てきた名探偵ルンババ12でしょうか。 12がついた理由もわかります。 奈津川家も名前だけ出てきます。 大変な状況なのにオチをつけようと頑張ったり、ギャグでなごませようとしたりするのは理解しにくかったけれど、かっこ悪くてメチャメチャな事をしながら、一生懸命あがいている青春物語でした。 身体を張って青春している彼らの姿に、じーんときました。 世界は密室でできている。: 舞城王太郎 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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