カテゴリ:読書録
最近心に残った本のひとつに、『人間とは何か』(岩波文庫)というのがあります。
これは『ハックルべリィ・フィンの冒険』『トム・ソーヤ』の生みの親で知られるマーク・トウェインの晩年の作品です。 彼は晩年、何かに犯されたのかのように人間不信となり、悲観論漂う作品ばかりを作るようになります。この本もそのひとつなのです。 おそらく、長女の死、妻の重病、末娘のてんかん、他人の莫大な負債を背負うなど、相次いだ不運により、自分を内省化するようになったのでしょう。そして、彼流の「人間」というものに対する厳しい見方が形成されていったのです。 プラトンの著作のように青年と老人の対話形式で語られるこの本では、「人間は外部からの作用によってのみ働き、自分は行動したいという衝動にのみに従って生きる機械である」と述べる老人と、それを否定しようとして「自己犠牲」などの例を持ち出し、老人に反証する青年とのやりとりが続きます。 要するに、「人に言われたことによって、人は自分の意見を修正したり、自分の意見に自信を持ったりする。でもそれは自分の手柄ではなく、自分がそうすることで気分が良くなるという欲求にしたがってそうなっているだけだよ」ということです。 本の中に要約されている「自分の考え方が変わるのは、外部の作用によってであり、自分が思考によって変わるものではない」というエッセンスには本当に驚嘆させられます。 絶望の中で見た救いようのない悲観論、他律的な自己によって磨かれた文章は、私の考える「人間の本質」に近いものだと思うのです。 結局、自分の意思で動いていると思っても、人間は他の人や見えない力に動かされている。ということを強く実感させられる本です。 非常にためになる著作だと思いますが、元気がないときに読むのはおすすめできません。「うつ」状態の人はより落ち込むこと請け合いです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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