1179338 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

長編時代小説コーナ

長編時代小説コーナ

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Profile

龍5777

龍5777

Favorite Blog

鮭の切り身焼き New! Pearunさん

^-^◆ あか・あお・… New! 和活喜さん

女子ゴルフパリオリ… New! クラッチハニーさん

さよならを言う前に … New! 千菊丸2151さん

良いのか悪いのか! New! 韓国の達人!さん

Comments

 人間辛抱@ Re:何故、安保法制が必要なのか。 (08/09) どうもお久しぶりです。 新型コロナウイル…
 http://buycialisky.com/@ Re:士道惨なり(11)(12/10) cialis muscle paincialis daily use side…
 http://buycialisky.com/@ Re:改定  上杉景勝(12/11) cialis 5 mg prezzo in farmaciaanti cial…
 http://buycialisky.com/@ Re:騒乱江戸湊(04/28) cialis in spanien kaufenavoid counterfe…
 http://buycialisky.com/@ Re:「改訂  上杉景勝」(04/21) what happens if a woman takes viagra or…
 http://viagraky.com/@ Re:士道惨なり(11)(12/10) offshore viagra &lt;a href=&quot; <sma…

Category

Freepage List

Calendar

Dec 7, 2006
XML
カテゴリ:暗闘
 四個の影が土塀を飛び越えて水野邸に忍び込んでいった。梟の鳴き声が

不気味に響いている。

 強盗提灯(がんどうちょうちん)を持った警護の士が母屋を巡回する様子が見え

る。闇のなかで大石種三郎がニヤリと頬を崩した、彼は四尺の長太刀を背に担

いでいる。強盗提灯が近づいてきた、音を消して忍びより長太刀が煌いた。

 瞬く間に三名の警護の士が血飛沫をあげて転がった。血の臭いが漂うなか、

四人は獣のように茶室に接近をはじめた。

「臭います」  柘植の源三の顔が険しくなり、じっと耳をすましている。

 茶室では水野忠邦(ただくに)と床の間を背にした敏次郎の三人が外の気配を

窺がっていた、獣の気配が急に濃厚となってきた。

 生憎、雨が落ち闇夜である。濃密な暗闇が西の丸一帯を包み込んでいる。

「どうやら襲って参ったようじゃな」 

 敏次郎が笹桐の愛刀を引き寄せ鯉口をゆるめ、源三も懐中にのみこんだ得意

の匕首の柄を握りしめた。

 形容のできない殺気が盛り上がり、茶室のなかまで漂ってきた。

「曲者じゃ」  屋敷の各所から警護の士の声があがった。庭を駆け廻る足音が

響き、刃と刃のぶち当たる音が聞こえはじめた。

 殺気が、ふっと消えうせた。

「殿、十名ほどの曲者が忍び込んで参りました。大丈夫にございますか?」

「ここは大事ない」  「十分にご注意下され」

 強盗提灯の灯が障子に映り、足音を乱して遠ざかった。

「源三、どうやら新手が現れたようじやな」

「若さまの嫌いな別式女にございましょう」

 柘植の源三が耳をそばだてニコリともせずに言い放った。

 絶叫と悲鳴が屋敷の裏手からあがっている。


 それに気づき大石種三郎が庭石の陰に身を移し、四人が闇のなかに潜んだ。

「どうやら新手の襲撃じゃ」  大石種三郎が低く呟いた。

「大石、新手とは誰じゃ」  「阿坂さん、誰か分らぬが様子をみる」

 怒号と鋼の打ちあたる音が徐々に茶室に近づいてくる。

「そこまでにいたせ」  従目付の新藤三郎兵衛の声が轟いた。

 茶室で敏次郎が頬をゆるめた。

「貴様等は、大奥に飼われる別式女か?」

 新藤三郎兵衛の周囲を黒髪をなびかせた裸女の群れがむらがっていた。

周囲の大木に火の点った飛苦無が突き刺さり、小雨の降る庭が仄暗く見える。

 まさに夢幻の世界に入ったような錯覚に陥る。美しい裸体を惜しみなく晒し、

忍び刀をかざした裸女が、妖艶な姿で迫ってくる。

「我等の正体を知るそちは何者じゃ」  ひときわ美貌の冴えた裸女が身を低め

訊ねた。股間の翳が妖しく新藤三郎兵衛を誘惑する。

「糞ッ。小賢しい真似をいたす、名乗るほどの者ではない。三五郎、この女狐を

逃すなよ」  「心得てござる」

 この屋敷に現れた別式女は、浅草蔵前の札差商人の飯田屋久六を暗殺し、

新たな標的として水野忠邦を襲ってきたのだ。

「新藤さん、眼の保養になりますね」

 鎖帷子を着込んだ石川三五郎が、目前の裸女を眺め嬉しそうな声をあげた。

「誰でもよいが一人は抱きたいものだ」  新藤三郎兵鋭までが挑発した。

「無礼者が」  別式女が憤りを示し豊満な乳房と秘毛を顕として刃圏を縮めて

きた。  「眼がちらつくのう」

 新藤三郎兵衛の挑発にのった別式女が、宙に飛びあがり忍び刀を振るった。

 新藤がえたりと大刀の峰で弾き返し、着地した別式女の背後に猛然と迫り、

素早く抱きとめた。  「この乳房たまらぬは」

 剛毛の生えた手で柔らな乳房を揉み、太い笑い声をあげた。

「小汚い手を離せ」  美しい顔を歪め身を揉んで抗う女を突き放し、

情け容赦のない鋭い一撃を浴びせた。背後から肩口を袈裟に割られ別式女

が苦悶の声を洩らし血を噴き上げた。  「おのれ、皆ども抜かるでないぞ」

 声と同時に二人の周囲を裸女が黒髪を乱し駆けめぐり、凄まじい斬撃を

浴びせてきた。さすがに一閃、一閃が鋭い。

「面倒じゃ」  石川三五郎が大刀を振るって群る別式女のなかに駆け込んだ。

 掛け声が轟き血煙があがった、三五郎も数箇所の浅手を負ったが、三名の

別式女が絶叫をあげ命を絶たれた。

 どっと警護の士が集まり、強盗提灯をかざし唾を飲み込んだ。

 灯に浮かんだ裸女の妖艶な容姿は、この世の者とは思われない幻想的な姿で

あった。黒髪を乱し別式女が躍りあがり、警護の士に襲いかかった。

 妖しい色香に惑わされた警護の士が苦悶の声をあげ倒れ伏した。

 裸体が舞いあがり、その度に絶叫があがる。

「引くのじゃ、ここは我等に任せられよ」

 新藤三郎兵衛と石川三五郎が同時に仕掛けた。袈裟斬りと水平の胴斬りを

うけ、別式女の陣刑が乱れた。

暗躍(1)へ





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  Dec 7, 2006 09:43:36 AM
コメント(10) | コメントを書く



© Rakuten Group, Inc.