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Nov 29, 2014
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テーマ:中国&台湾(3301)
カテゴリ:中 国 界
著者はテレビ朝日の政治部記者である。テレ朝入社10年目に社費で防衛大学校へ行き、国際安全保障学の修士号を取ったという変わった経歴。こちらに、布施哲さんが防衛大学校のウェブサイトに寄せた一文がある:
テレビ記者、防衛大に行くー総合安全保障研究科での2年間を終えて

なぜか読了まで著者経歴に目が行かなかった。テレ朝記者と知ったら、即、読むのを止めていたかもしれないから、神さまのご配慮があったのかもしれない。

衝撃的内容の本だった。傾聴すべき提言もある。

中国共産党軍など質が劣り、通常兵器の戦いであれば自衛隊も持ちこたえ、自衛隊+米軍の前にはイチコロと思っていた(もちろん米日による中国大陸への侵攻は問題外。あくまで域外に出てきた中国軍を叩くという前提)

そうではないという。

中国軍にはるかにまさるデータ収集能力と性能優位の武器を日米がもっていたとしても、現在のペースで軍拡をすすめる中国軍が2030年に先制攻撃を仕掛けてくれば、物量にものをいわせた中国軍のミサイル攻撃によって緒戦では日米の戦闘能力は大いに削がれるという見立てだ。


布施哲(ふせ・さとる) 『米軍と人民解放軍 米国防総省の対中戦略』 (講談社現代新書、平成26年刊)

たとえ烏合(うごう)の衆のように戦意に劣る兵隊の集団であっても、たとえ1対1のドッグファイト(戦闘機どうしの一騎打ち)で中国軍が100%敗れても、繰り出されるミサイルを片っ端から日米の迎撃ミサイルが撃墜できても、勝負は甘くない。

中国各地の森のなかに隠された移動式の発射台から、中国側がミサイルで集中豪雨のような攻撃を仕掛けたとしよう(隠された移動式発射台をピンポイントで破壊するのは、極めて困難なのだという)
1基のミサイルの迎撃には2基のミサイルが使われる。中国軍が物量で撃ちまくってくれば、日米の戦艦や戦闘機も一時的にミサイル切れとなり、後退せざるを得ない。

第4章「米中衝突2030」が、そういう事態をシミュレーションして見せる。
日米が手を携えたからといって盤石の備えというわけではない。衝撃をうけた。

≪弾切れになれば、いくら高性能な護衛艦や戦闘機を揃えても、戦闘力は失われてしまう。ましてやフルスケールに近い通常戦争であれば、自衛隊の基地だけでなく弾薬庫や燃料備蓄施設も攻撃対象となり、補給や整備を受ける施設も失われる可能性が高い。

ミサイルを撃ち尽くし、補給を受けられないイージス艦や戦闘機は、戦闘力ゼロの単なる高価な兵器に成り下がってしまう。≫
 (303頁)

中国経済が破綻してくれれば中国も弱体化し危機は去ると思ったら、これまた大間違い。今や、むしろその逆だというのである。

≪日本にとって中国の脅威は軍事力だけではなく、中国経済の破綻による政治的社会的混乱によって引き起こされるのではないか。別の言い方をすれば、日本にとって最大の脅威は「強い中国」ではなく、「弱い中国」なのではないだろうか。

経済がクラッシュして予算の大盤振る舞いができなくなり、軍のみならず法執行機関も不満をくすぶらせ、おのおのが政治主張を始め、事態が徐々に統制がきかなくなる……。

こうしたとき中国は内なる不満や混乱を外に向けさせるため、強硬行動や武力行使を選ぶ――。そして、そのとき標的にされるのは台湾であり、台湾侵攻を企てる中国と、それに反発する日米の間で軍事的緊張が一気に高まっていく。米中戦争があるとすれば、まさにこのような形で始まるのではないだろうか。
米国防総省の懸念もここにある。≫
 (87~88頁)

中国のミサイルを邀撃(ようげき)するために、将来的にはレーザー兵器が有効らしい。だんだんSF映画の世界になってきた。

≪DEW(directed-energy weapon 指向性エネルギー兵器)と呼ばれるレーザー兵器は地上配備型だけでなく、小型化とコストダウンが実現すれば艦艇にも搭載できるようになるだろう。イージス艦などに搭載できるようになれば、ミサイル迎撃に大きな効果が期待できる。≫

≪レーザー兵器は、電力が供給される限りミサイルのように弾切れの心配もない上に、レスポンスタイムも短く1発あたりのコストが1ドルと極めて廉価という利点がある。迎撃ミサイルを搭載せずに済めばその分、巡航ミサイルを多く積むこともできる上、目標に対してレーザーを指向させるのもミサイル誘導より容易、などメリットは多い。なにより米軍にとっては、ミサイルの弾切れの不安から解放されるメリットが大きいだろう。≫
 (171頁)



本書末尾の著者提言は真摯な傾聴に値する。

≪国力が衰退し財政面の制約を今後も受け続けることを考えれば、日本はコストパフォーマンスを強く意識しながら、新しい脅威に対抗できる抑止力となる自衛隊を整備していかなければならない

防衛予算全体のパイ拡大は望めない。そもそも「日中紛争」や「台湾海峡危機」といった、発生の可能性が低い、しかし発生したときの影響が大きい事態を想定した防衛力整備をどこまでやるべきか、という根本的な精査も必要だろう。

あやふやな中国脅威論に便乗した、無軌道な防衛予算の増加は最も忌避されるべきものだ。今後の防衛予算は、防衛という限定された世界の中での積算ではなく、財政や社会保障、教育、経済成長への投資という優先事項とのバランスの中で決定されなければならない。放漫財政により日本国債がクラッシュし、経済的に荒廃すれば、防衛力整備も始まらなくなる。≫

人員も予算も多い陸上自衛隊から、海空自衛隊への予算のシフトを真剣に実行する時だろう。陸上戦力の役割は引き続き大きいものがあるが、日本の脅威は海や空を通ってやってくることを考えれば、どうしても海と空の守りを重点的に整備していかざるを得ない。≫
 (307頁)

著者は、安全保障外交が経済力や技術力も含めた総合力に基づくことを強調して本書を終えている。

米軍のアジアでの展開を支える日本の整備能力、技術力もまた日米同盟の基盤であり、米国を日本防衛とアジア太平洋に引き留めている要因だ。(米国国防総省の作戦構想である)ASB(Air-Sea Battle 本書の第3章に詳細記述あり)を見ても、日本の支援がなければ米国の作戦は成立しない。

こうした日本の強みは対米関係においても日本の交渉力であり、日本はこうした強みも自覚して対米関係や対中関係などで活用していくべきだ。

そして、なにより米国と中国の狭間にいる日本の交渉力を強める特効薬は、日本経済の成長だ。米国は、経済力(=国力)が衰退した「弱い日本」を望んでいない。日本が米国にとって頼りになる強いパートナーでいることもまた、米国の日本への関与につながる。

中国に対して経済面で過度に依存することは、中国の要求に対する日本の脆弱性を高め、日本の戦略的判断の幅を狭めることになりかねない。

経済力という国家のパワーを維持し、中国に対する敏感度を下げ、経済的にも政治的にも米国にとって頼りがいのあるパートナーとなることで、日本の安全保障上の選択肢は広がっていくのである。≫
 (309~310頁)

信頼が置けそうな論客・布施 哲(さとる)氏だが、あのテレ朝で仕事を続けて、周囲の圧力でつぶされないことを祈るばかりだ。

なお、角川叢書『希望の政治学 - テロルか偽善か』の著者、布施 哲(さとし)氏は別人ですので、ご注意を。





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最終更新日  Nov 30, 2014 12:01:08 PM
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