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長編時代小説コーナ

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Jun 16, 2007
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カテゴリ:暗闘
  小山田隊長を先頭に、本隊の四百名が一本道の街道で突撃戦を敢行したの

だ。  「何という攻撃をなさる」  茂吉が顔色を変えた。無謀極まりない作戦で

ある。小山田隊長が槍を抱えてぐいぐいと進み、本隊が追走している。

  敵の大砲が路上に引き出されるのが望見される。

「あれでは全滅します、全隊援護に向かいます」 茂吉が陣羽織をひるがえし、

山腹の小道を駆けてゆく。大砲が一斉に唸りを発し、本隊の真ん中に火柱が噴

きあがった。隊形が乱れ数名の兵士が血塗れで転がっている。

  砲撃を合図に政府軍が銃を乱射し突撃を開始した、間断のない銃撃で会津

藩兵が、標的のように射抜かれている。

真っ先に隊長の小山田伝四郎が敗走し、それをみた全軍が浮き足たって潰走

に転じた。  「敵の前衛を食い止めねば我々もやられます」

  凌霜隊が山腹より、必死の威嚇射撃を浴びせた。

「隊長、会津藩兵は止まらずに逃げ散っておりますぞ」 速水参謀長が驚愕の声

をあげた。小山田隊は応戦もせずに敗走を続けている。

「これが会津の用兵か」  坂田副長が激怒している。

「副長、彼等は大内峠まで退却する積もりでしょう、我等は本営にもどり撤退の

用意をします」  「判り申した」  坂田副長がしわがれ声で応じた。

  敵の進撃が止んだ、これ以上の深入りを恐れているようだ。間隙をぬって

凌霜隊は本営に引き上げた。会津藩兵は一人として居ない。

「半隊は前方の監視、半隊は物資の整理と積み込みじゃ。出来しだい輜重隊は

撤退いたせ」  速水参謀長がてきぱきと指示を与えている。

  山熊隊士や山惣隊士が前方に駆けつけ警戒態勢をとっている。こうしている

間にも、逃げ遅れた敗残の会津藩兵が合流してくる。

「本隊は大内峠に向かったと思われます、我等も用意の出来しだい撤退します。

我々と同行を望まれる方はどうぞ」  茂吉が説明している。

「隊長」  速水参謀長が手招きしている。  「なにか?」

「安村敬三郎の姿が見えません、まさかとは思いますが逃亡ではありますまい

か」 「安村隊士はそんな男ではありません、この激戦で怪我でも負ったのかも」

「待ちますか?」  「いや、生きておるなら我々を追って姿を見せましょう。今は

急場です、輜重隊の用意が出来たら坂田副長とあなたは先行して下さい。わた

しは半隊を率いあとから行きます」

  凌霜隊の半隊と茂吉が大内峠に着いた頃は、すでに夕暮れを迎えていた。

峠の各所に焚火の明りが点滅している。

「ご無事でしたか」  坂田副長と速水参謀長が安堵の顔を見せた。

「敵は大内村で宿営した模様です」  茂吉が周囲を眺め説明した。

この峠は、大内村から一里の行程であるが、峠の登りが急坂の一里で、下りは

一里半ほどの高地にある。前に川が横たわり左右は山に覆われ守るには格好

の場所である、頂上はまだ先にある。

「会津藩の本営は頂上ですか?」  「はい、一軒茶屋があるそうです」

  警備の会津藩兵も凌霜隊には応接が丁寧である。

「そうですか、我等も行きましょう」

  峠を越えた五里の先に鶴ヶ城がある筈である。とうとう着いたか、茂吉の胸に

感動が走りぬけた。江戸から客員隊士を除き四十五名で出立したが、今は三十

九名である。大内で行方不明となった安村敬三郎の安否が気になるが、誰も彼

のことは口にしない。  「副長、これから一軒茶屋の本営に向かいます」

  隊士と輜重隊を率い峠の頂上を目差した。北方の黒く染まった山並みの稜線

が、仄かに明るい。会津若松城下の炎だなと茂吉は感じた。

  本営に着くと、小山田伝四郎が愛想笑いを浮かべ出迎えた。

「随分と勝手な戦をされますな」  速水参謀長が毒舌を吐いた。

「我々は援護のために山腹より見ておりました、退却で精一杯でしたな」

「・・・・」  小山田伝四郎が口ごもっている。

  本営には会津藩の日光口守備の各隊の隊長がすべて揃っており、彼等は

面白そうに、二人の会話に耳をそばだてている。彼等も小山田の指揮官として

の資質に疑問を抱いているようだ。

秘録 凌霜隊始末記(1)へ





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Last updated  Jun 16, 2007 09:22:22 AM
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