|
カテゴリ:ずるずるシネマ・ウィークリー
なんか、久しぶりの「ずるずるウィーク」。ウィークって言葉が悲しい。これから、もう少しがんばんなきゃですね。
さて、7月10日は三男のソフトボール大会。 終了後、夕方の時間をつくって、「『奇跡』観てくるけん」と家を出ようとすると、三男が、「奇跡ってどんな映画?」と聞くから、「野球の映画だ」とウソをついたら本気にした。 三男が大好きなGReeeeNの「キセキ」ではないのだ。「ごめん!からかって・・・」と謝った。 この映画『奇跡』は、是枝裕和監督の作品で、九州新幹線が全線開通する3月12日を記念して、JRグループのバックアップで、新幹線をモチーフにした映画なのだ。 そういう背景を聞くと、是枝裕和監督って、資本になびく監督なのかなっとちょうと思ったけど、雑誌などを読むと、「電車が撮り放題だと言われたから創る気になった」と書かれていた。 なるほど、動機はどうであれ、スポンサーがどうであれ、内容は、しっかり心洗われる映画となってて、安心した。 ◇ ◇ 小学6年生の航一(前田航基)は、母親(大塚寧々)、祖父(橋爪功)、祖母(樹木希林)と一緒に、鹿児島の母親の実家で暮らしている。 2つ下のの弟・龍之介(前田旺志郎)は、ミュージシャンの父親(オダギリジョー)と博多で暮らしている。 この2つの2元中継が、映画を展開させていく。 実は、兄弟が離れ離れになったのは、両親の離婚だったのである。 九州新幹線が全線開業する3月12日に、博多から鹿児島に向かう新幹線と、鹿児島から博多に向かう新幹線のそれぞれの1番列車がすれ違った瞬間に、その場にいたものには、奇跡が起こるといううわさを学校で同級生が話しているのを聞いた航一。 航一は、すれ違う場所が熊本県下であることを突きとめ、その瞬間を目撃するべく、2人の親友と行動を起こす。 一方の弟・龍之介は、父親のライブコンサートの手伝いをしたり、さらには畑に豆を植え、いい加減な父親との生活を、とりあえずは楽しく送ろうと、実にけなげに努力していた。 彼も、兄からの連絡を受け、女の子3人と一緒に、兄と合流する場所・川尻駅(熊本)をめがけることになる。 ◇ ◇ それぞれに奇跡の実現を夢見て、熊本までの冒険に出る子どもたち。 航一の願った奇跡は、桜島が大爆発して、鹿児島からみんなが引っ越すことになり、離婚でバラバラになっている家族4人が再び一緒に住めるように、というもの。 実は、大阪からの転校以来、航一の毎朝は、ベランダと部屋の畳の上の火山灰をふき取ることから始まるのである。 「意味わからん」。鹿児島の人たちが、灰の多さに平気なのも、毎日、噴煙上げている桜島をみて平気なのも、航一にとっては、理解不能なことなのである。 一方、天真爛漫な育ち方をしているようでも、父や友人たちに、しっかり気配りをするできる弟・龍之介。 この現実の兄弟が、映画でも兄弟を演じ、是枝裕和監督の演出で、テンポよく、生き生きと演じている映画なのだ。 子どもの発想と行動を、大人の私たちに伝えるカメラアングルも、なかなか愛情深く感じる。 熊本までの費用をどう捻出するか、日程を逆算すると前日の昼過ぎに学校を抜け出さざるをえない鹿児島組は、どうやって実際に授業を脱けだすか。 大きな冒険のために、子どもの頭を使って、一生懸命に知恵を集め、小さな冒険を重ねる子どもたち。 そして、それを、わかっていながら支える大人たち。 石橋を叩かせて歩くことも必要だが、思いのままに思い切った行動をさせることも、子どもの時期に大事なことだ。 監督スタッフの子どもの夢の実現のための数々の計らいが、見て取れる映画である。 航一は、だらしないが心から好きで尊敬している父親に、「自分の生活より大事なもののある人間になれ」と言われる。 この言葉をかける父親と受ける子、大事だね。 ◇ ◇ 結論的に言えば、奇跡を起こすことができたかどうかは観た方々に検証していただければよしとして、私は、そういう子どもの純粋な発想からそれをめざした子どもたちの行動力・想像力、まあ、得も言われぬ力に突き動かされる青春の入口の不可解な行動とでもいうか、そういうことが、その子たちを確かに成長させる経験となったんだよ、というのがこの映画の一言紹介かな。 震災を受けて日本人が、どうあるべきか。 震災の前に作られた作品なんだけど、競争主義でもなく、成果主義でもなく、人間一人ひとりを大事にする社会にしなければならないというメッセージを、私は受け止めた。 ◇ ◇ さて、最後に、どうでもいいんだけど、博多っ子として一言。 龍之介たちが住む街の設定は、銀天町商店街。 博多区の那珂南小学校区である。私の高校時代の淡い思いで深い所。 スクリーンに映し出された商店街に、胸がキュンとなった。 子どもたちが繰り広げる冒険と、私の青春が、スクリーンの上で重なる。 できればあの時の淡い思いを胸に、あの時の私の心を知り尽くしてた人と2人きりで、観たかったなあ。 この地域の中学校は、三筑中学。 昔は、タバコ屋の武田んがたの鉄矢も、三筑中学校だったが、1987年に板付中学校ができて、板付小と板付北小は三筑中から分離した板付中に行くことになった。 映画では、この商店街の中のスナックの2階が、子どもたちの作戦会議室。 地理的に博多っ子ならおかしいと思うのは、ここを出発した子どもたちが、超高級住宅街の中の百道浜小学校に通っていることと、大濠公園を通って博多駅から熊本に向かったことかな。 百道浜小学校は、なぜか、ここだけ運動場が芝生。 これは、地球温暖化対策として、私は大賛成なのだが、福岡市が、ここしかしていないのは合点が行かない。 もう一つ、映画のシーンで、龍之介がゴミ袋を学校に行く前に出すシーンがある。 福岡ではこの光景はない。北九州市ではある。 それは、福岡市が、日本一、合理化され、公務労働者が削りに削られて、清掃事業はすべて民間委託化されて、真夜中にごみ収集者が回る街になっていることを、監督・スタッフが知らなかったからなのだろうか。それとも、そんな異常な街をあえて無視して、一般他都市のように、ゴミは朝出すのが当然とこのシーンを作ったのか。 まあ、別に映画の全体には全く影響はないんだけどね。 それと、ちょっと知ってる子、橋本環奈ちゃん、かわゆいよ。 いやー、いい映画を観させていただき、心がポッカポッカになりましたよ。 一見の価値あり!90点! ※後日、写真が入れれるようになって、映画の公式ページともリンクさせていただきます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[ずるずるシネマ・ウィークリー] カテゴリの最新記事
|