辻村深月さん『冷たい校舎の時は止まる』
辻村深月さん『冷たい校舎の時は止まる』(講談社文庫) 雪降るある日、いつも通りに登校したはずの学校に閉じ込められた8人の高校生。開かない扉、無人の教室、5時53分で止まった時計。凍りつく校舎の中、2ヵ月前の学園祭の最中に死んだ同級生のことを思い出す。でもその顔と名前がわからない。どうして忘れてしまったんだろう―。第31回メフィスト賞受賞作。この季節にはぴったりな作品です。たばさは10月のぽかぽか日和に読んだのですが、作中から寒さが伝わってきました。いつもどおりに登校した彼ら。でもどこか、いつも違う違和感。やがて学校の外へ出られなくなり、完全に閉じ込められてしまう。いったい、何が起こったのか。自殺した同級生のことが思い出せない8人、そして彼らを招いたホストの、葛藤、後悔、不安が描かれています。10代だったころ(いや今でもかも)、誰しも考えたであろう悩みを登場人物たちは抱えていて、おばさんは当時を思い出しちゃいました(笑)たばさは「HERO」のお話がすごく心に残りました。音が消えて、足の親指が靴の中で丸まるような雪の日。恐ろしいほどの孤独と後悔と、汚さをすべてを雪で隠してしまいたい気持ち。淡々と描かれる雪の日は、ホスト自身の心の天気のようです。このほかの作品も読んでみたいと思ってます。