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カテゴリ:アニメ・マンガ・ラノベの感想など
せっかくアスラクラインのことを軸に考えてきたので、他にも主人公夏目智春について気になった点を書いておきます。 ・ヒロインとの関係 恋愛に鈍感で物語の進行に受身一辺倒、常に黒崎朱浬などといった先輩や物語の進行役であるキーパーソンに事態の判断を依存しているように見える夏目智春。 さすがにメインヒロインである二人、水無神操緒《みなかみ みさお》と嵩月奏《たかつき かなで》に対しては、自分の気持ちをもってそれを行動に表しています。 ただし、それでもやはり他力本願的な態度が垣間見え、不可解に感じられる点もいくつかあるように思えてなりません。 操緒を人間に戻す、そのためにどうすればいいのかを探る。 そうした智春の態度と行動は、物語を進める上でも一番重要な部分のはずです。 ところが日常パートのラブコメチックな展開が繰り広げられる部分においては、操緒が副葬処女《べリアル・ドール》であると判明した後も、幽霊扱いのままの智春の態度がたびたび出ていたと思います。 それが、べリアル・ドールということの意味を考えず、現状にただ流されているだけという感じに見えてしまう。 幽霊とは死んだ後の状態を意味するのが普通の解釈だとすれば、死んではいない状態か死ぬ前の状態であるべリアル・ドールは、死という境界線の手前と向こう側という明確な区別がある。 操緒というキャラの性格上も彼女自身はその区別をあまり深刻に考えていない節が多々あって、悲劇性を軽減して物語を暗くさせないという意味では機能しているのですが、どこか一貫していないんですよね。 べリアル・ドールになっているという現状に問題があるから人間に戻そうとしているはずなのに、べリアル・ドールであることや死んだ後の幽霊扱いにさえもこだわっていない態度が話の各所に描写されている。 ものすごくチグハグなんですよ。 アスラクラインの中での悪魔という設定も、考え出せばかなり疑問のある設定だと思います。 一般的なオカルトの概念における悪魔とは異なり、SF的な設定にある悪魔というべきであり、異世界から来た人間が「悪魔」と定義される能力を持つ存在になるという説明が後半に明かされます。 しかし、では二巡目にいた沢山の悪魔たちが皆、異世界から来たのか? 奏をはじめとする悪魔たちは、どうやら二巡目の世界の中で生まれて育ってきたようにみえます。 悪魔が悪魔として子を生み育ってゆき、そしてまた子を生み・・・という感じに見えるわけですよね。 男性型の悪魔と女性型の悪魔では契約に関する違いもあって、悪魔同士の繁殖が可能なのかどうかも不明(人間との交配は不可能でなければおかしい)だと思えるので、なんかそこもツッコミどころの様な気もします。 つまり、悪魔という存在がなんなのかそこが不明なまま、その場その場で明かされる事情に納得してしまう智春がいて、物語が勝手に進んでいってしまう。 で、奏との関係ですよ。 悪魔であることで忌避されてきた奏を特別扱いせずに、むしろ救おうとしたことで智春との関係が生まれたわけですが。 単純にオカルト的な穢れや悪の対象としての悪魔ではないのなら、そもそもなぜ悪魔が忌避されイジメにあうような存在なのかが不明。 家業としての暴力団的な設定が反社会的存在をにおわしてはいますが、かといって暴力団の家系だから辛い目にあったというほどには明確にされてはおらず、悪魔という存在が不明確なために奏が背負っている不幸や苦しみが今ひとつ理解できない。 普通の人間ではない異質な存在だから排除の対象として見られてきた・・・というなら、それほど社会的に認知されている悪魔という存在(認知されていなければ異質とも思われない)を智春が今まで知らなかったという描写が不整合だし。 (文字どおりに暴力団としての悪魔だというなら暴力団を忌避しないという感覚自体がおかしいが、そこら辺は曖昧) 智春を一途に想っているのに智春の鈍感さによって向き合ってもらえないことのほうが、よほど不幸じゃないか?ってぐらい。悪魔であることのそれよりも。 悪魔の力という点では、奏の戦闘能力に対する智春の態度もかなりイライラさせられます。 中盤からは非在化という設定からも力を使わせたくないため、奏には戦闘をさせたくないという描写が増えてくるのですが、戦闘が始まる前まではそう言いつついざ戦闘が始まってしまえばピンチに助けてもらうこととなる。(しかもその繰り返し) ほとんどの戦闘で、奏の助けがなければ勝てたり逃げたりできていないという状況なわけです。 非在化の危険性を気にかけながら奏の力に頼ることしか手がなく、さらに操緒を守るためにもそうせざるをえないのに、奏の力は使いたくない戦わせたくないという智春。 そうした葛藤があることは物語の魅力につながる部分でもあるので、矛盾しているからダメだとは言いません。 イライラさせられるのは、その矛盾を突破してしまう言い訳に「奏の献身的な態度」が使われているように感じる部分なのです。 これじゃあ優柔不断な男と都合のいい女の組み合わせだよ・・・という。(苦笑) 奏が戦うことの意味や智春がそれを止めたい気持ちを、二人で話しあうような場面が一度ぐらいきちんと描かれていればもう少し違うのでしょうが、それもないし。(むしろ智春はそれを考えることを意図的に避けようとしている描写があったのでは?) 要するに、ヒロインに対してさえも智春の言動がどっちつかずでよく“ぶれる”んですよね。 それに加えて設定の言葉が曖昧で、普通の定義で使う言葉とは意味的に異なった使われ方を物語の中ではされている。 物語を進める上での感覚的な意味を言葉にあてはめ、それを設定として一度に説明するのではなく部分的に明かしてゆくから、物語が進む中で読んでいるこちらのイメージと言葉の理解でズレてくるんですよ。 主人公の言動がぶれて、設定の言葉もイメージ的なもので曖昧。 どちらもフニャフニャしていて物語を理解してゆく時の軸になりにくいので、読み進めるたびにこちらの理解を修正したり根本的に変えたりしないとダメで、その細かな繰り返しがいらだちを募らさせる。 それを一言で言うなら、ヌルい世界でヘタレな主人公、となるんでしょうかね。(苦笑) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Apr 16, 2010 11:46:17 PM
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