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カテゴリ:アニメ・マンガ・ラノベの感想など
アスラクラインの内容については基本的には小説版十二巻目までをメインに、アニメ版は第一期までを見たうえで、この文章を記述しています。 ・疑問や謎について アスラクラインでは世界設定そのものに謎が多く、一つの謎が明かされることで別の謎が見え、それを繰り返すことで全体が見えてくるような作りになっていると思います。 異世界物なども含めて、世界全体の謎が主人公の考えと行動に収束されてゆくのは、これも定番です。 この手の物語というのは、謎のすべてが最初から説明的に一度に見えてしまうと面白くないでしょう。 物語のあらゆる謎(伏線)が完全に明かされる必要があるかどうかは、人によって考え方がそれぞれですが、私は謎は謎のままで物語が終わってもかまわないという考えです。 アニメではよくあるのですが、愛やら友情、信じる心などで理屈を覆すような奇跡が起こったりする「ご都合主義」という展開も、ノリと勢いできちんと突き抜けてくれればそれはそれでアリだと思います。 理屈の通った設定によって話が進んでいく方が比較すれば好きなのですが、謎は最後までよく分からなかったけど妙に納得のいく結末やテーマの提示というのもアリ。 その辺りをアスラクラインで見てみると、「謎を明かすこと=物語が進むこと」という図式となっていることは別にかまいません。 私が気になるのは、じゃあその謎に対して主人公の夏目智春がどういう姿勢をとっているのか、という点なわけです。 それがまた見事に消極的で受け身だと思うんですよね。 原作を八巻ぐらい読み終えてからアニメの第一期を最後まで見たのですが、十三話目のラストで智春が「どうして誰も教えてくれなかったんだ!」とか叫んでいたのにはゲッソリしました。 小説版とも共通する智春というキャラの基本設定がよく分かる台詞だと思います。 人からの説明を素直に受け入れる反面、疑問に思うことを自分で考えようとしないし、勝手に自分で思い込んだ理由でその場しのぎに解決してやり過ごしてしまう。 智春以外の主要人物は、何らかの形で世界の謎に関わる事情や背景を知っている設定となっているのですが、それを智春に説明する時にものすごく小出しに説明したりするんですよね。 で、読んでいるこちらは妙に引っかかって疑問が残る気分になったり、智春の主観でも疑問に気がついたりするのに、まあいいやと流してしまう。あるいは「急いでなになにをしないと~」みたいな流れで、強引に話が進んでいってしまう。 本当の核心部分を明かさないための進め方だろうと思うのですが、それが智春の一人称で進む物語なだけに、智春の性格が本当に酷く見えてしまう。 だいたい、智春がろくに機巧魔神《アスラ・マキーナ》についての知識を持っていないという設定で始まっているのが強引すぎで、その割にはGDの組織が説明された時にはある程度は事前知識があったかのようにすんなり受け入れている。 例えば「智春→先輩(誰でも)→各生徒会の背景にある組織」という三段階の構図はなにかと説明のたびによく出てくるのですが、なんで日本の高校に海外(おそらくイギリス)からの組織が影響力を持っているのか?という根本的な疑問がよく分からない。よく分からないんだけど、主人公の智春がその説明で納得してしまうから、読んでいるこちらの疑問が解消されない。(まさかミッション系だからの一言で解決できていると著者は考えている??) アスラ・マキーナとべリアル・ドールの関係性なんて、普通は操緒がべリアル・ドールだということが分かった時点でもっと真剣に知ろうとするのが普通でしょ。操緒を元に戻すという目的を持つのなら、せめてそう決意した時点でとか。 一人称の場合、主人公の視点は読者や視聴者の視点なので、主人公が何も知らない状態に置かれてスタートすることは珍しくないと思います。 そこから先、見ているこちらが疑問に思うことと主人公が疑問に思うことの間にズレが大きければ、必要以上に細かく説明的すぎたり、こちらを置き去りにして勝手に主人公だけが物語を進めてしまったり、とにかくフラストレーションのたまる状態にさせられる。 一言で言うなら、感情移入しにくくなってゆくんですよね。 アニメの十三話目、「どうして誰も教えてくれなかったんだ!」と言うぐらいなら、それを知っている周りの人たちになぜ真剣に聞こうとしなかったの?と思えてしまったので、主人公との間にとてつもない距離を感じました。 べリアル・ドールとは何なのか?を伏せて隠して引っ張るだけ引っ張っておいて、主人公にそんな台詞を吐かせることにも理解不能だと言わざるをえません。 主人公がいなかった方が名場面だったんじゃないか??と思えるエンディング(第一期とはいえ)というのは、やはり誉められたものではない。 どう表現していいのか迷うところですが。 アスラクラインというのは、よく考えてある物語がひとつあって、それを進めてゆくことに一生懸命になるあまり、話が進めば進むほど意味が分からなくなってゆく・・・という感じがします。 たぶん裏設定とかならもっと細かく設定や理由づけが組み立てられているのかもしれませんが、読者が読んでいて疑問に思うことは主人公に置いてけぼりにされてしまい、読者の代理であるはずの主人公だけがその物語の中で一人納得してゆく。 “神”と同じ戦うにしても、智春が自分で疑問を持ってその存在に気がつきそれと戦う決意を固めるのならば、私も読む気が失せることはなかったと思います。 しかし、そんな重要な局面でも夏目直貴や潮泉律都に解き明かしてもらう世界の謎と、それによって与えられる選択肢に依存しているようにしか見えない・・・。 (終盤になるほどタイムパラドクスが気になって仕方なくなるしねぇ) あえて言いきれば、こいつ自分で考える力も気もないな、と思えてしまったわけです。主人公の夏目智春に対して。 主体性のない主人公・・・。 なんでこう思える主人公になってしまったのか、それのほうが謎に思えたという。(汗) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Apr 15, 2010 11:40:09 PM
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