19番の独り言

９月２０日(水)

「駆けてきた少女」　東直己著



さーて来たぜ来たぜ「俺」シリーズ。

前作の「探偵は吹雪の中に」が今ひとつだったオイラとしては
今作には超期待していたのだ。しかもあの畝原シリーズの名作
「熾火」の世界とリンクしている。

探偵も47歳。すっかりおっさんだ。そして相変わらずすすきので
飲んだくれの生活をしている。

そんな中、特に事件らしい事件は起きない(笑)まああえて言えば
「俺」が刺されたくらい。(でも分厚い脂肪の為、助かった)

ある占い師の婆さんに依頼された女子高生の身元調査と自分の
腹を刺した男を捜すうちにいつの間にか北海道を舞台とした陰謀
に巻き込まれていく「俺」

そうそうこういうのが読みたかったのよ！！

調査を進めていくうちに「俺」はある女子高生と知り合いになる。
女子高生の話方一つ一つにイチャモンをつけるその大人げの
無さ、それでいて筋が一本通っている(と読者に思わせる)のが
不思議。

明らかに大人気ないんだけど何故か共感しちゃうのはオイラも
オヤジになった証拠？(笑)

そしてその少女がなんて言うかステレオタイプじゃないのよ。
きちんとした敬語を話し、音楽にも造詣が深く、美人だ。
それなのに複雑な家庭環境から自分は世界中の誰からも嫌われ
ていると思い込んでいる。

話は変わるけどこの話の中では「俺」の札幌の変化に対する気持ちが
よーく現れている。ズルイやつらが蔓延り、自分の愛した古き良き札幌
が変わって来ている。そのことに憤りを感じる「俺」。

それが自分が年を取ったことによりなのか、本当にどうしようもない
奴らが増えたのかなのかはオイラには正直わからなかった。

でもその少女の中に古き良き札幌を見たのか「俺」を無謀な計画へと走りだす。
その結果はまあああいう感じだったんだけど、「熾火」へのプロローグとしてはあ
あいう形で終わるしかなかったのかなぁ。

最後がちょっと詰め込みすぎだったのかも知れないけど「俺」と言う奇特
なキャラクターの魅力を存分に味わうことが出来る素晴らしい作品だった
と思います。