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長編時代小説コーナ

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龍5777

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May 30, 2007
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カテゴリ:暗闘
  太兵衛の足音が消えるのを待ち、茂吉が幹部の二人を見つめ口を開いた。

「ご両人に申しますが、このような温泉町の守りでは士気に乱れが生じましょう。

歩哨は昼夜をわかず三名ずつ交替で行い、日中は猛訓練をいたします。町の人

に迷惑のかからない配慮をお願いします」

「隊長、ここは温泉町です。いやでも温泉女郎が目につきます、隊士の夜間の

行動には目を瞑って頂きます」  「目を瞑れと」

「左様、血気の隊士たちです、女子の肌も恋しくなりましょう」

  坂田副長が語り、速水参謀長が無言で茂吉を見つめている。茂吉も男の 

生理は判る。           
  
「判りました、しかし常に敵の来襲を忘れる訳にはいきません。そこのところを

確りし、隊規の緩みのないよう願います」

「了解です」  速水小三郎が簡潔に肯いた。

「ところで菅沼さんの容態はいかがですか?」

「小野軍医の報告では益々悪化しているとの事です。一足先に会津に護送いた

そうかと思案しています」  坂田副長が、どうしたものかと茂吉を見つめた。

「これ以上隊士を減らすことは出来ません、幸い温泉町です。暫く様子を見たい

と思います」  茂吉が辛そうに云った。

「判りました。だが容態がこれ以上悪化したら相談にのって頂きます」

  速水参謀長が、茂吉の眸を覗きこむように念を押した。

「判っております。ところで今晩、隊士の慰労会を行いたいと思いますが、歩哨

だけはつづけます」  茂吉が味のある配慮をみせた。

「結構ですな隊士も喜びましょう。和泉屋さんと相談し、一風呂浴びてきます」

  坂田副長が踊るような足取りで部屋を辞していった。

「今晩の歩哨は小隊長以上の年嵩の者でやりましょう」

  速水参謀長が粋な計らいを披露し、肩で風をきるような勢いで廊下に消え

た。(隊を纏めるとは苦しいものだ)茂吉は胸の中で思った。

  軍服姿で庭先に出て茂吉は眼をみはった。隊士たちが宿の浴衣に着替え、

洗濯の終った軍服を紐でつるしている。髭をあたり、風呂あがりのすっきりとした

顔つきをしている。  「隊長殿はまだですか、湯加減の良い温泉です」

  巨漢の山田惣太郎が声をかけた。

「おは入りになられるなら、ご案内いたします」  お園が傍らに佇んでいた。

「隊長殿、この日照りです干せば直ぐに乾きます」

  山田熊之助が浴衣に胴田貫をぶちこんだ珍妙な姿で声をかけた。

「わたしの軍服も汚れがひどい、一風呂浴びてきます」

  茂吉が浴場に向かうと、お園がいそいそと背後からついて来る、これには

閉口した。   「お園さん、わたしは一人でやれます」

「お脱ぎになった軍服は洗ってさしあげます」   「構わないで下さいよ」

  それを見物した隊士から一斉に笑いがわいた。いかにも初々しい隊長の姿と

困惑した様子が可笑しいのだ。  「隊長殿、お任せしたらいかがです」

「今回だけはお願いします」  茂吉は急いで浴場にむかった。

  風呂場から坂田副長と速水参謀長の声がする。茂吉は軍服を脱ぎ捨て下帯

姿となった。まずい、下帯の汚れはひどいものである。

  お園は茂吉の下帯姿となった裸体を目の当たりにして驚いた。細い体躯に

見えた茂吉の背中は、見事な筋肉が盛り上がっている。

「お園さん、軍服を頼みます」  「はい」 彼女ははじめて恥じらいを覚えた。

汚れた軍服と革帯から汗と革の臭いが鼻をつく、これが隊長さんの汗の臭いと

感じたとたんに、胸がせっなくなった。お園が初恋を知った瞬間であった。

  夏の遅い闇が温泉町を覆った。旅籠の灯が一斉に点った。和泉屋の大広間

で慰労会が始まっている、見事な塩原の夏の幸がそれぞれの膳部に乗せてあ

る。 「鮎の塩焼きじゃ」  「懐かしいなあ、郡上を思いだすよ」

  全員が頭からかぶりついた。「うまい」 ぐびっと酒を流し込み山熊が喚いた。

二十代前半の隊士が三分の一も居る凌霜隊の隊士は、宴たけなわの中で既に

酩酊している者もいる。中年の隊士が数名姿を消した、彼等は女郎を買いに行

ったようだ。茂吉は一人渋い顔をしてぐいぐい飲んでいる。十七才ながら酒豪で

鳴らしていた。

  速水参謀長と武井安三が姿を消し、すぐに歩兵士官の岸本伊兵衛の姿も消

えた。彼等三名は歩哨に行ったのだ。

  酒豪の山熊、山惣と斉藤巳喜之助の三人が、茂吉を取り巻いている。

  こうして塩原の第一日目が終った。

秘録 凌霜隊始末記(1)へ





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Last updated  May 30, 2007 09:16:30 AM
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