ロス・ブラウンの作戦が大成功!
今シーズンのレースは予測が難しい。各チームの戦闘力に極端な浮き沈みがあるからになる。序盤はブラウンGPの圧勝、中盤はレッドブルの追い上げ、そして現在はFインディアがとてつもなく速い。不振だったマクラーレンとフェラーリも、この段階になって追いついてきた。予選タイムは僅差であり、超高速サーキットであるモンツァを克服するには、レース戦略がものをいう。 イタリアGPの結果は、情勢がさらに複雑に変化していることを物語っている。このところ、表彰台に遠かったバトンが2位に復活した。バリチェロは圧倒的な速さを刻み、モンツァの勝利をつかんでいる。ポールポジションから飛び出したハミルトンは、最終ラップで自滅してしまった。ライコネンは何とか3位にたどり着き、スーティルは才能の一端を披露した。バトンを追撃しなくてはならないレッドブルの2台はポイント圏外に脱落している。バトンを追うものは僚友のバリチェロだけという情勢に変化した。 KERSを装備していないブラウンGPの2台は、スタート時のリスクを避けるために、1ストップ作戦に賭けた。驚いたことにブラウンGPの2台は、30周分の燃料を搭載しても文句なく速い。2ストップ作戦のハミルトンを追い抜いて、1位と2位を確保している。圧倒的なタイムで突っ走るハミルトンを抜くための戦術をロス・ブラウンは緻密に立てていた。1回のピットに要する20秒~30秒を節約すれば、ハミルトンを抜くことができる。それを実現するには、綿密な計画に従った正確な走りを要求される。バトンとバリチェロは見事にこなして見せた。 レッドブルが勢いを失ったのは謎だろう。ダウンフォースを削ったセットアップでは、操縦性が極度に悪化している。コーナーで安定した走行ができないと上位陣を追うことは難しい。スパで復活の兆しを見せたトヨタとBMWも、モンツァでは惨敗している。高速コースへの適応能力が結果を左右したというしかないけれど、勝負に勝つにはマシンの性能だけでなく、ピット作業の熟達とレース戦略がマッチしないとたちまち脱落させられる。 ハードタイヤとソフトタイヤの差が少なかったことも、1ピット作戦の有効性を高めた。ソフトタイヤの耐久性が高まったことがブラウンGPを有利にした。タイヤにやさしい足回りの設計がソフトタイヤの長距離走行を可能にしている。Fインディアのマシンの安定性にも驚かされる。短期間でこれだけの技術進歩を可能にしたアイデアは何かと追及されるだろう。モデルチェンジしたわけでもないのに、これほどの劇的進化が可能になった理由は謎のままになっている。