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テーマ:気になったニュース(30421)
カテゴリ:時事
ひさびさに大統領選ネタで。今日のNYタイムスのOP-ED(識者の意見文)で、ヨーロッパは民主党好きなのに、アジアは共和党が好き。それはそれなりに理由がある、という主張。
http://www.nytimes.com/2008/04/10/opinion/10cohen.html?_r=1&th&emc=th&oref=slogin ヨーロッパが民主党が好きなのは、ブッシュが嫌いだから。血となり、肉となっている、とまでいう。 一方、アジアは違う。もちろん、ブッシュのイラク戦争はアジアのお気に召すものではないが、中国やインドは古典的なパワーバランス理論(要は国力の強弱で強いものが弱いものいじめをする)で世界を理解しているため、共和党の方がわかりやすい。さらに、インドにとっては、中国とのヘッジ目的からアメリカが戦略的に友好関係を築いているため、この継続を望む。中国は、民主党といえば、ビル・クリントン時代の人権問題を思い出すわけで、また人権問題でもめるの?と警戒。 そして、日本は、中国の台頭に伴い、アメリカのアジアでのプレゼンスを求めているわけで、共和党はそれを明確に打ち出してくれるので、共和党を支持する。(なぜか韓国はない) 面白い分析だ。 まずはヨーロッパを補足すべきか。ヨーロッパが共和党嫌いなのは、根本的に軍事一本槍で外交を軽視する特徴のあるこの党の行動を制御する術がないから。 以前書いたように、欧米には王様の行動を制御する術はない。形はどうあれ、権力奪取する。そのため、軍事的に圧倒的優位に立つアメリカという暴れ馬を制御する方法を、ヨーロッパは持たないことになる。 当然、軍事的ではない方法で制御しようとした。例えば、国際法。国連そのものは、アメリカの考案物だが、国連をアメリカ制御目的に使っていることは確かだ。 が、これはアメリカを完全には制御しえない。なぜなら、アメリカが知らないもん、といったらそれまでの話だから。懲罰能力のない、見せ掛けばかりの権威しかないこれらの装置は、共和党には通用しない。 田中宇は、イギリスがアメリカを制御しているように書いているが、そうとは思えない。ちゃんと制御しているのなら、イギリスがフランスとかたらってスエズに軍を進めたが、アメリカは無理やり止めたし、レーガンと超仲良しといわれたサッチャー時代でさえ、フォークランド戦争時にはろくすっぽ支持していない。いくらイギリスが「特殊な関係」と繕って見せても、力の衰えに応じたアメリカの扱いを変えることはできない。 でも、民主党なら、伝統的により外交を重視している。(あくまで、相対的な話)だから、根本的に共和党が嫌いなのだろう。 でも、アジアには、アメリカを制御しようというコンセプトはまだない。というより、ヨーロッパは、アメリカなんぞは後発の田舎もん、くらいの扱いだから制御しようという考えになるが、アジアではそういうイメージはない。アジア諸国が独立していく、第二次世界大戦以後は、ずっと最強プレーヤーとして存在する。 だから、制御する、というよりは、いかに付き合うか?とより目線は同じか下になる。 でも、中国やインドが古典的なパワーバランスで世界をみているから共和党がわかりやすいというのは面白い見方だ。そして、日本が含まれていないことも。 古典的なパワーバランスで世界を見るのは、多分弱者からすれば、もっとも安全な見方だろう。明治の日本もそうだ。ま、明治のころは古典的パワーバランスが蔓延していて、若干前進があったころ。明治のころの文献を読んでもぜんぜん出てこないが、南米は日本の幕末時にはすでにヨーロッパから独立していた。なので、植民地の独立というのは、まったく不可能な、夢のまた夢ではなかった。が、まだアジアというエリアには存在しないコンセプトといっていいだろう。 が、今は古典的なパワーバランスの世界からだいぶ前進している。とりあえず、弱いからって、強い国が植民地にするということはなくなった。(まあ、宗主国的には、物理的に領土をもつ、帝国はメンテナンスが難しいから、やめた)人民を弾圧する政府については、外国メディアががんがん非難するし、国連が動けば経済制裁や軍派遣もありえるようになった。独裁者には生き辛い世の中にだんだんなってきている。 もちろん、まったく弱いものいじめがないわけではない。ちゃっかり中国人の安い労働力を搾取しておきながら、貿易赤字が大きすぎると為替操作の罪をなすりつけて、制裁措置をとろうとするアメリカがいたり、中南米はアメリカの庭といわんばかりに、大統領を誘拐してフロリダの裁判にかけてみたり、コロンビアなどにCIAを放って内乱状態を長引かせてみたり。 それでも、飽き足りなくて、イラク戦争までする。おかげで、イラク人には超迷惑で、占領時代にあまりにめちゃくちゃをするものだから、ますます内乱状態が悪化。出て行くにもでていけず、いてもずるずるとこう着状態。いくら司令官が米議会で今の兵力を減らさないで、と頼んでみたって、いつまでおいておけばいいのさ?という問いには説得力のある答えがでるわけではない。 生々しい武力行使というよりは、少し巧妙な仕掛けが作られている。が、こうした仕掛けは欧米が独占しているので、新参者にはわかりづらい。もっとも、明治からがんばっているはずの日本もよくわかっていないのも事実だが。 が、国が大きくなれば、好き嫌いに関係なく、周りの国が警戒してくるし、発言を求められるようになってくる。なので、世界を理解する必要がどうしてもでてくる。 多分、きれいに、ここまではOK、ここからさきはNGという境界線を描いてくれる人はいない。というより、誰も断言できない。 なので、意外に明治日本が主張していた、道義に基づいた外交が正しいと思われる。相手が同じく道義に基づいて動いてくれるとは思ってはいけない。けれど、自らは道義に基づいて行動する。そして、特に相手の問題点を指摘するときは、高らかに自分が誠意を尽くしているという姿勢を示すこと。イメージとしては、国際世論という裁判所を意識して、相手側に指摘されたら困るようなことはしない。そして、われわれはこんなに努力したのだ、後は相手が悪いのだと国際世論を納得させるだけの弁舌をもつこと。 もちろん、パワーバランスが勝つこともある。が、道義とパワーバランスの絶えざる衝突が少しずつでも世の中を前進させていく。今はパワーバランスが勝っているといって、10年後、20年後もパワーバランスが勝つとは限らない。その見極めは非常に難しい。けれど、国際世論を少なくても意識すること、できるだけ高らかにアピールすることで、だいぶ受け止め方も違うはず。 少なくても、技術の進歩で一握りの人々が世界を制御することがだんだん不可能になってきている。インターネットのおかげで、非常に低いコストで全世界に主張を宣言することもできるようになったし、大手メディアが世界に信じさせたいことと異なることを普通の人が画像や映像をネットにアップロードすることで違った世論を形成させることもできつつある。 古典的なパワーバランスとは異なる世界が生まれつつあることを正面から受け止めるべきだろう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
April 11, 2008 02:49:22 PM
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