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長編時代小説コーナ

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Apr 30, 2008
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カテゴリ:伊庭求馬孤影剣
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「あれが蔦木宿じゃ」  求馬の声にお蘭と猪の吉が前方の街道をみつめた。

「なかなか広い宿場町ですな」

 小奇麗な旅籠が木立に囲まれて散在している。この蔦木宿は甲州道中の

宿駅として新しく作られた宿場であった。宿場の南北には侵入者を防ぐ防壁も

作れている宿場であった。これは枡形(ますがた)というもので、侵入者が直進

出来ないように、くねくねとした曲がり道を設けていたのだ。

「この宿場は慶長時代に作られ、新しい土地に代ったそうじゃ」

 珍しく求馬が多弁である、お蘭には、その気持ちがよく判った。ようやく苦労

の末に六紋銭の脅威が消えたのだ。

「まあー、あれは林檎の木ですか」  街道に沿って赤い実をつけた樹木が目

についた。  「そうじゃ、信濃は林檎の産地として有名じゃ」

「旦那、旅籠を決めねばなりやせんな」   「本陣宿に宿泊いたす」

「成程、ここで高島城の城代家老さまと繋ぎをとるんでしたね」

 猪の吉が、軽快な足取りをみせ宿場町へと駆けて行った。

 求馬とお蘭は肩を並べ宿場町へと足を踏み込んだ。

「旦那、ありやした、蔦木屋と云う脇本陣ですよ」

 三人が旅籠の玄関に着くと、「おいでなされませ」と、番頭と女衆が待ちうけて

いた。この季節にしては旅人が少ないようだ。

 三人は玄関の三和土で用意された、足濯ぎの桶で足を清め部屋に通された。

 刻限はまだ七つ(午後四時)頃である。

「旦那、今夜はぱっとゆきやしょうぜ」  猪の吉がはしゃいでいる。

「そうじゃな、六紋銭の事件も片がついたしな」  求馬が肯いている。

「お蘭、風呂にでも行って参れ。わし等は酒じゃ」

「まあ、さっそくお酒ですか。ならお先に浴びてきますよ」

 お蘭と入れ替わりに品のよい女中が現れた。

「お客さま、お酒をお持ちいたしました」  酒と簡単な肴の膳部を並べた。

「この漬物はなんだえ」  早速、猪の吉が漬物に目をつけたようだ。

「これは信州名物の野沢菜です」  箸でつまんで口にし猪の吉が舌鼓をうった。

「こいつは美味いや」  「早速じやが、この屋の主人を呼んではくれぬか」

「主人にございますか?」  女中が不審そうに求馬をみつめ頬を染めた。

 求馬が白面の相貌をみせ女中を直視している。

「お客さまは何方さまでしょう」  「主人殿に話す」

「暫くお待ち下さい」  怪訝な顔をみせ女中が部屋から去った。

「旦那、この野沢菜は旨いですぜ、歯ごたえが違いやすな」
 
 求馬も湯呑みで独酌をはじめた、六紋銭との死闘の疲れが氷解してゆく。

「酒はよいの」  「さいで」  二人がのんびりと酒を酌み交わしている。

「ご免下されまし」  声と同時に縞柄の着物を羽織った中年の男が座敷に

現れた。  「わたしが、この屋の主人の唐一郎にございます」

「早速じゃが、頼みがある。それがしは江戸から参った伊庭求馬と申す。暫く

逗留いたす」  求馬が無造作に一両の小判を差し出した。

「これは大金にございますな」  主人が吃驚している。

「明日、書状をしたためる。それを高島藩国家老の磯辺頼寛殿に届けて

もらいたい」  「ご家老さまにございますか?」 

 主人が不審そうに聞いた。  「我等の身分を示す書状じゃ」

 懐中から油紙に包んだ書状を二通取り出し主人に手渡した。

「拝見いたします」

「一切の取調べなく通行させるべきこと。大目付、嘉納主水」

「わが藩の最寄の者にて宿泊の便益を図ること。諏訪高島藩江戸家老、

嘉納隼人正」  二通の書状に目を通した主人の顔色が変わった。

「これは、ご無礼いたしました、ご依頼どうり書状をお届けいたします」

「我等は、磯辺殿のご返事があるまで逗留いたす」

「畏まりました」  主人が平身低頭して部屋から去った。

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Last updated  Apr 30, 2008 06:16:37 PM
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