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カテゴリ:雑考あれこれ
今日はRichard Samuels著「Securing Japan」を大体読み終えた。(中間の2章を除き読み終える)著者は、MITの教授で日本の安全保障政策が専門。以前日本語訳された、「富国強兵の遺産」の著者でもある。が、去年新著を出したのを遅ればせながら読んだ。
今回のテーマは、日本の(安全保障・外交)戦略の行方だ。面白そうだと思って読んだのに、残念ながら期待は裏切られる。 まあ、非日本人にありがちだが、戦後史をダイジェスト的に書き上げて日本人の専門家に意見を聞いて回ってみんなの意見をきいて要領よくまとめる、ハンドブックに仕上がっている。多分、それだけで労力のほとんどを使い果たすせいか、多分著者が考えたい、日本の(安全保障・外交)戦略はいかに?という著者自身の意見がほとんど書いていない、という著者自身の付加価値があまりない、本になっている。まあ、翻訳学者にありがちなことなのだが。。。前著の方がまだメッセージ性があってよかったのに、ちょっと残念である。 けれど、著者の名誉のために言っておくと、英文で読む日本の安全保障政策を勉強する上では、とってもいい教科書にはなります、確実に。(が、戦前の話や吉田ドクトリンの過大なる評価はちょっと違和感は感じる。特に近衛文麿の東亜新秩序の提唱への過大な評価とかは。詳しくは原著参照) というわけで、多分著者の書きたかったテーマ、日本の戦略(安全保障・外交)のについてここで考えてみよう。 <現状> 日本は自らの安全保障の大部分をアメリカに依存している。さらに、アメリカを中心とした世界秩序(覇権)の下に日本(特に経済)は完全にビルトインされており、その繁栄条件(民主主義、自由貿易主義など)にあわせて、というよりその条件下で繁栄するよう自らの体を調整してある。そのため、いわばアメリカ覇権に一蓮托生状態である。 <状況の変化> 冷戦終了に伴い、共通の敵としてのソ連がなくなってしまった。さらに、吉田ドクトリンの最大の前提条件である、重武装をするにはあまりに脆弱だった日本経済が空前の経済成長を経てGDP世界第二位へ。このおかげで、日本が今まで説明してきていた、日米同盟の重要性、特に日本が特に欲していないのに、いろいろアメリカから突きつけられてくる要求に応える理由が崩壊。 一方、アメリカは、世界覇権維持のため日本における軍事基地を引き続き利用することを決断。これは、国内の安全保障のみを考えている日本国憲法との整合性は低い。 アメリカ覇権にほころびが見え始めている。ドルが確実に衰弱の一途をたどり、イラク戦争のおかげで中東における地域安全保障能力が危ぶまれてきている。さらに、テロとの戦いをはじめ、今後とも世界秩序へのメンテナンスコストは上昇の一途をたどることは確実で、その分余計日本に対し請求書が回され、その頻度、コストもあわせて上昇していく。 <今後予想されるリスク・問題点> アメリカによる覇権維持コストの上昇に伴う、日本へのバードンシェアリングコストも増大。その割にはアメリカが覇権維持のために行う意思決定プロセスに関与できていない。 →今後日本がどこまでバードンシェアリングしていくか、アメリカの意思決定プロセス関与の可能性について検討を要する。 アメリカ覇権が今後とも有効かどうか見通しが先行き不透明。 →いつまでアメリカ覇権に付き合うか、検討を要する。 アメリカの外交政策は非常に流動的であるために、ある時点のアメリカの外交政策が永遠であると想定することは不可能 →その政策に同調する際には必ず出口戦略を練っておく必要がある。特に日本が懸念すべき事項としては、アメリカの東アジアへの関与のレベル(質、量)が変動するので、アメリカの関与がほとんどない場合、限りなく関与したがっている場合を考慮する必要がある。例えば、アメリカの関与が低くなる場合、日本がアメリカがいなくてもアジアの中で仲良く共存共栄できる関係を構築する必要があるし、アメリカの関与が過剰となる場合、アメリカがほとんど関与しなかった間に構築されたアジア関係の中にうまくアメリカを取り込む工夫をする必要がある。例えば、アメリカの関与が薄れている間に東アジア内で何らかの地域組織ができたら、一応アメリカの席は確保しておいて、アメリカがいなくても運営可能にしておく、など。 その際、日本・アジア関係のうち、最も懸念される事項としては、中国の台頭であるが、アメリカの関与が低い状況の中、日本がアジアの中で孤立の道を選ぶかより協調姿勢をとるか、検討する必要がある。北朝鮮問題もあるが、中国との関係をいかに構築するかで半分解決する問題である。 <戦略オプション> 1)アメリカ第一主義 現状そのまま継続。 2)アジア重視・自己権益防衛 アメリカ覇権は既に過去のものであるとして、中国をはじめとして東、南アジア内で共栄していくための基盤構築、シーレーン防衛などもエネルギーに飢えている中国や韓国などと共同で担当する。この際、アメリカの要望はアジアの間のコンセンサスに反することは断り、地域大国であることに満足。 3)アメリカとアジアの二股戦略 中国との力関係が流動的なためにアメリカというバックアップをキープ。現在のアメリカがしているヘッジ戦略と同じ。常にケースバイケースでどっちの味方に付いた方がいいか、費用対効果についてそろばんをはじいた上で行動。特に政治大国への野心はない。 4)グローバル政治大国化 アメリカからの指示を待つまでもなく、日本が世界第二の経済大国として相応の国際貢献をすべく、何ができるかを前もって検討し、実行。その代わり、国際貢献相応の発言権、世界秩序維持における意思決定プロセスへの積極的関与権を求める。いわば、アメリカの、真の意味でもグローバルパートナーに。 とりあえず、まずはこんなところでしょうか。以上を踏まえた上でどの道がいいのか、続きは明日。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
January 2, 2008 01:35:35 AM
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