テロリストは、非情な理想を掲げ、純情な夢を見る
金曜日…国井咲也の満巻全席 第127席~国井がタイトルから想像するとこんなふう~ 最初は、地震かと思った。 お父さんにお母さん。 やさしかったお兄ちゃん。 家族みんな一週間後に迫っていた、 私の二泊三日の林間学校用のいろんなものを 買い出しにデパートへ訪れていた。 お父さんとお兄ちゃんの片手が紙袋で塞がった頃、 ちょうどお昼になったので、 お昼ご飯をたべようと、レストラン街にあがって、 エレベータが最上階に到着したベルが鳴った瞬間だった―。 目が覚めると、見覚えのない白い部屋に私は寝ていた。 そこが病室だと知ったのは, 事故から二週間後。 私は神に感謝した。 生かしてくれてありがとう、そう思った。 そして、 そのあとすぐに神を憎んだ。 どうして私だけ生き残したのかと憎んだ。 泣いた。 ずっと、ずっと泣いていた。 それが事故ではなく、人の手によるものだと知ったのは それから3日後だった。 それからしばらくして、 動かなくなった私の体がベツドから起き上がれるようになった頃、 あの日、全てを破壊した男が まだ捕まっていないことを聞かされた。 私は努めて平静を装った。 そうしなければ、喜びのあまり、 笑い出してしまうところだったからだ。 私はそのとき、 悪魔に感謝した。 一人で生きてゆく、「希望」を与えられた気がした。 どんなに蔑まれた時があっても。 どんな裏切りにあっても。 どんな陵辱に犯された事があっても。 この男の事を想い、 ”おまじない”を、こうつぶやけば、 もう二度と涙が落ちる事はなかった。 「お前だけは、私が殺す」 これが私のおまじない。 強くなる魔法の言葉。 彼こそ私のすべて。 すべてを奪ったこの男が、 私の『理由』。 私の全て。 今度は、私がすべてを破壊してやる。 国井がタイトルから想像する 『純情テロリスト』って、 きっとこんなふう。 ちなみに来週は、 『マリア様がみてる』です。 (これもタイトルからして重そうだ)