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カテゴリ:読書
■名字が”乙”で名前が”一”、字画数でいけば、日本で一番少ない字画数の作家さんですね。まだ二十代、でもキャリアはずいぶん長いんですね。彼の作品はあまり読んだ事がなくて、これが二作目かな。最初は「暗いところで待ち合わせ」だったと思う。ヘップバーンの「暗くなるまで待って」を連想しながら読んだ記憶がある。
■単行本「GOTH」を角川文庫として分冊化、「GO」が「夜の章」、「TH」が「僕の章」、やはり順番通り、「夜」から読み進めるのがお勧めかと。 GOTHはもともとはゴート人から来ている言葉だけど、ゴシック趣味となると様々な捉え方ができそうだ。作者としては暗黒系、つまり、人間の暗い部分に惹かれる人たちの世界を描きたかったように見える。 ■読み進めた印象はオモいものをカルく書いている感じ。死とか死体に興味関心があってしょうがない者を想像しながら、その者の気持ちにできるだけ寄り添いながら書き綴っていこうという強烈な意志を感じる。人間の一側面として残酷趣味って言うのは確かにどこかにあって、たとえば夏休みに昆虫採集に明け暮れた少年時代というのは誰しも経験がありますよね。捕まえて殺してコレクションを増やしていく楽しみ、それが昆虫から動物へ、動物から人間へって、移行していく過程でその対象との距離感というものが徐々に芽生えていくものです。 ■対象に対する愛情というのは確かに個人差があって、自分が手を出していこうとするものの物語を想像する力が働くかどうかで躊躇ったり、諦めたり、人はしていくものです。この子が死んだら誰が悲しむかを感じられるかどうか。しかし、ここに出てくる主人公には感情の嵐は起こらない。生きていく事の目的のひとつにできるだけ多くの死を目撃したり鑑賞したりする事が含まれてしまっている。肯定はできないけど、あり得る話として読ませてもらいました。 ■前後半あわせて6編の短編からなる連作集。森野夜という女子高生と主人公が全ての事件に関わってくる。好きな作品を少しほのめかします。 「犬」、犬の視点で物語が語られる。虐待をうける少女に寄り添う犬が彼女と計画した事は・・・。 「記憶」、森野夜の過去の出来事。失われた妹の物語。映画「シャイニング」の双生児を思い出した。そしてあの血のイメージですね。 「声」、最後にこれを持ってきたのはすごく技巧的、というか、これが終章でなくては物語が落ちない。 ■すごく感情を排したような書き方をしているにもかかわらず、切なさとか哀れが滲み出ていますね。身も凍るような話でありながらもいくらか涼しげで。でも鼻につくほどクールでもない。読みながら色んな音楽を合わせてみたんですけど、それこそフォークソングでも、クラシックでもオーケーな感じ。ブラームスの弦楽6重奏でどうぞ。寝苦しい夜にはピッタリかもしれません。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005/08/20 11:20:42 PM
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