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1962年生まれ。95年よりイタリア在住。ジャーナリスト・翻訳家として、イタリアサッカーの魅力と奥深さを伝えている。本ブログでは“カルチョ”の枠から時々はみだしつつ、イタリアの生活、社会、文化を多角的に取り上げていく。

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片野道郎の日記 [全55件]

Tifosissimo!!! 本舗は更新中

STARsoccer誌が休刊したこともあって、このTifosissimo!!! fuori casaも、昨年秋をもっていちおう更新終了ということになっています。
もちろん、Tifosissimo!!!本舗の方は、引き続き更新を継続していますし、新たにTifosissimo!!! archiveというアーカイヴのページも作りました。こちらは週に何回か、過去に雑誌などに寄稿したテキストを採録しています。
よろしければ、そちらを引き続きチェックしていただけると嬉しいです。
今後ともよろしくご愛読のほどを。□


Last updated 2007.09.23 02:13:48


2006.10.18

秋の味覚ポルチーニ

日本では「食欲の秋」と言いますが、イタリアでは一年中が食欲の季節なので、特に秋がどうということはありません。でももちろん、秋には秋の味覚があります。ぼくが住んでいるピエモンテ州はイタリア半島の付け根よりさらに北の内陸部なので、季節の味覚はもっぱら山の幸。秋ということになると、やっぱり一番は各種の(ナカムラじゃないよ)ということになります。
というわけで、これはイタリアの代表的な秋の味覚というべきフンギ・ポルチーニ。椎茸と一緒で、乾燥ものは1年中出回っているわけですが、生が食べられるのは秋、9月から10月にかけての1ヶ月かそこらだけです。実際、このポルチーニを食べたのも、もう1ヶ月近く前の話なんですが、今まで忘れてたので、この機会にご紹介することにします。

イタリアでは秋の訪れとともに、どこの八百屋にもたくさんのポルチーニが出回ります。イタリア産だけじゃなくて、スロヴェニア産とかルーマニア産とかもあるみたいです。ほとんどは、傘が開いてちょっと柔らかくなったものなんですが、運がいいと、この写真のみたいに、まだ傘が開いてなくて固く身が締まった(という言い方も変ですが)やつが手に入ることもあります。
傘が開いちゃったやつは、普通に薄切りにしてオイル(好みによってはバターも加えて)で炒めてパスタのソースにしたりすると美味しいのですが、こういう固いポルチーニは、ちょっと厚め(15-20mmくらい)に切って、小麦粉で軽く衣をつけて、オリーブオイルでフリット(少なめの油で揚げ焼き)するのが一番美味いというのが、わが家の結論です。いやこれも美味かった。写真撮り忘れちまいましたけど。

ピエモンテの茸といえば、タルトゥーフォ・ビアンコ、すなわち白トリュフを忘れるわけにはいきません。これは10月から11月にかけて、すなわち今が旬の真っ盛り。味はほとんどしないんだけど、ものすごく強い独特の芳香を持っているので、パスタなんかに薄く削りかけてその香りを楽しむわけですが、ごく限られた一部の丘陵地帯でしか採れないので、すごく高い値段(100g数万円とか)がついており、残念ながらぼくのような一般庶民には高嶺の花。正直言ってもう何年も食べてません。
その代わりといっては何ですが、その白トリュフの小さなかけらで香り付けしたオリーブオイル(以前紹介しました)とか、白トリュフと一緒に一晩冷蔵庫に入れて香りを移したトリュフ風味の生卵だとか、そういうものも存在していて、庶民はそれで香りのおすそ分けをいただくことができます。白トリュフの風味を存分に味わいたければ目玉焼きに削りかけて食べるのが一番、というのが地元では定説になっているのですが、結局は香りの問題なので、予め香りだけ移した生卵で目玉焼きを作っても、その風情は十分以上に味わうことができます。安上がりです。□


Last updated 2006.10.19 02:41:10

2006.10.08

モッカガッタで練習試合

コヴェルチャーノの翌日は、ぼくのホームであるスタディオ・モッカガッタで取材。
国際Aマッチウィークで今週末はリーグ戦がお休みなので、ジェノヴァを本拠地とするセリエAのサンプドリアとトリノを本拠地とするセリエBのユヴェントスが、中間地点のアレッサンドリア(どちらの都市からも1時間弱)で練習試合を戦ったのでした。

サンプは、アズーリに招集された中盤のジェンナーロ・デルヴェッキオ(昔ローマにいたFWマルコ=現アスコリとは別人)ひとりを欠いているだけでしたが、ユーヴェの方は、アズーリにデル・ピエーロ、カモラネージ、ブッフォンの3人が招集され、さらにトレゼゲ、ブームソン、ボジノフ、R.コヴァチがそれぞれの国の代表に、そしてキエッリーニパダリーノがイタリアU-21代表に呼ばれて不在という、ほとんど二軍といっていい構成。上の写真からわかる通り(わかんないか)、ビリンデッリがキャプテンを務めているくらいで、スタメンのほとんどはユース上がりの若手でした。

練習試合とはいっても、両チームともクラブの会長、スポーツディレクターがご臨席という、なかなかちゃんとした仕立てです。ゴール裏にも少人数とはいえ、ちゃんとウルトラスの皆さんが詰めかけていました。サンプの方は、サポーターグループのアレッサンドリア支部がちゃんと旗を出してて、ユーヴェもゴール裏二大勢力のひとつであるARDITIが15人くらいだけどダンマクを持って来ていました。ウルトラスというのは、チームのためならどこへでも行くのが商売アイデンティティなので、どんなところでも存在を誇示することが重要なのです。

curvasamp curvajuve


試合の方は、さすがセリエA、というかスタメンの大半をレギュラー組が占めていたサンプが最初から圧倒、開始直後にキャプテンのフラーキがゴールを決め、20分には膝の怪我による長期欠場から復帰してこれが初めての実戦というバッザーニも決めて、前半は2-0、後半にさらに2点加えて4-0でユーヴェ(の二軍)を蹴散らしています。ユーヴェで目立ったのは、中盤のゲームメーカーとして一軍でもレギュラーを張っているパーロくらい。故障上がりのレグロッターリエ、出場機会が全然ないザラジェータは、全然ダメでした。
一応、マッチデータも載せときますか。

Juventus ? Sampdoria 0-4
ゴール: Flachi 2’, Bazzani 20’, Quagliarella 76’, Fontes da Mota 81’
警告: Palombo 63’, Accardi 90’

JUVENTUS: Mirante (Belardi 46’); Birindelli, Legrottaglie, Urbano (Pisani 46’), Rizza (Giovinco 46’); Marchionni (Rodriguez 82’), Zanetti (Marchisio 65’), Paro (Venitucci 80’), De Ceglie; Zalayeta, Guzman
ベンチ: Maniero, Bianco, Lanzafame. 監督: Deschamps

SAMPDORIA: Berti; Zivanovic (Bastrini 65’), Falcone, Sala (Pieri 46’), Accardi; Olivera (Fontes da Mota 73’), Bonanni, Palombo (Castellazzi P. 82’), Franceschini (Soddimo 58’); Bazzani (Foti 69’), Flachi (Quagliarella 46’)
ベンチ: Castellazzi L. 監督: Novellino

mocca_day mocca_creps mocca_notte

 平日の午後6時キックオフというスケジュールだったので、滅多に見られないセリエAにもかかわらず、観客は1000人くらいでした。試合開始前にはまだ陽が残っていたのですが、そのうち暗くなって、試合が終わる頃には月も出ていました。□


Last updated 2006.10.08 22:38:53

2006.10.06

アズーリとトリッパ

 今日はフィレンツェまで遠征。試合の取材ではなくインタビューでした。目的地はここ、チェントロ・テクニコ・コヴェルチャーノ。イタリアサッカー協会のトレーニングセンターであり、アズーリの総本山です。エンブレムの星がちゃんと4つになっているのがおわかりでしょうか。
 ご存じの通り今週は全世界的に国際Aマッチウィーク。9月に始まった欧州選手権予選、最初の2試合でリトアニアに引き分け(1-1)、フランスに惨敗(1-3)して勝ち点わずか1、首位のフランスとスコットランドに5ポイント差をつけられるという困った状況にあるイタリア代表akaカンピオーニ・デル・モンドも、土曜日のウクライナ戦(ホーム/ローマ)、来週水曜のグルジア戦(アウェー/トビリシ)に向け、ここコヴェルチャーノで合宿中です。そんなデリケートな状況にもかかわらず、運良く某カピターノにアポイントが取れて、2部練習の合間の昼休みに30分ほど話を聞くことができました。その中身はそのうちどこかで読めると思いますのでお楽しみに。

 実は、コヴェルチャーノに足を踏み入れるのはこれが初めて。フィレンツェ郊外、平野というか平らな盆地が途切れて丘陵部が始まる境目の、オリーブ畑に囲まれた緩い斜面に、サッカー協会技術部門のオフィス、監督養成コースのための教室から、代表チーム用の宿泊施設、練習場などが一体になったテクニカルセンターがあります。

cov_2

 昔はこのホールに飾ってある写真も、82年にベアルツォット監督かゾフがカップを掲げているそれだったのでしょうが、早速ドイツの写真で置き換えられています。
 ホールの先は、選手やスタッフのためのスペース。アズーリの置かれている状況が状況だし、そこに足を踏み入れる時にはけっこう緊張したのですが、選手の皆さんはみんなけっこうのんびりとリラックスしていました。ピルロ、デ・ロッシ、インザーギ、デル・ピエーロが、4人で卓を囲んで麻雀スコポーネ(イタリアでポピュラーなカードゲーム)に興じていたり(あの2人、別に仲悪いってわけでもないみたいですね)。まあ、あれだけの修羅場を乗り切って世界の頂点に立った人たちにとって、12試合ある予選で最初の2試合が終わってちょっと遅れを取っているくらい、大したプレッシャーではないのかもしれません。

cov_3

 で、せっかくフィレンツェくんだりまで出かけて行ったからには、やっぱり地元の名物料理を食べないわけにはいきません。フィレンツェ名物といえばビステッカ・フィオレンティーナ、と言いたくなるかもしれませんが、あれはハレの料理であって、日常の中にある庶民の食べ物とはちょっと違います。フィレンツェのそれといえば、何と言っても内臓です。
 以前、つかこのブログの記念すべき(?)第1回目で、ランプレドット、つまり牛の第4胃を煮込んだやつのサンドイッチをご紹介したのですが、今日食べたのはもうひとつの名物、トリッパ・アッラ・フィオレンティーナ。トリッパというのも牛の胃なんですが、こっちは4つあるうちの2番目。日本ではハチノスと呼ばれているあれの煮込みです。トリッパは、ランプレドットみたくサンドイッチにするだけでなく、こうやってトマトと香味野菜で煮込んだやつをそのままいただく食べ方の方がポピュラーなんじゃないでしょうか。第4胃と比べるとずっと肉厚なのは、反芻の段階がふたつも少ないので、消化中の草がまだ固いせいではないかと思われます。ちなみに第3胃は日本でいうセンマイ(刺身美味いですよね)で、これはイタリア料理では見かけません。

trippa_1
 
 フィレンツェには「トリッパイオ」といって、こういう庶民的な内臓料理だけを専門にしている屋台があります。こうやって、素っ気無いプラスチックの容器に入れて出してくれるんですが、味はもうばっちり。歯応えは、ぷりぷりとこりこりの中間くらい、といえばわかっていただけるでしょうか。残った汁はちゃんと全部パンで拭っていただきました。お行儀が悪いと言われようが「スカルペッタ」(パンで皿を拭うのをこう呼ぶ)は止められません。
 このトリッパイオの屋台、モロ観光地であるドゥオーモ周辺では見かけませんが、ちょっと外れると街中にもけっこうあるようです。あるようです、というのは、ぼくは大体いつも同じところに行ってしまうので、あんまり開拓できていないからなんですが(例外は試合の日のスタジアム周辺)。

trippa_2

 ここは、サンタ・マリア・ノヴェッラ駅の裏手にあるオンニサンティ広場Piazza Onnissantiにいつも店を出している屋台で、ご主人の話によると日本のガイドブックにも載っているそうです。実際、日本語の看板も出てたりします。フィレンツェにお越しの際は是非どうぞ。■


Last updated 2006.10.06 06:04:18

2006.10.01

テレコム・イタリア盗聴スキャンダルとインテル

「インテル盗聴問題とグイド・ロッシのテレコム・イタリア会長就任についてのコメントを」というコメントをいただきましたので、少し書きます。

話の発端は、イタリア最大の電話会社で元国営企業であるテレコム・イタリア(日本でのNTTみたいなもんです)がその内部で、政治家、企業、銀行、マスコミなど、政治・経済・社会に何らかの形で権力や影響力を持っている組織や個人を対象に、法律では許されていない電話通信の傍受=盗聴によるスパイ行為を組織的に行ってきたという、大規模な盗聴スキャンダルが表面化したことでした。
政財界を巻き込んだこの一大スキャンダルのはじっこの方には、カルチョの世界も絡んでいることが明らかになっています。直接的には、イタリアサッカー協会、ユヴェントス、GEAなど、カルチョスキャンダルで槍玉に上がったのと同じ組織・個人が、テレコムによるスパイ行為の対象になっていたということ。間接的には、テレコム経営陣と関連が深いインテルが、それに何らかの形でかかわっていたのではないかという疑いが持ち上がっていることです。その疑いの根拠となっている材料、その他の事実関係はざっくりいうと以下の通り。

――テレコム・イタリアは90年に民営化されている。その民営化を会長として行ったのが、独禁法の専門家であるグイド・ロッシ(翌91年に辞任)。ロッシは、イタリア独禁法の父と呼ばれる会社法の専門家で、大学教授、証券取引委員長、上院議員、モンテジソン(イタリア最大の総合化学メーカー)会長などを歴任しており、今年の5月からはイタリアサッカー協会(FIGC)の特別コミッショナーとなり、カルチョスキャンダルの後始末を進めていた。ロッシはインテリスタで、2003年までインテルの社外取締役だったこともある。

――99年にテレコムの経営権を手に入れ、このスキャンダル発覚まで会長を務めていたのは、イタリア最大のタイヤメーカーであるピレッリのオーナー会長マルコ・トロンケッティ・プロヴェーラ。彼はインテルのモラッティ会長の親友であり、モラッティに次ぐインテル第二の大株主。ピレッリは胸スポンサーとしてインテルに年間500万ユーロを支払っている。

――トロンケッティ・プロヴェーラは、盗聴スキャンダル発覚後、テレコム会長を辞任。後任には、FIGC特別コミッショナーを務めていたグイド・ロッシが、16年ぶりに復帰することになった。ロッシは当初、FIGCとの兼任は可能だとしていたが、テレコムのグループ会社であるTIM(携帯キャリア)がFIGCのスポンサー(セリエA、B、コッパ・イタリア、イタリア代表)という利害関係があることから、最終的にはコミッショナーを辞任。後任には、イタリアオリンピック連盟副会長のルカ・パンカッリが就任。

――テレコムにおける組織的なスパイ行為の責任者であるセキュリティ部長ジュリアーノ・タヴァローリ(すでに逮捕・拘留済み)は、そこから明らかになった事実を、テレコムの執行副会長兼代表取締役であるカルロ・ブオーナに逐一報告していたことが明らかになっている。カルロ・ブオーナはピレッリを代表してインテルの副会長を務めている。

――テレコムのスパイ行為の対象には、ユヴェントス、イタリアサッカー協会、GEAワールド(ルチアーノ・モッジの息子アレッサンドロが経営していたエージェント会社)など、カルチョの世界の関係者も含まれていた。理由は明らかではない。スパイ行為を通じて得られた情報の多くは、2004年末に処分されている模様。

――インテルは、テレコムのスパイ行為を受注していたのと同じ探偵会社ポリス・ディスティント(社長のエマヌエレ・チプリアーニは逮捕・拘留済み)に、クリスティアン・ヴィエーリの素行調査wを発注して、対価を支払っている。これはテレコムとは別件

――2002年、ダニーロ・ヌチーニ元主審がインテルの故ジャチント・ファッケッティ会長(当時)に面会を求め、モッジ、デ・サンティス主審などを中心とするカルチョ界の腐敗に言及した。インテルはヌチーニに検察庁に行って告発することを勧めたが、実現せず。

――2003年、「ある人物」(モラッティ談)が、デ・サンティス主審に関する素行調査をモラッティにオファーし、実際に調査が行われた。これもテレコムとは別件。「ある人物」が上記探偵会社社長チプリアーニである可能性は高いと見られているが、まだ裏は取れていない。インテルがこの調査に対価を支払ったかどうかは不明。モラッティは否定している(くれるというからもらっただけ、ということか)。この件については、FIGC調査室が調査に乗り出す予定。モラッティも事情聴取を受けることになる。

――カルチョスキャンダルの発端となった、ナポリ検察局による04-05シーズンを通じた通話傍受捜査(モッジなどが対象)には、テレコムが全面的に協力している。テレコム側の担当責任者はセキュリティ部長のタヴァローリだった。

以上から明らかなのは、テレコム・イタリアとインテルが人的に非常に近い関係にあること、カルチョの世界もテレコムのスパイ行為の対象になっていたこと、インテル首脳はテレコムのスパイ行為から得られる情報を知り得る立場にあったこと、などです。
とはいえ、インテルが直接的に関わったことが明らかになっているのは、少なくとも現時点では、ヴィエーリの素行調査(これはこれでセコい話ではあります)だけ。デ・サンティスの素行調査については、詳細がよくわからないところが多く、FIGC調査室の調査を待つ必要があります。
テレコムのスパイ行為への関わりについては、インテルとテレコム(モラッティとトロンケッティ・プロヴェーラ)が非常に近い関係にあるため、インテルの意思が何らかの形で働いていた可能性もある、という憶測が飛び交っているわけですが、マスコミ報道を見る限り、これについては否定的な見方が強いようです。一部では、インテルがテレコムを通じてカルチョスキャンダルを仕掛けたのではないか、という説までありますが、これはほとんど妄想と言うべきでしょう。カルチョスキャンダルは、トリノ検察局が行ってきたユヴェントスのドーピング疑惑をめぐる捜査が発端だったからです。

最後に付け加えれば、グイド・ロッシのテレコム会長就任は、ぼくはむしろ、ロッシが進めてきたカルチョ界の腐敗一掃、フェアで透明性のある新たな仕組みとルールの確立という改革路線に対して、レーガ・カルチョのアントニオ・マタレーゼ会長、フランコ・カッラーロ前FIGC会長を中心とする守旧派利権集団が、政財界の力を借りて巻き返しに出た結果、と理解しています。断れない仕事を押しつけてカルチョの世界からお引きとり願った、ということではないかと。この話は、始めるとまた長くなるのでやめときます。そのうちどこかに書く機会もあるでしょう。とりあえず今回はこのくらいで。
ちなみに写真は、ピネティーナのごみ箱。「インテルのようにクリーンに」と書いてあります。■


Last updated 2006.10.01 23:40:06

韃靼人風生肉のいただきかた

久しぶりに食い物話など。
日本では魚を生で食う、というと嫌な顔をするイタリア人は少なくありません。特に北イタリアはほとんど全部が内陸なので、魚を食べるという食文化自体がそもそも根付いていないというのがあります。最近は日本食がちょっとしたブームで、ミラノではセードルフがオシャレな日本食レストランを経営していたりもするので(詳しくはスターサッカー最新号80ページをどうぞ)、ああサシミっていうんだろ、とか言う人も多くはなりましたけど、食ったことあるという人はまだまだ少数派。

つい数日前も、取材先のパルマで一緒に昼飯を食った旧知のジャーナリスト(生粋のミラノっ子)が、「俺、魚全然食えないんだよ。生まれてこの方、食事はプリモがパスタ、セコンドがビステッカ(ステーキ)って決まってるんだ。ガキの頃はマンマが毎日パスタ打ってくれてたしさ、他のものには興味ないんだよね」と自慢気に語っていました。
50年近くパスタとビフテキだけで生きてきた、というのはすごい話のようにも思えるんですが、世界中のほとんどの国々では、文化にかかわらず、毎日ほとんど同じようなものを食べているというのも、もう一方の真実だったりします。昼は天丼、夜はイタメシ、次の日の昼はカレーを食べて、夜は中華、明日のディナーはフレンチだから昼はサンドイッチくらいにしとこう、とか、そんなにあれこれ節操のないバラエティに富んだ食生活を送っているのは、世界中を見回しても日本人以外には、NY、ロンドン、パリといったコスモポリタンな大都市の住民くらいしかいないんじゃないでしょうか。

魚を生で食う習慣のないイタリアでも、肉を生で食うのは「あり」です。有名なのはカルパッチョ、つまり牛肉または仔牛肉を極薄切りにした刺身ですね。まあこれも、イタリアの伝統的な料理じゃなく、元々はヴェネツィアのハリーズバーの創作料理だそうですが。このカルパッチョ、塩とオリーブオイルだけでシンプルに食べてもいいし、パルミッジャーノ・チーズの削ったの、ルッコラ、マッシュルームや黒トリュフの薄切りなどなど、各種トッピングを乗せて食べてもいいわけですが、まあ肉が美味しければ、味付けはシンプルな方が素材の味が生きるというものです。マヨネーズみたいなソースを網の目状にかけるやり方もありますが、あれは肉の味がわかんなくなっちゃって勿体ないので、ぼくはパスです。

カルパッチョ以外で生肉を食べる食べ方としては、タルタルステーキというのもあります。ユッケですね。というわけで、やっと写真まで話がたどりつきました。タルタルという名前はタタール人=韃靼人(モンゴル系遊牧民の総称)から来ているそうで、このタルタルステーキというのも、韃靼人が鞍の下に袋に入った生肉を入れて馬に乗り、こなれたところを食べていたのが起源、とか言われているわけです。
一般的なタルタルステーキのレシピは、コショウ、みじん切りのタマネギ、ケッパーなどの薬味で生肉の臭みを消して、卵の黄身と混ぜて食べるというもの。香辛料を除くとユッケとほとんど同じっすね。でも、信頼できる肉屋から買ってきた新鮮な肉だったら、臭みも何もないので、わざわざ香辛料で味を複雑にする必要もありません。というわけで、うちでは単に、馴染みの肉屋に行って脂身のほとんど入っていない赤身の肉をその場でミンチしてもらって(生で食べるからと言うと、それに適した肉を奥から出してきてくれる)、あとは塩とオリーブオイルでちょっとこねこねするだけ。昨日はたまたま八百屋に新鮮そうなマッシュルームがあったので、それをちょっと添えてみました。レモンをかけるかどうかは好みですね(ぼくはかけない)。
手前にある小さな瓶は、ピエモンテ名産白トリュフで香り付けしたオリーブオイル(スターサッカー最新号の「オリーブオイル戦記」で鹿野編集長が書いているあれです)。これをちょっと垂らすだけで、白トリュフのえもいわれぬ香りが加わって、生肉の風味を引き立ててくれます。

日本では、牛肉はサシが入っている霜降りがいいということになっていますが、ヨーロッパの肉屋ではああいうのを見ることはまずありません。時々、「日本にはコーベっていうすごく美味い牛肉があるらしいな。ビール飲ませてマッサージしてるらしいじゃないか」とか言われることはありますけど。で、こっちに住んでいると必然的に、脂の少ない赤身の牛肉を日常的に食べるようになるわけですが、慣れてくるとこれがなかなか味わいがあって美味いんです。日本の高級な牛肉ほど柔らかくないけど、固いってわけじゃないし、噛むほどに肉の旨味が出てくる。それはこうやって生で食っても変わりません。
脂の少ない牛肉に慣れちゃうと、逆に日本の高いステーキなんかは脂のべとっとした味ばかりで肉の味がしなくて、ひと口目はいいけど三口目くらいから五月蝿く感じるようになってきます。ビールを飲んでマッサージしてもらっている高級な牛さんは、出荷される頃には栄養過多の太り過ぎで目が見えなくなっているとかいう話もあるしな。ま、高級な牛肉よりも安い牛肉の方が美味く感じるというのは、安上がりな人生ではあります。■


Last updated 2006.10.01 20:03:30

2006.09.27

最新のスタジアムで観戦するセリエB

初手から唐突ですが、スターサッカー最新号はもうお読みいただいたでしょうか?
メインのミラノ特集は、ミラニスタ、インテリスタの皆さんはもちろん、カルチョが好きな人も嫌いな人も、楽しめること請け合い。ぼくも、巻頭のカカをはじめ、ガットゥーゾのインタビュー、ミランのブラジルコネクション話、ミランとインテルを偏愛するジャーナリストのインタビュー、ゴール裏の話を硬軟2本と、全部で15ページくらい書かせていただきました。まだの方は是非ご一読ください。

さて、この週末(もう4日も前ですが)は、今シーズンからトリノの2チーム(トリノ、ユヴェントス)が使い始めた新しいスタジアム、スタディオ・オリンピコに行ってきました。試合はのユヴェントス対モデナ。セリエBです。

ご存じの通り、天下のユヴェントスは、カルチョスキャンダルの主犯格として「過去2シーズンのスクデット召し上げ、セリエAから追放の上セリエBで勝ち点17剥奪の刑」に処されて、今シーズンはクラブ史上初のセリエB暮らしを強いられています。
歴史的に見ると、実は1913年に一度、イタリア全国選手権ピエモンテ州リーグ(当時は全国リーグはなかった)で最下位に沈み、州2部リーグ降格の対象になったことがあるのですが、この時は、たまたま参加チームが奇数だったお隣りロンバルディア州リーグに登録させてもらうというズルをして裏技を使って、そのまま全国選手権に居座ることに成功したのでした(翌シーズンにはピエモンテ州リーグに復帰)。しかしもちろん、21世紀にはそんなことは許されません。

torino_2

とはいえ、ユヴェンティーノの皆さんにいわせると、この処分はユーヴェにだけすべての責任を押しつける不当きわまりないものであり、我々は犠牲者である、ということになっています。こうして29回目のスクデット(昨シーズン獲ったけど剥奪されたやつです)を祝うTシャツを試合に着てくるのもその一環。

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ユーヴェのゴール裏(最近はDRUGHI、ARDITIという2大グループが仕切っており、かつて主流派だったVIKING、NUCLEOなどは、反対側のゴール裏に追いやられています)にも、「グイド・ロッシ処刑GUIDO ROSSI BOIA!」という物騒な横断幕が張り出されていました。グイド・ロッシというのは、つい数日前までイタリアサッカー協会の特別コミッショナーだった人です(詳しくはこのエントリーをご参照下さい)。

さて、このスタディオ・オリンピコはその名の通り、2月のトリノオリンピックで開会式に利用されたスタジアムです。以前のエントリーでも触れたことがありますが、元々はスタディオ・コムナーレという名前で、イタリアワールドカップ開催に当たってデッレ・アルピが造られた90年までは、ユーヴェとトリノの本拠地でした。その後2004年まで、ユーヴェが練習場として使っていたのですが、トリノオリンピックに合わせて大改装され、現在の姿になったというわけです。

torino_4

これが現在のオリンピコ。元々は陸上トラック付きのスタジアムだったものを、サッカー専用に改装したので、ピッチの周囲に無駄なスペースがあります。1階席の傾斜もサッカー専用としてはやや緩くて、前の方だとガラスフェンスが邪魔になって試合があんまり良く見えないかもしれません。
下の写真は、改装前、ユーヴェが練習場として使っていた当時のオリンピコです。基本的な構造はそのままで、3階席と屋根を上に付け足して改装したということがわかります。

torino_5

ちなみに、下左は当時の半分朽ち果てたメインスタンド。イタリアのスタジアムにしては前後左右の間隔が広く、背もたれも高かったりして非常にゆったりと座れるようになっていました。改装された今も客席の構造は変わっていないので、結果的にイタリアで最も快適性の高いスタジアムのひとつになったと言っていいでしょう。おかげで広そうに見えますが、キャパは2万人。この日もほぼ満員でした。トリノの試合は、1万5000席くらいが年間チケットで埋まってしまっています。

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上右の写真は参考資料です。フィレンツェのスタディオ・アルテミオ・フランキ。やはり昔からある陸上トラック付きのスタジアムを改装しています。1階席の傾斜の緩さ、2階席につながる階段の配置、ピッチとスタンドを隔てるガラスフェンスなど、トリノのオリンピコと意匠的に共通する部分が少なくありません。元のスタジアム自体、同じ時代、あるいは同じ設計者なのかもしれませんね。

このオリンピコには、快適性以外にもいいところがあります。それはアクセスの良さ。以前のデッレ・アルピは、トリノの中心からバスかトラムで40分前後という極悪な立地だったわけですが、こっちはポルタ・ヌオーヴァの駅からだと63番のバスか4番のトラムでほんの10分(フィラデルフィアFiladerfiaという停留所で降ります)。往きも帰りも非常に楽ちんです。

試合の方は、トレゼゲ、デル・ピエーロ、ネドヴェドという大御所がぼこぼことゴールを決めて、ユーヴェが4-0の圧勝。そもそも、これだけのメンバーを揃えてセリエBで戦って勝たない方がおかしいです。以下、この日のスタメン。
 GK:ブッフォン
 DF:ゼビナ、R.コバチ、ブームソン、バルザレッティ
 MF:カモラネージ、C.ザネッティ、パーロ、ネドヴェド
 FW:デル・ピエーロ、トレゼゲ

その上ベンチには、ボジノフ、マルキオンニ、キエッリーニ、ジャンニケッダといった顔ぶれが控えているのですから、ほとんど反則です。この試合を観た限りでは、華麗なパスワークとはまったく無縁、奪ったボールは素早く縦に展開し後は前の4人(2トップと両ウイング)が強引にねじ込むという、結果重視のごりごりしたサッカーはBに落ちても監督がデシャンになっても、まったく変わっていませんでした。こういうのを伝統というのです。

torino_7

この場面も、敵CKからのカウンター。DFラインから右サイドに流れたデル・ピエーロにロングパスが出て、中央にトレゼゲとパーロが走り込んでいます。この後は、DPが一旦切り返して1対1で突っかけ、見事にボールを奪われていたような気がします。

前回のエントリーで、古き良きスタジアムが好きだと書きましたが、こうやって行ってみると新しくて快適なスタジアムも、それはそれでいいっすね。今シーズンのユーヴェは、少なくともホームではほとんど勝つでしょうから、ユヴェンティーノの皆さんはいい気分になれること請け合い。トリノには大黒も在籍しているし(試合に出るのは難しそうですけど)、イタリア旅行の計画があるカルチョ好きの皆さんには、この新オリンピコでの試合観戦を是非お勧めしたいです。セリエAでもセリエBでも。■


Last updated 2006.09.28 04:16:43

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