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テーマ:詩&物語の或る風景(1047)
カテゴリ:ショートショート
『キツネのごん』 ある里山におかあさんぎつねの「ぎん」と こどもぎつねの「ごん」が楽しく暮らしていました。 里山というのは人間が畑作りや山木の間伐、 小川を作ったり世話を焼いて作った野山のことです。 その頃はきつねの「ぎん」も「ごん」も 人間の親子に化けて一緒に手伝ったものでした。 でも最近は里山も荒れ放題、 野良仕事をする人間がいなくなってしまったのです。 「ぎん」と「ごん」がいくら二人で頑張って野良仕事をしても 追いつきません。 たくさん採れた木の実も今は小鳥たちの分さえ足りません。 それどころか「ぎん」と「ごん」の食べる分もなくなりました。 ぎんがごんに言います。 「もうこのあだりもたべものがとれねぇ、おまえ人間に化けでそのまま 街で暮らせぇ」 「おらぁ おっかぁと離れて暮らすのいやだぁ」 二人で抱き合って出る涙も枯れたある日、「ぎん」は人間のお嫁さんに 化けて嫁入りしてしまいました。 「ごん」は一人で生きていかなければいけません、街へ出て働きました。 ただ食べるだけで精一杯で、夜はネカフェに泊まったりです。 「街はぎゅうぎゅうしてておいらには暮らしにくい」 いつも窮屈な思いで暮らしていてストレスが溜まりそうな「ごん」。 だけどある時思ったのです。 毎日、嫌だ嫌だって思って暮らしているから本当に嫌になるんだ。 毎日、感謝感謝と手を合わせて生きてみよう。 そしてほんの少しの糧でも喜んで頂こう。 そう思って毎日毎日働きました。 たまの休日には一日中、空を見ています。 そうして雲に乗って空を自由に飛んでいるのでした。 ―おしまい お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007年08月30日 12時51分20秒
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