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カテゴリ:本の話
那須先生、あまりにもリアル過ぎやしませんか…
![]() 感情移入した小説・マンガのキャラが実際に成長していったら今はどんな生活を送っているのか。 そんなことを考えたことがある人は結構多いのではないだろうか。 児童文学最大のミリオンセラーと言われる「ズッコケ三人組」の「現在」について、シリーズの番外編として那須正幹氏がオールドファンの要望に応えて書いたという作品である。 子供の頃にこのシリーズを読んだという人は結構多いと思う。 タイムスリップしたかと思えば株式会社を作ってみたり。 山賊の仲間にならされたかと思えば宝探しをしたり。 生徒会長選挙のような日常的な小学校生活の話あった。 子供の自分にはできないこと、大人になってもできないだろうこと、そして現実にはあり得ないことを彼らはやってくれていたので、楽しんで読んでいたのを覚えている。 さて、彼らとその周辺の40歳の様子であるが、正直なところリアルすぎ。 冒頭からいきなり飲み屋でのハチベエ(コンビニ店主)のグチで、花山商店街がシャッター通りになってしまったという話で始まる。 地方の経済はまだまだ回復してないのか、などと日銀の支店長会議のようなネタがいきなりリアルを突きつけてくる。 そしてそんな彼らが巻き込まれる事件も小学生の時とは違い、宇宙人も山賊も出てこなければ、タイムスリップもしない。 かつて対決した怪盗Xが再度現れ、三人組に挑戦するというものである。 それでも現実にはあり得ない話ではあるが。 基本的なパターンは従来通り。三人(+α)が協力して事件に立ち向かっていくのだが、事件に対して一番積極的なのがハカセ(中学校教師)というのはやはり独身のなせる業なのか(笑) それにしてもモーちゃんの扱いが「勤め先が倒産してレンタルビデオのアルバイト店員」っていうのはあまりにも…。 成長したのは3人組だけではなく、彼らの両親や同級生にも同様に時間が流れている。ズッコケ三人組には「未来報告」という夢オチの作品があるとのことだが(当方未読)、ネットで見たところそのネタを踏襲している部分もあるらしい。 3人それぞれに家族や職場がありその中で苦労しながら頑張っているが、怪盗Xに立ち向かっていくうちに、物語冒頭ではとても疲れているように見えた三人が活き活きとしてくるように見えてきてしまう。 それぞれのラストシーンでプラマイゼロになったというか、「人生そんなに捨てたもんじゃない」という感じに描かれていたので正直ホッとした。 それにしても、いきなり40代の彼らを見るのは少々の違和感もあった。 こっちはきちんと時間が流れてるのに、あっちは25年以上も小学6年生をやっている。なので、自分が彼らと同年代だったのが何時だったか、どの作品だったかということで、読者それぞれの中での彼らの世代が決まってしまうように思う。となると、自分と同年代の彼らはどうなのか、というのが多少なりとも気になってしまう。 この際R25は那須先生に執筆依頼をすべきではないか(笑) この作品、本文中に一切挿絵は出てこないが、それは正解だったと思う。 ストーリーがあまりにもリアルであるので、もしそれを絵にされるとより「重たく」なってしまっただろう。 この作品は、子供の頃にシリーズを読んでいないと話について行けない部分があるが、これを読了してからの問題としては、シリーズの読んでいない作品(=自分の場合は、自分の小学校卒業前後以降に発表された作品)にこれから手を出していいものか、ということがある。 どうしたものやら。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2006.01.25 00:02:10
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