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龍5777

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May 14, 2007
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カテゴリ:暗闘
「お二人にお願いがあります」  「隊長、なにごとにござる」

  茂吉へ坂田林左衛門が揶揄うように声をかけた。

「江戸脱走と同時に我々は戦闘態勢に入ります、常に敵との遭遇の危険があり

ます。わたしは士官のなかに軍医を含んだ人選をお願いしたい」

  二人は茂吉の提案に声を失った。二人には軍医の構想がまるでなかったの

だ。目から鱗の落ちる思いがし、若造と侮ったことを恥じた。坂田林左衛門は、

なで肩の細い体躯の茂吉を新鮮な思いで見つめなおした。

「隊長、今晩はこれで終りにしましょう、人選が固まりしだいご相談いたします」

  速水小三郎の答えに、あっさりと茂吉は同意した。

「お二人にお任せいたします。軍医の件は宜しくお願いします」

  速水小三郎は翌日、会津出張を命じられた。会津藩に凌霜隊を付属させる

旨の、申し入れの使者として会津若松に旅たった。

  この一時から速水小三郎は参謀を命じられるのであった。

  国許から早飛脚が江戸藩邸に着いた、待ちに待った朗報が届いたのだ。

工兵士官の氏井儀左衛門を筆頭として、山田熊之助等の精鋭十五名の隊士が

三月二十日に、国許を出立するとの知らせであった。

  隊士筆頭の氏井儀左衛門は、御城使添役の重臣で四十一才である。従うは

山田熊之助や彼の友人の斉藤巳喜之助(みきのすけ)等で、二人は同年の二十

四才であった。特に山田熊之助は北辰一刀流の免許皆伝の猛者であり、山熊と

渾名される若者であった。疱瘡で顔じゅうあばたで武骨ながら愛嬌があり、信頼

に値する男として歩兵士官を仰せつかっていた。

  江戸藩士等は客員隊士の河野綱翁の紹介で、小川町にある伝習隊第二大

隊に出かけ、銃の操作を教わっていた。凌霜隊士は全員が銃の操作に無知で

あった。歩兵奉行の大鳥圭介は河野から凌霜隊の任務を聞いており、危急存亡

の時期であったが、士官たちに命じ便宜を図ってくれた。

  大鳥圭介は隊士たちを郡上藩の脱藩浪士とみて好意を示したのだが、後

日、関東平野から会津まで一緒に戦うことになろうとは、知る由もなかった。

  四月と月が変わり国許から藩士が到着した。あと十日ほどで凌霜隊は江戸

から脱出し会津に向かうことになるのだ。

  茂吉は自室で一人黙々と書き物をしている。「凌霜隊士名簿」と表書きを

したため一気に筆をはしらせた。

  隊長    朝比奈茂吉        副隊長    坂田林左衛門
  参謀    速水小三郎        軍医        小野三秋 
  砲兵士官   武井安三       工兵士官   氏井儀左衛門
  歩兵士官  山田熊之助       歩兵士官    山田惣太郎  
  同       岡本文造        同        岸本伊兵衛
  同      金子勇次郎        同      斉藤巳喜之助
  同       斉藤弥門        隊士    中村国之助以下二十五名
  客員隊士   河野綱翁        小者    孫太郎以下    五名
           服部半蔵
  慶応四年四月

  茂吉き書き終わり、感慨をこめて記した名簿に視線をはしらせた。

  二十代が十六名も含まれ、自分と山脇金太郎が同年の十七才であった。

これらの隊士を率い、会津まで二百五十里の長征に旅立つのである。茂吉は

名簿を前にして胸を躍らせていた。

  はたしてわたしに出来るのか? 四十七名の命を守り会津まで辿り着き、

救援という途方もない大役が務まるのか、若い茂吉の胸中に不安が駆けめぐっ

ていた。すでに武器弾薬、食料、医薬品、軍服、さらに砲撃戦を想定しての

陣地構築の道具である、つるはし、唐鍬(とうくわ)、鋸(のこ)、斧、円匙(えんぴ)

までが菊屋の離れに隠してある。特筆ものは牛革で作った弾薬盒(だんやくごう)

で、なかに小銃弾数十発を入れることの出来る、珍品までが混ざっていた。

  隊士等は連日、菊屋を訪れスペンサー銃の操作の訓練に明け暮れていた。

  実弾射撃は不可能だが実際に手にして弾込めをする、そうすることで隊士等

は、はじめて自分の武器と実感できるのだ。

秘録 凌霜隊始末記(1)へ





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Last updated  May 14, 2007 08:24:07 AM
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