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債務名義を有していても、権利保護の必要性があるとして、仮差押命令の申立を許容した事例(東京高裁 平成24年11月29日決定)
「事案の概要」 AはYに対し金銭債権を有しており、これについて公正証書を作成し、執行力を有する債務名義を有していた。Aは破産し、Xが破産管財人に選任された。 Xは、YがBに対し債権を有しているとの情報をつかみ、上記執行力を有する債務名義に基づき、YのBに対する債権の仮差押えの申立をした。 原審裁判所は、Xは執行力ある債務名義を有しており、仮差押申立は、権利保護の必要性を欠くとして申立を却下した。これを不服とするXが抗告した。 「判旨」 債権者が被保全債権について確定判決等の債務名義を有している場合には、債権者は、遅滞なくこの債務名義をもって強制執行の手続をとれば、特別の事情がない限り、速やかに強制執行に着手できるのが通常であるから、原則として、民事保全制度を利用する権利保護の必要性は認められないというべきである。 他方、債権者が被保全債権について債務名義を有している場合であっても、債権者が強制執行を行うことを望んだとしても速やかにこれを行うことができないような特別の事情があり、債務者が強制執行が行われるまでの間に財産を隠匿又は処分するなどして強制執行が不能又は困難となるおそれがあるときには、権利保護の必要性を認め、仮差押えを許すのが相当である。 抗告人は、Aの破産管財人であり、破産者の有する執行力のある債務名義(公正証書)により本件仮差押債権に対し債権執行を行うには、抗告人への承継執行文を得て、かつ、これを公証役場から相手方に送達し、その送達証明書を添付して債権執行の申立を行わなければならない。 そうすると、承継執行文付きの公正証書が相手方に送達されることにより、相手方は、抗告人が強制執行の準備をしていることを予想することが可能となり、相手方において、本件仮差押債権を譲渡したり、また、本件仮差押債権の弁済期限が平成24年12月10日であることから、第三債務者から弁済を受けるまで送達を受領しない等するおそれがあるというべきであるから、債権者において、債権執行を速やかに行うことができず、これが不能又は困難となるおそれがあり、上記特別な事情がある場合に当たると認めるのが相当である。 判例タイムズ1386号349頁 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2013.05.02 17:05:14
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