「あんまりですよ、ご主人様!」
白桃扇は声を荒げる。
「寒さに弱い私を、雪の中にほったらかしにしておいて!
約4年間、こうしてコツコツお勤めしてきたじゃないですか!
私なりに成長しお役にたったつもりです! なのに、あんまりですよ、ご主人様!」
いつになく強く訴える白桃扇の目には涙が浮かんでいた。
たしかに、小柄だった白桃扇は4年間の間にみるみる成長し、
少しひょろりとしているものの、背が高く立派な姿であった。
手を煩わせることなく、順調に育ったために白桃扇をないがしろにしてきたかもしれない。
「いや、しかし白桃扇、お前の仲間は皆外にいるのに、お前だけ特別扱いできないだろう?」
言いながら私は心が揺れていた。
かつてすらりと背が高く凛としていたあの白桃扇が、
今は腰が曲がり肌も黄ばみ、すっかり老いた風貌なのだ。
美しかった白髪も今はぼさぼさと乱れている。
足元は雪解け水なのか涙なのかずいぶん濡れていた。
「私は元々南国の出身です。暑い夏なら少しの水で耐えましょう。
しかしこの寒波と度重なる積雪で、私の心と身体はすっかり参っております…。」
悲しげにうつむくその声は徐々に諦めたように小さくなっていく。
「あぁ、もうよい、今回ばかりは特別だ!仲間もわかってくれるだろう!」
ぐいと部屋に引き込む。蛍光灯の下でみる白桃扇はますます老いぼれてみえた。
その表情からは安堵しているのかも分からない。
とにかく、白桃扇はしばらく濡れずにすむ。
しかしながら過度な水を嫌う白桃扇が機嫌をなおすのは難しい。
こいつらは人と違っていくら謝っても打ち解けることはできないのだ。
ウチワサボテンの一種たる白桃扇には快適な温度と日光と。
痛んだところは捨てて新芽がでるのを待つしかないだろう。
ともかく長く育てたサボテンの弱った姿に心が痛む。
![IMGP0649.jpg](https://image.space.rakuten.co.jp/lg01/52/0000717352/54/img52331d4ezikfzj.jpeg)
あ、いや、ベランダで育ててたサボテンの一種「白桃扇」が
ここ数日の積雪でみるみる弱っていったので、室内に取り込んだってだけの話ですよ。
ちなみにミニバラ・レモンユーカリ・グリーンネックレス等からも舌打ちが聞こえます。
部屋に置き場所ないよ~。