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カテゴリ:本の感想:日本の小説
2022/07/14 『みんなの怪盗ルパン』ポプラ社 2016 地元の図書館で初日に借りた一冊は、子どもの頃の愛読書、ポプラ社の怪盗ルパンシリーズを現代の日本の作家たちがルパンを書いたら…という夢のような本、『みんなの怪盗ルパン』だ! タイトルを見ただけで、すぐにその趣旨がわかった! 思わず手に取った。なにしろ小学校時代、夏休みに図書館から借りるのは怪盗ルパンだけというのが数年間続き、自分でも他の本は読めない自分なのではないかと思ってしまうほど、他の本を読もうとは思わなかった。読むのはルパン、読書はそれだけ。あとは児童館での卓球、ゴロベース、ドッジボール、六虫、トランプ(ナポレオン)三昧。そんな小学生で、ポプラ社のルパンを翻訳していた南洋一郎さんの文体にどっぷりはまっていたと思う。高校生になって堀口大学さん訳の新潮文庫のルパンを読もうとしたが、まったく興味が持てなかった。大学生になってからはヘッセが好きになったので今度は高橋健二さんの文体にはまってしまった。大変偏りのある読書傾向である。私にとって読みにくい文体だったり、稚拙な書き方だったりすると、カチンカチンときて内容が入ってこない。 というわけで、二時間弱であっという間に読了。 全体として、企画は成功していると思う。満足しました。 小林泰三さん(1962年生まれ)「最初の角逐」は自分の読み方が悪いのだと思いますが、前後を読み取れないときがあったのと、すぐにホームズだとわかってしまったので意外性がなかったかなぁ。 近藤史恵さん(1969年生まれ)「青い猫目石」はルパン自身が恋愛にからんでこないので後期の作品のテイストだと思いながら読んだ(若者の恋を応援するフーテンの寅さんみたいですね…)。馬車の中で、拳銃を突きつけすごんでくる感じが原作のルパンのイメージに重なり、ルパンらしい気がした。誰がルパンの手引きをしたのかというのを匂わせるオチも良かった。 藤野恵美さん(1978年生まれ)「ありし日のルパン」は子どもの時のルパンが主人公だが、私がルブランの本で得たイメージでは活発な男の子というよりも(薄い窓から通り抜けられるような)華奢で繊細な男の子なので、本作品では活発すぎて違和感があった。作品としては良かったですよ。 真山仁さん(1962年生まれ)「ルパンの正義」は直筆の書類を集め、鑑定士に依頼するところが丁寧に書かれていて、生々しいかんじが良かった。『ハゲタカ』の作者だということで、ドレフュス事件とからめた展開が上手かった。ドレフュスの妻子を保護しつつ、ドレフュスを救出しようとする設定がルパンらしくて良かった。 湊かなえさん(1973年生まれ)「仏蘭西紳士」は日本が舞台になっていて、まさにこの企画が生かされていると感じた。日本の美少女姉妹を助けるルパンなんて夢のようではありませんか! トリックは物足りないかもしれませんが、それよりも大好きな『八点鐘』の「オルタンス」「レニーヌ公爵」の名前が出てきて、ルパンファンとしてはそこだけで高得点かな!
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Last updated
2022.07.15 00:40:00
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