緋い記憶(本の感想)
例えばこんな経験はありませんでしょうか。何十年も前にに見た映画で好きな映画があったとします。「あのシーンが好きなんだよね」「あのセリフが大好き。今でも鮮明に憶えているよ」とお気に入りのシーンがあったとします。ところが久しぶりにその映画を見てみたら、思っていたのと全然違っていたような経験はありませんか。僕は何度もあります。セリフが違っていたり、下手したらそんなシーンはなかったなんてことも。あるいは、幼なじみと昔の話をしていて、2人の記憶が全然違ってたことはありませんか。「いや、あれはこうだったよ」「違うって。こうだったよ」みたいな。人間の記憶がいい加減なものだと気が付いたのは40代の頃ですかね。記憶とは思い出すたびに改ざんされるようで、より大げさに、そして自分の思いこみによって変わっていくようです。鮮明に憶えているのに、違うことがあります。また、ちょっとしたことから、昔の記憶が突然よみがえることもありますよね。久しぶりに通った道沿いの神社を見つけて、子供の頃そこで遊んだことが突然思い出されたり。記憶というのは不思議です。高橋克彦氏の「緋い記憶」を読みました。7つの短編小説が収録されていますが、すべて記憶に関係する不思議な話です。そして1つ1つの話が、ものすごく怖い。精神的な恐怖に満ちています。怖い話が好きな人はおすすめです。余談ですが、直木賞受賞作というのを読み終わってから知りました(笑)。