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龍5777

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May 9, 2007
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カテゴリ:暗闘
  鈴木兵左衛門は国許の抗戦派でしられた、岡本文造と山田惣太郎の両名を

江戸藩邸の、朝比奈藤兵衛のもとに差し向けた。

  この人事の裏には、国許を恭順派に固める意図が秘められていた。

  岡本文造は漢学、詩文に優れ冷静沈着を絵に書いたような男であり、一方の

山田惣太郎は文武に秀でた若者であった。 

  江戸藩邸は早馬の到着で興奮状態となっていた。直ちに殿の幸宣を交え、

御上に対する、藩の方針にたいする評定がひらかれた。

  江戸家老の朝比奈藤兵衛に用人の坂田林左衛門、国学者の速水小三郎の

三名の幹部が同席していた。

「これは薩長の陰謀ですぞ」  速水小三郎が怒気をはらんだ口調で断じた。

  国学者の彼は、山鹿素行(やまがそこう)の軍学に造詣が深く大石内蔵助を

信奉していた。武士たる者は恩義を忘れ信義を失ってはならぬ、これが彼の

信念であった。四十七才の年齢を感じさせない、精悍な風貌の男である。

「速水、余も徳川家にたいする忠節は人後におちぬが、尊王の志も誰にもまけ

ぬ。我が国の国体を維持するには、恭順しかなかろうが」

  幸宣が若やいだ顔で意見を述べた。若年ながら聡明な若殿である。

  その遣りとりを用人の坂田林左衛門が面白そうに眺めている。

「殿、我が藩は徳川譜代の大名ですぞ、武家が手の平を返すような振る舞いは

卑怯というものです」  速水小三郎が顔を染め詰め寄っている。

「速水、慶喜公は大政を奉還なされ、将軍職も返上なされた」

「それはー」  速水が言葉に詰まっている、若い藩主に国学者の己が言い負か

されるとは、悔しさの中に爽快感がないまざっていた。

「藤兵衛、国許に使者をつかわせ、我が藩は恭順いたす。その旨を朝廷に言上

いたすよう、鈴木兵左衛門に伝えよ」

  殿のご聖断が下った。  「畏まりました」

  江戸家老の朝比奈藤兵衛が威儀をただした。幸宣の命はただちに国許に伝

えられ、鈴木兵左衛門は上洛し君命を奏上し、飛騨警護を命じられ二月に出兵

することになる。

  二月三日、朝廷は「賊徒(ぞくと)討伐」の親征書を公布し、政府軍の部署

割りを発表した。この公布をうけ政府軍に約六十藩の大名が加わった。

  徳川治世の諸大名の数は、三百藩ともいわれており鳥羽伏見の戦いから、

一ヶ月で五分の一の諸大名が政府軍に加担したことになる。

  時勢が急回転をはじめたのだ、朝廷は政府軍を六分割とした。

  親征大総督府大総督。    東海道先鋒兼鎮撫使総督府総督。

  東山道先鋒鎮撫使総督。   北陸道先鋒兼鎮撫使総督府総督。

  奥羽領鎮撫使総督府総督。  海軍総督府総督。

  こうして新政府の全国鎮撫(ちんぶ)の体制がととのったのだ。


  江戸郡上藩の一室に五名の者が集まっていた。江戸家老の朝比奈藤兵衛と

倅の茂吉(もちき)に速水小三郎の江戸組と、国許から馳せ参じた岡本文造と

山田惣太郎である。一家言もつ用人の坂田林左衛門は、殿の命でこの場にいな

い。  「この両名は国家老の鈴木殿より、遣わされた者たちじゃ。両人を見知っ

ておるの」  朝比奈藤兵衛が静かに訊ねた。 

「岡本文造殿に山田惣太郎でござろう」  速水小三郎が二人を鋭く眺め答え

た。十七才の朝比奈茂吉は、細面の顔をふせ無表情のままでいる。

「国許は殿の君命で朝廷に恭順いたした。これは承知じゃの」

「腰のぬけた有様じゃ」 速水が苦い顔で岡本と山田をねめつけ吐き捨てた。

「殿のご命令じゃ。国許は京に近い、藩士らが恭順派になることは仕方があるま

い」  岡本文造が、平静な口調で速水に反論を述べている。

「速水、静かにいたせ。国家老の鈴木殿は密命をわしに伝えるために、両人を

江戸に遣わしたのじゃ」  藤兵衛が声を低め速水小三郎を諌めた。

「密命とはなんでござる?」  「申し上げる」  岡本文造が膝を乗りだした。

「国家老さまが申されるには、江戸詰藩士より有志を募り旧幕軍に加担せよとの

仰せにござる」  岡本文造が国家老鈴木兵左衛門の意向を報告した。

「今なんと申した」  速水小三郎が念を押して聞き返した。

「速水、天下の形勢をみると、必ずしも政府軍が勝つとは限らぬ」

「ご家老、あなたまで何を申されたいのじゃ」

「まず聞け、わしも鈴木殿も藩の存続を一番に願う。もし政府軍が敗れるような

事態ともなれば、藩は滅亡いたす」

「それを防ぐために政府軍と旧幕軍に加わる、ようは二股をかけるのですな」

「これも、小藩としてはやむを得ぬことじゃ」

「小汚くぞっとしますな」  「速水、言葉が過ぎる」

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Last updated  May 9, 2007 09:16:53 AM
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