『宝島』真藤順丈――本土返還前の本当の沖縄を描く
『宝島』真藤 順丈 、講談社、第160回直木賞受賞 1952年、サンフランシスコ条約によって、沖縄はアメリカの統治下に入った。これから1972年に本土復帰するまでのことを本書は描いている。 〝戦果アギヤー〟が一つのキーワードだ。米軍基地に侵入して食料などの物資を盗む者のことをいう。もし、見つかると米兵に射殺される。基地の外に出れば、琉球警察に追われることになる。 この日、オン、グスク、レイの3人の少年は、嘉手納基地のフェンスを破って中に侵入した。途中、米兵に見つかり、銃弾の飛ぶ中をヤマコの待つフェンスをめざした。オンは行方不明になり、残る3人を中心に物語はすすんでゆく。 やがて3人は大人になった。グスクはコザ署の刑事、ヤマコは小学校の教員、レイはヤクザになりオンを探した。 1959年6月、米軍機がヤマコの勤める小学校に墜落した。教え子が死んでゆく姿を目の当たりにしたヤマコは、この日から変わった。集会やデモに顔を出すようになり、教職員会の一員とし活動するようにもなった。そんな彼女に、「ほんとうに目の仇にしなきゃならんのはアメリカよりも日本人なんじゃないか」とレイは言った。 当たり前のように起こる米兵の犯罪、米兵を逮捕できない琉球警察、まさにアメリカによるやりたい放題の状況が続いた。 そして、祖国復帰闘争が始まった。 本土に住む人々が知らない本土復帰前の沖縄が分かる本書をぜひお読みください。 ホーム・ぺージ『これがミステリーの名作だ』も御覧ください。http://bestbook.life.coocan.jp