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龍5777

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Dec 11, 2006
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カテゴリ:暗闘
 敏次郎と大石種三郎の死闘はまだ続いていたが、大石は攻撃を巧に躱され、

四尺の長尺剣の弱点をさらしていた。

 闘いが長引き打ち込みの鋭さも失いつつあった。息があがり肩が大きく

上下している、敏次郎は上段の残月神妙剣の構えで庭石まで押し詰めていた。

 二人の闘いを水野忠邦以下、全員が息をつめ見守っている。雨があがり樹木

の間をぬって風が吹きぬけ、先刻の血なまぐさい臭いを消し去っている。

 二人の間合いが二間(三メートル六十センチ)にちぢまっていた。

 大石流神影流には左片手突きの技法がある。四尺の長太刀で突きを入れる

には三尺の間合いがあれば勝てる。大石種三郎は最後の攻撃に賭けていた。

 敏次郎が碧眼を光らせ残月神妙剣の構えで一歩、死地に踏み込んだ。

「貴様は南蛮者か?」  大石種三郎は敏次郎の碧眼をはじめて知った。

「謂れを語ることもなかろう」  敏次郎の笹桐が更に上段に構えられた。

 突きと上段からの打ちおろしが、二人の生死を分かつのだ。どちらが神速の技

を極めるか、闘いの終焉(しゅうえん)が近づいていた。

 大石種三郎の長太刀が水平に振りぬかれ、敏次郎は構えを崩さずに半歩

素早く後退した。

「キエッー」 えたりと大石種三郎が大きく踏み込み、敏次郎の右胸をめがけ

猛烈な左片手突きをみせた。しかし、もはや最初の勢いをなくしていた。

 敏次郎が躯をひらき、切っ先が流れた。大石種三郎の最後の抵抗であった。

 敏次郎の左手から反動をつけた笹桐が、凄まじい勢いで躍りあがり、落石の

ごとく大石種三郎の頭上に襲いかかった。

 剣士の勘で防御したが、強烈な打撃をうけ長太刀が弾かれた。その間隙を

ぬって笹桐が煌き、大石種三郎の頭蓋を断ち割った。血潮と脳漿を噴き上げた

大石種三郎は、しばし佇み、朽ち木のように倒れ伏した。

「お見事にござる」  遠山左衛門尉が感嘆の声をあげた。

「以外に手こずった」  敏次郎が普段の声で応じ懐紙で血糊を拭っている。

「若さま、お見事な手並みにございました」

 茶室から水野忠邦が源三を従い庭先に現れた。  「これは首座さま」

「おう、遠山左衛門尉か山田浅右衛門も参っておったか」

 水野忠邦が応じた。  「若さま、ご無事にございますか?」

 新藤三郎兵衛が石川三五郎と心配そうに敏次郎に尋ねた。

「わたしは大事ない」

「危ない」  柘植の源三の声がし、匕首が飛翔音を響かせた。

「くっ」  声を殺した浪人が二、三歩あゆみどっと闇のなかに転がった。

「師範代の長井兵庫にございます、卑怯にも隠れ潜んでおりました」

 源三が死体を確認し、匕首を胸から引き抜きほっとした様子で告げた。

「刺客はすべて片がつきましたな」

 山田浅右衛門が愛刀を鞘に納め呟いた。


 水野邸の奥座敷に新藤三郎兵衛と石川三五郎の従目付を交えた七名が、

一堂に会してした。

「鳥居甲斐守の野望も潰えましたな」  遠山左衛門尉が水野忠邦に問うた。

「さてのう、・・・・妖怪と異名をとる男じゃ安心は出来ぬ」

「まだ何か仕かけて参りますか?」

「若さまも良く聞いて下され、今夜の刺客の件じゃが、鳥居甲斐守の証拠は

ひとつとしてない」

「別式女は別としても、阿坂道場の者供のことは北町同心の探索により、鳥居

甲斐守の陰謀と知れております」  遠山左衛門尉が口調を強めた。

「遠山、刺客はすべて死んだ、奴が知らぬ存ぜぬと白を切ればなんといたす。

暫くは泳がせる、わしの老中首座としての勤めも長くはあるまい。その間に奴の

追放の策をたてる積もりじゃ」

 水野忠邦の柔和な顔が一瞬強まりもとの顔に戻った。

「水野、先刻の話じゃが、父上との対面の時期は何時になる」

 敏次郎が、水野忠邦をみつめ聞いた。

「九月の中頃には大船も完成いたします、今月の末までにご対面の儀式の段取

りを整えまする」  「恐れながらお伺い申しあげます」

 新藤三郎兵衛が巨眼を光らせ野太い声をあげた。

「若さまと上様のご対面が叶いまするのか?」

「新藤と申したの、その儀はわしが責任をもって成し遂げる」

 水野忠邦が二人の従目付を見つめ、さらに驚くべき提案を語った。

「そちは今のお勤めを辞さぬか」  「拙者に何をせよと仰せにございます」

「若さまはご対面を終えられたら出島に行かれ、出島から海外に雄飛される。

その警護をそちに頼みたい」

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Last updated  Dec 11, 2006 12:56:06 PM
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