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クサフグの話をNHK「ダーウィンが来た」で見た.
番組の内容については「In my little puddle」さんの記事がよくまとまっているので,そちらを参照してください. http://d.hatena.ne.jp/peapuffer/20110227/p1 私が興味をもったのは,フグが川をさかのぼるという現象.群れをなして河口から数十メートル~100メートル程度を上流に向けて移動する.これは不思議な現象です.海産魚であるフグには不適な,下手をしたら命にもかかわる環境に,なぜ進んで移動するのか. それは体表面についた寄生虫を殺すためだ,というのが番組の説明だった. この「説」の根拠はどの程度あるのだろう. たとえば,次のような資料ないし観察例はあるのだろうか? 1.寄生虫を持っていることで,フグの死亡率が増えたり,生殖能力が阻害されたり,ということがあるのか? つまり寄生虫をもっているフグは「残せる子孫の数」の期待値がどの程度減るのか? 2.淡水域に入って行くことで,その寄生虫はどれほど駆除されるのか? 3.寄生虫を駆除することによって,そのフグが「残せる子孫の数」は増加するだろうか? 以上は説が成り立つための「必要条件」である.さらに疑問を思いつくままに挙げると; フグは川を登るときなぜ群れをなすのだろう? 潮の緩慢などの関係で皆が同時に偶然同じ行動をとってしまうのか.それとも群れで行動することが単独で川を登るより有利である理由があるのだろうか? このようなフグの行動は,どれほど普遍的なのだろうか.この番組は天の橋立ふきんの海に住むクサフグとのことだったけど,ここのクサフグは全員が同じ行動をとるのだろうか.それとも寄生虫をたくさん持っているフグだけが川をさかのぼるのだろうか? また,この寄生虫は,この海域では多いけれど,他の海域では少ないというようなことがあるだろうか.その場合,寄生虫が多い海域のフグは川をのぼるけれど,少ない海域のフグでは,そういう行動はあまり見られなかったりするだろうか? その寄生虫はクサフグにだけいるのだろうか? 川を登る行動がクサフグでだけ見られ,他の海産魚では知られていないのはなぜ? 画面にフグの顔が大写しになったとき,鼻づらにカイアシ類らしき寄生虫が付いているのが見えた.ここで問題になっている「寄生虫」とは,このカイアシ類のことなんだろうか. フグは体表面の寄生虫を殺す「ため」に川をさかのぼる,という説は,これらの疑問を1つずつ検証してはじめて,より真実に近いものになる.そういう根拠に全く言及しないまま,安易な「説明」をあてがうという手法を,日本のテレビ番組はずっと採用している.こういう手法から,そろそろ卒業して欲しいと思う. 「説明」は「証明」ではない.この基本的な違いが,多くのテレビ番組では無視されている.もっともらしい説明を与え,皆がふむふむと納得し,そして話題は次に移って行く.これは科学ではありません.安易な「説明」に依存するテレビの手法については,もっと厳しい批判があっても良いのでないだろうか. お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
あとで少し書き加えました.
(March 3, 2011 06:24:22 AM)
フグ を 河豚 とかくのは、中国での文字で
あり、昔から 川を遡る ということは しられています。 私が知っているのでは、蘇東坡(11世紀)の、恵崇の絵画についての詩もあります。 ともかく、興味をお持ちならば、中国での 研究がないか(日本もですが)を調べて みるといいかもしれません。 私は元番組を見ていません。いまたまたま 気づいたので。 なお、私は生物学でも美術史でもありません。 いまある雑誌原稿で、恵崇 のことをいれるか どうかを迷っていた、ということです。 (February 16, 2019 03:01:24 PM) |
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