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カテゴリ:アニメ・マンガ・ラノベの感想など
見かけは優しげだけど、よく考えるとかなりエグイ物語。 物語の最初から謎の多い始まりなので、徐々に理解できるようになるまでの間を我慢できるかどうかが勝負のアニメです。 音楽や作画の雰囲気に懐かしくてほっとするような柔らかさを感じるので、その雰囲気に合えば意味不明のままでもしばらくは見れるでしょう。 そして、見ていると徐々に物語の意味と人間関係がわかり始め・・・。 いちおうハッピーエンドの物語ではあるのかなぁ。 遠い星で政変に巻き込まれたお姫様が恋人と許嫁を巡る三角関係を清算しきれずに地球にまで転生してきちゃって、それを蘇らそうとする科学者たちも子供の姿になって地球に転生して追いかけてきて、あげく地球の側でその科学技術などを利用しようとする勢力と転生などを阻止する未知の勢力までが絡んで、もうドタバタ。 って、こう書くともっとわかりにくくなった感じもしますけど、ポイントは『転生』と『遠い星(惑星ギリシア)での人間関係が輻輳してゆく』部分でしょう。 地球人として暮らしながら姫様(ヘルガ)を探すために転生を繰り返す中で、科学者たちは地球人としての生き方や人間関係にだんだんと馴染み始め、ついには地球人としてそのまま死ぬことを選ぶ者が現れるんですね。 地球人としての出会いや家族愛、ギリシア人としての恋人関係や目的を共有している仲間の絆(その背景には科学者としての贖罪や使命感・プライドも絡む)などでものすごく一人ひとりが悩んだり苦しみながら自分で答えを出そうとする。 キャラの内面的なものを少し考えると、このアニメは本当に重いです。 その重さ自体は不愉快なものではなく、むしろこのアニメの魅力である“せつなさ”や何とも言えぬ“無常感”をかき立ててくれるのですが、なんか肝心のお姫様がちょっと浮いているようにも感じたのは残念でした。 優しくて芯が強くて人を思いやれるイイ子・・・がお姫様なのですが、でもどこか好きになれなかったんですよね。 トーマの正体が明かされた段階で自分の中ではお姫様と二人の王子様(正確には王子と近衛隊長)の関係には興味が薄れ、科学者たち(つまり『ベフォールの子供たち』)の行く末に関心が完全に移っちゃったというのがあります。 だって、姫を追いかけるために転生する技術を使ったんなら同じ地球に転生していることに納得できるし、それがまた偶然トーマも転生していたというのもまだいいけど、どこにいても見つけ出すって約束だけで転生して出会える「お姫様と王子様」なんてちょっと失笑モノでしょ。 全てを超えて出会える二人は愛なんです・・・って、それはないわ。 姫さんを追いかけるための苦労を重ねてきた科学者たちがあまりにかわいそうです。 最後の最後、あのシーンだけは自分の中で一番シックリきませんでした。 それを見るまではすごく良い物語だなぁと思っていたんですが・・・。 時も惑星も超えた二人の愛の物語、なんて構図を当てはめられるようにしちゃうと、いままで感じてきた“せつなさ”がむなしくなるんですよ。 『運命』みたいな一言で済むようなモノのためにみんな苦労してきたんじゃないでしょ、って言いたくなるわけです。 異なる惑星の異なる技術力を求めて振り回されてしまった地球人たちにしても、愛の引き立て役といわれるのではバカバカしすぎでしょう。 特にあの刑事さんとかにしてみれば。(苦笑) ですから、個人的にはお姫様の愛の物語として見るよりも、科学者が背負う宿命の物語として見ることをお勧めしたいです。 未知の技術を手に入れたい、試したいという欲求。 それが結果的にもたらす危険性。 でも止められない狂気。 それを正当化してしまう状況や自分に対する都合のよい言い訳・・・。 自分たちが陥った罠にはまらないよう、それを回避するために懸命に努力する『ベフォールの子供たち』。最後の最後には、それが地球の科学者たちにも通じて、でも事態はほとんど手遅れ寸前。 科学者としての使命感や義務感、虚栄心などが入り混じった個々の思いと行動が、転生するということと途中でその転生の流れからはずれたことの意味と重なって、本当に見応えのある展開に思えました。 キャラの設定年齢が11歳前後が多いのですが、もちろん転生する前はそこそこの年齢だったりするので、子供っぽい外見で大人びたことを考えたり言ったりしている様子も、慣れてしまえば気にならなくなります。 子供っぽい無謀さや行動力があるようにも見えますから、そこは外見に心が引き寄せられているという風に考えることもできるでしょうか。 心の傷とか悲しみとか、孤独とか仲間だからこそぶつけ合う感情とか、必ずしも前向きだけではないことがよく表現されているアニメです。 その点で、見た目の優しくほのぼのしていそうな内容だけを求めると、あれ???と思ってしまうはず。 しかも、詳しい説明がわかりやすくフォローされているわけでもないし、あまり人気作品でもないからなのか、こういう時に便利なウィキペディアの解説も簡素なものですから、理屈で考えだせばかなり意味不明で混乱してしまいそうです。 (いくら設定段階ではきちんと考えられていて矛盾が無くしっかりした理屈があったとしても、それがわかりやすく描写されているかどうかは別問題) あくまでも直感的な理解で受け止められるような工夫はされているようには感じますが、謎が謎として残ったり理屈で考えて正しいかどうかが気になるタイプの人にもお勧めしにくいアニメ。 でも、見た後で何かが残るアニメであるのは間違いないと思うので、隠れた名作を探している~というような人はぜひ見てください。 でもねぇ、このアニメとかでやろうとしているテーマの扱い方とかって、いまの原作付きやオリジナルアニメではちょっと無い・・・と思うのも確かなんですよ。 今のアニメはつまらないとか安っぽいとか安易だとか、色々と批判することは簡単だけども、このアニメがリアルタイムで流されていたら、そこはやっぱりわかり難くてつまらないとか批判されているような気がしなくもない。 ギリシアでの服のセンスやマシンのデザインとか、かなり野暮ったいところもあるしねぇ。 アニメのどこをどう見てどう評価するのか、自分なりの考えを持たないとこのアニメは評価しにくいかもしれません。 EDの『水のまどろみ』って曲はめちゃくちゃ印象深く、作品の世界観ともピタッとはまっているけどね。 あの惑星ギリシアを描いた“絵”とこのEDの組み合わせだけで、本編見なくても楽しめるっちゃ~楽しめる。 あと、子供(小学校低学年とか?)と一緒に見れるアニメだ、っていう点は付け加えておいてもいいかも。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Sep 12, 2010 10:10:05 PM
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