江川泰一郎『英文法解説』(金子書房)を推す(5) 分詞構文では「ずっこけ分詞」に注意
英文法解説改訂3版 [ 江川泰一郎 ]楽天で購入『英文法解説』どこがオススメかを具体的に(specific)にお伝えします。分詞構文について「分詞構文は文語的」「分詞自体に時・理由などの意味はない」「いちいちbeingを補って考えるな」、また、独立分詞構文については「ラテン語の模倣で英語らしくない」と、以下のような明快な注意を与えている参考書、少ないと思いますよ。 さらに、分詞構文の学習上、最も重要なdangling participle(ダングリング パ~ティスィポゥ:懸垂分詞)、イギリス英語ではmisplaced modifier(ミスプレイストゥ モディファィァ:間違っておかれた修飾語)について、江川先生は「ずっこけ分詞」と命名し、注意喚起している。英語教員のみなさ~ん、懸垂分詞って知っていましたか~!ちなみに、原仙作先生の『英文法標準問題精講』(旺文社 1966)にも「懸垂分詞」(dangling participle)の項目がp. 168に載っていますよ(先日書店で『英文法標準問題精講』を見たら小綺麗に改訂されて骨抜きになっているようでした…、ショックです)。dangling participleについては練習が必要で、これこそ授業で取り上げるべきである(フランス語は分詞が何を説明するかを追求しないといけない言語ですから、フランス語学習者ならわかりますよね、この気持ち)。●江川先生の取り上げた例文をルターが訳してみます: Looking out of the window, the mountains were beautiful.ルターの訳:窓から見て…(誰が?)、その山々は(って? 山は目がないのだから、山は見ないですよ) 美しかった。→ ということで、「ずっこけ分詞」を書き直すと、こうなります: Seen through the window, the mountains were beautiful.ルターの訳:窓を通して見られて…(何が?)、その山々は(って、山ね!) 美しかった。★以上を踏まえて、ルターは学習上の提案をしています:2018.10.30 英文法、ルターの提案:分詞構文は書き言葉向き!+分詞構文は「話の本筋と伏線」で解説https://plaza.rakuten.co.jp/shineikenkngw/diary/201810300000/■以下、引用:p.347 (2) ずっこけ分詞 次の例は分詞の意味上の主語と文の主語とが一致しないので、(実際には時おり使われるが)文法的には誤りとされている。 Looking out of the window, the mountains were beautiful. (窓から外を眺めると、山は美しかった)p.346【解説】§231 . 分詞構文 (1) 分詞構文は文語的な表現で、日常的な英文にはむやみに使うべきではない。なお、分詞構文を時・理由などに分けたのは、分詞を含む文全体からそういう意味が出てくるのであって、分詞自身にそういう意味があるわけではない。(3) 解釈上beingを補えるからといって、いちいちbeingを補って考えるのは好ましくない。好ましくないどころか、文法意識過剰による邪道と言えよう。p.348【解説】§233 . 独立分詞構文 (1) 独立分詞構文は元来ラテン語の模倣によるもので、Onions (Syntax, §100)は「明らかに異質である」(distinctly alien to English)という判定を下している。(2) 「ずっこけ分詞」は私が作った用語で、従来の「懸垂分詞」よりは平易でよいと思う。それはそれとして、米英の語法関係の本には必ず取り上げられていて、使用を慎むようにとの注意が出ている。またその一方では、意味に誤解を生じない限り頭から誤用と決めつけない文法家もいる(Evans, Usage, p.354)。