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2020.10.06
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三生三世十里桃花 Eternal Love
第56話「擎蒼との対決」

翼(ヨク)君・離鏡(リケイ)は擎蒼(ケイソウ)の元神をおびき出し、自分たち父子で全てを終わらせることにした。
いくら功力の強い父でも、元神では自分に触れることはできない。
「今日われら父子はここで心中だ!」
離鏡は父にとどめを刺そうと飛び出したが、擎蒼が突然、戟(ホコ)を召喚して離鏡の剣を阻止した。
「方天画戟(ホウテンガゲキ)?!」
「驚いたか?元神の私が無理でも、この方天画戟ならお前を殺せる、離鏡、覚悟しろ!」
すでにほとんどの血を使い果たしていた離鏡はあっけなく方天画戟に吹き飛ばされた。

離鏡の計画は裏目に出た。
擎蒼は離鏡が召喚したおかげで思いのほか早く東皇鐘(トウコウショウ)を出られると喜び、その上、離鏡を殺して十数万年分の仙力を手に入れるという。
すでに深手を負っていた離鏡は父が放った方天画戟の一撃に倒れ、結局、自らの命と引き換えに擎蒼の功力を増大させる結果となった。

一方、若水河畔では白鳳九(ハクホウキュウ)が追魂(ツイコン)術で擎蒼を調べていた。
しかしなぜか元神が見つからない。
その時、擎蒼の身体に元神が戻ると同時に鳳九に落雷が直撃した。
東華帝君(トウカテイクン)は鳳九を受け止め河畔に降りると、司命星君(シメイセイクン)に墨淵(ボクエン)を連れて来るよう頼む。
「いや、青丘の方が近い、白浅(ハクセン)を呼べ」

擎蒼が放つ紅蓮業火(グレンゴウカ)が四海八荒の空を赤く染めた。
その頃、迷谷(メイコク)は再び白浅に皇太子夜華(ヤカ)が狐狸洞の前から一歩も動かないと報告する。
「…その名をまた口にしたら叩きのめすわよ?」
白浅はまだ機嫌が悪かったが、急に雷鳴がとどろき、赤い電光が差し込んだ。



天枢(テンスウ)は天兵たちと仙力を合わせ、東皇鐘の封印を懸命に守っていた。
意識が戻った白鳳九は愛しい帝君の腕に抱かれながら、ここで一緒に死ねるなら本望だという。
東華帝君は自分がいる限り鳳九を死なせないとなだめ、一時しのぎでも自分のわずかな仙力で封印することにした。
「そなたは姑姑や四叔のもとへ行け」
「嫌です、私は帝君と生死を共にする覚悟です」
「私は自ら婚姻の縁を絶った身だ!
 そなたと一緒になれば戦乱の世を招き、衆生が苦しむ、我らも結ばれぬ
 そなたは未来の女君だ、ふざけるでない!」
「ふざけていません!あなたが死ねば私も死にます!」
鳳九は今の東華帝君が擎蒼と戦っても無駄死にするだけだと止めた。
すると東皇鐘から擎蒼の高笑いが聞こえ、河畔に向かって真っ黒な邪気が放たれる。
封印を守ってきた天兵たちは衝撃で一斉に倒れ、鳳九は帝君をかばって黒い邪気が直撃、激しく血を吐いた。

一方、白浅は外の様子が気になりながらも、夜華の顔を見る勇気がなかった。
しかし突然、司命星君の叫び声が聞こえる。
「姑姑!若水河畔でゆゆしきことが!」
驚いた白浅は狐狸洞を出ると、司命星君がちょうど夜華に擎蒼が封印を破りそうだと説明していた。
「もう出たの?」
「恐らく間もなくかと…」
「迷谷、四哥を若水に呼んで」
夜華はようやく白浅と再会できたが、白浅は一瞥もせず飛び出して行った。

東華帝君は再び倒れた白鳳九を抱きしめ、ひとまず結界を敷いて守った。
倒れていた天枢たちは何とか立ち上がり、再び仙力を集結して東華帝君を守る。
もはや一刻の猶予もなく、土地神はたとえ勝てずとも戦うと決めた。
素錦(ソキン)は無駄死にだと止めたが、土地神は7万年も若水を守って来たと自負し、東皇鐘に向かって走り出す。
その時、白浅が駆けつけ、土地神を引っ張り戻した。
「姑姑!」

白浅は玉清崑崙扇(ギョクシンコンロンセン)を広げて飛び上がり、擎蒼と対峙した。
「司音(シイン)、お前か?」
「いかにも!お前を封印してまだ300年、もう出て来ようとは!」
「うわはははは~!お前と墨淵を待っていた!7万年余も閉じ込めおって!
 お前ら師弟の命を取り、この恨みを晴らす!」
「何を偉そうに!」
しかし後を追って来た夜華が到着、いきなり白浅を神器で捕らえ、河畔へ引き戻してしまう。
「そなたでは勝てない、私が…」
「修為(シュウイ)がないのにどう戦うというの?!夜華っ!」
すると夜華は動揺する白浅を残し、東皇鐘に向かって飛び上がった。
焦った白浅は早く神器を解いてくれと頼んだが、皇太子の奇妙な神器を解ける神仙はここにいない。

擎蒼は夜華を墨淵だと間違えたが、すぐ別人だと分かった。
「私は天族太子夜華」
するとついに擎蒼が封印を破って東皇鐘を飛び出し、方天画戟で夜華に襲いかかった。
その時、擎蒼の復活に気づいた翼族も若水に到着、白浅たち天族に向かって来る。
勇敢な土地神は無謀にも1人で結界から飛び出し応戦したが、危ないところで白真(ハクシン)が到着し難を逃れた。

夜華と擎蒼の激しい戦いが繰り広げられた。
夜華は擎蒼の戟(ホコ)で胸を刺されながらも反撃、ついに擎蒼を成敗する。
2人は河畔に落下、擎蒼は夜華に負けたことを受け入れられなかったが、白真も確かに修為のない夜華が勝てるとは意外だった。
ようやく神器から解放され夜華に抱きつく白浅、しかし安堵したのもつかの間、突然、東皇鐘が大きく口を開く。
実は擎蒼は閉じ込められていた7万年の間に自分の命と東皇鐘を一体化させていた。
「私が死ねば東皇鐘は紅蓮業火を放つ、お前たちは私の道連れとなるのだ…ぶわっはっははは~!」

擎蒼は高笑いすると、そのままばったり倒れて絶命した。
すると仙力の弱い天兵や翼兵らが次々と東皇鐘に吸い込まれて行く。
夜華は白浅が止めるのも聞かず東皇鐘へ飛び上がると、ふと振り返って白浅を見下ろした。
「夜華っ!行っちゃ駄目!戻ってきてーっ!」
白浅の悲痛な叫び声が若水に響き渡る。
しかし夜華は四海八荒の衆生を救うため、そのまま東皇鐘に元神を捧げた。

夜華がゆっくり落下してきた。
白浅は急いで飛び上がり、夜華を抱きしめる。
「イェファ…」
「泣くな…私は平気だ…こんな傷は何でもない…ゴホッ!」
白浅は思わず夜華に口づけしたが、夜華はこらえきれず顔を背け、激しく喀血してしまう。
「イェファ!しっかりして!大丈夫?」
夜華は白浅を悲しませないよう血を吐かずに耐えたが、もはや限界が近づいていた。
「夜華、正直に言って…死んでしまうの?」
「…墨淵が目覚めた…一緒になるがいい…墨淵ならよくしてくれる…
 きっと私よりもな…これで安心だ」
「だめよ…ゥゥゥ…」
「浅浅…私が今生で愛したのは…そなただけだ…私を忘れないで欲しい…頼む…忘れないでくれ…」
「いやよ、夜華、死なないで、師父のところへ連れて行くわ、師父が必ず救ってくれる…」
白浅は必死に夜華に声をかけ、励ました。
「死んだりしたら折顔(セツガン)からまた忘れ薬をもらってあなたを忘れるから!
 誰とも一緒にならないし、2度とあなたを思い出さない…ウッ…聞こえた?!」
「…それもいい」
「なぜ?」
すると夜華は一筋の涙を残し、そっと目を閉じた。



鐘の音を聞いた墨淵は洞窟を出た。
どうやらすでに誰かが元神で東皇鐘を封印したらしい。
その頃、若水河畔では白浅が夜華の仙体を抱きしめたまま、結界の中に閉じこもっていた。
「東皇鐘の封印が解けて天地が焼き尽くされても、私たちは絶対に離れないわ…
 なぜ私を残して逝ったの?…夜華?どうして私を捨てたの?」
白真はこのままでは白浅も死んでしまうと心配した。
駆けつけた折顔は白浅の一生には常に死と別れが付きまとっているようだとため息を漏らす。
すると天君の命で皇太子を引き取りに来た神仙が折顔たちに力を貸して欲しいと嘆願した。
しかし白真にも折顔にもどうにもならない。
白鳳九は涙ながらに呼び続けたが、どんなに結界を叩いても白浅は返事をしなかった。
そこへ唯一、白浅の心を動かせる墨淵が到着する。
「17…」
師匠の声を聞いた白浅はついに結界を解き、夜華も師匠のように戻って来るはずだと訴えた。

「17…棺を用意し、夜華を逝かせよう」
師匠の思わぬ言葉に白浅は動揺し、どんなに長くとも夜華の帰りを待つという。
「もう息がない」
「師父も元神で東皇鐘を封じたわ…皆、師父は死んだと言ったけど…ゥッ…戻って来てくださいました
 夜華も戻ってきます…絶対に戻るわ…」
「待つとしても、このような場所では夜華もゆっくり休めないぞ」
「ごもっともです、私も夜華に約束しました、青丘の狐狸洞に閉じ込めると…
 日々、会えるのは私だけ…青丘に帰ります」
「…行きなさい」
こうして白浅は夜華を連れ、姿を消した。

神仙と天兵たちが狐狸洞の前でひざまずいて10日になった。
迷谷は白浅に代わり対応に追われる。
「仙人の皆様、ここは歴代青丘帝君の居所です
 我が姑姑は青丘五荒五帝の1人である女君、青丘には天族のようにたくさんの規則はないものの、
 女君の住まいに誰も立ち入ることはできません」
天君の使いたちは迷谷に姑姑の説得を哀願したが、迷谷が主人の命を無視することなど不可能だった。

白浅は一睡もせず、夜華に付き切りだった。
迷谷は阿離(アリ)を連れて来るかと聞いたが、白浅は夜華の世話で手一杯だという。
強情な妹を前にしては白真も何も打つ手はなかった。

悲しみにくれる九重天に帝君が素錦を連れて戻ってきた。
天君はなぜ東皇鐘の異変を直ちに知らせなかったのかと激怒、素錦のせいで援軍を遅れず、夜華が犠牲になったという。
「あの時、上神が大勢いたので…ゥッ…余計なまねを控えたのです…私など何の役にも立ちません」
素錦は涙ながらに釈明したが、夜華を失った天君の失望は大きかった。
「天族の掟に従い、素錦を九重天から落とせ、永久に追放する…引っ立てよ!」
すると天君は夜華の引き渡しを拒んでいる白浅の説得を東華帝君に頼みたいと切り出した。
白浅は高貴な身分のため、使者たちでは強く出られない。
「夜華を引き取ってくれ、息子2人も送る」
「はあ~私も夜華の最期を見ました、あの時…いや何でもない、青丘を訪ね、説得してみましょう」
東華帝君は何か言いかけたが、結局、やめてしまう。

白鳳九は折顔の処方で薬を煎じていた。
この薬で本当に姑姑が眠れるなら良いが…。
その時、突然、正房に東華帝君と央錯(ヨウサク)、楽胥(ラクショ)夫婦、連宋(レンソウ)が棺を持った天兵たちを連れて現れた。
迷谷もさすがに追い返すわけにはいかず、白鳳九も丁重に拝礼する。
「白浅上神に話があると伝えてくれ」
すると白浅が現れた。

東華帝君は白浅の気持ちに理解を示したが、両親が未だ我が子に会えず、天君も寵愛する孫を失って悲しんでいると訴えた。
「どう考えても道理に合わないだろう?」
「つまり、皆さんんは夜華を連れて行くと?」
「いかにも、夜華の両親が玄晶氷棺(ゲンショウヒョウカン)を用意した
 夜華の亡骸を天族の聖地・無妄海(ブボウカイ)に葬るためだ」
「…夜華は渡せません、青丘に連れて帰ると約束しましたから」
驚いた楽胥は思わず白浅に迫った。
「あなたが素素だったと知ってから、私の心はずっと落ち着かなかった…
 やはり不安が的中したわ…夜華は罰当たりなことでもしたのかしら?2度もあなたに奪われたわ!
 あなたが素素だった頃、夜華はあなたのため太子の座を捨てようとした
 その後、素錦との一件であなたは両目を償うことになった…
 本来なら雷刑も受けるはずが、結局、目を失っただけ!夜華が代わりに雷刑を受けたのよ!
 しかもあなたが誅仙(チュウセン)台から飛び降りたりしたから、夜華も後を追ったわ…
 あなたにとっては上神になる試練、でも夜華は?!
 あの子はあなたのせいで辛酸をなめてばかり…あなたは夜華のために何かしてくれた?
 何もしていない…なのに臆面もなく夜華を独占し、あの子が死んだら亡骸さえ我が物にした!
 答えてちょうだい…白浅、なぜなの?!」
「やめよ」
央錯は体面を守るため楽胥は興奮しただけだと釈明し、白浅にどうか気にしないで欲しいと言った。
息子なら擎蒼を討って元神で東皇鐘を封じ、世のために死んだとして天君に賞されたという。
「だが息子は返して頂きたい…
 上神は息子の許嫁だが婚儀はまだだ、亡骸を独占するのは筋が通らない
 息子は天族太子、天族には絶対の掟がある、亡骸は無妄海に葬らねばならない」
央錯は丁重に夜華を引き取らせて欲しいと頼んだ。

つづく


(  ̄꒳ ̄)うむ、確かに家族に会わせてやれよと思う…
だがしかし楽胥…何言っちゃってるのかしらねえ?





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最終更新日  2020.10.06 11:50:51
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