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カテゴリ:アニメ・マンガ・ラノベの感想など
景色と音楽に見応えのあるアニメ。 全二十六話でボリュームも程よく、しっかりと世界観に浸って堪能できる良作でしょう。 原作は小説版だそうですが、私はアニメ版のみを見ました。 ネット上で見かけたいくつかの意見によると、アニメ版では全体的にキャラが善人寄りに描かれているようで、小説版の方がもっと酷い一面があるみたいですね。 それがいいか悪いかは、小説版を読んでいない私には何とも言えません。 ただ、個人的にアニメ版のキャラ全般には好感を持ったので、内面的な描写の中身に不満は感じませんでした。 言い換えれば、無理やり善人に仕立てたような不自然さはなかった、と言ってもいいでしょうか。 また、アニメだけでは若干の説明不足を感じたり正しい表記を勘違いしたりもありそうですが、原作を読まなければアニメの中身が理解できないほどの不足ではないと思います。
古代というにはもう少し文明が発展していそうな、アジア風ファンタジーな世界観。 西洋風の魔法よりも土着の呪術的(シャーマン魔法系ね)な描写が多々あって、特に終盤はファンタジーを見ているつもりがなければ展開の唐突さに置いてけぼりをくらうかもしれません。 たたみかけるような勢いの展開がラストの見どころである半面、超常現象的な展開の連続にキャラたちが振り回されているようにも見えるので・・・。 理屈じゃなくて「そういうものなんだ」と受け入れなければダメで、なまじ考えて理解しようとすると、少なくともアニメでは辛いでしょう。(原作小説でどこまで理屈が組み立てられているかは知りません) というのも、全体的にこの作品では大人たちがその世界観の中で合理的・常識的な判断で行動することが多く、ヘタな歴史アニメよりもリアルっぽいのが魅力の一つなんですよね。 で、序盤から中盤にかけてのそういう大人たちの行動や判断に慣れていると、いきなりそれが通用しない不思議な力に翻弄される状況が加速的に発生してゆき、見ているこちらが何を基準に物語と接していいのかわからなくなりそうな部分が少しあると思えます。 つまり、私はこれを「ファンタジー作品の中にリアルっぽい描写が魅力な作品だ」と思うべきだと考えていて、リアルな作品なのに最後はファンタジーでねじふせているのがダメだ・・・という風にはとらえていないわけです。 作画のレベルも非常に高いこの作品です。 個人同士の技量を競うような戦闘場面(殺陣)の描写も悪くないものの、やっぱり最高に素晴らしいと感じるのは景色。背景描写がいちいち素晴らしいです。 日本のどこにかにありそうで、でもちょっとすぐには見つからないような、雄大で美しい大自然が生き生きと描写されていて、それがまた物語の展開に沿って次々と場面展開されてゆく。 無駄に凄くて背景がキャラを殺しているということもなく、本当にその世界が“そこにある”感じがして秀逸です。 たぶん、ただ綺麗に描写しようとするだけではあの感じは出ないはずで、物語の中でもそれとなく語られる自然と人との関係性の大切さみたいなものが意識されており、その意味でキャラの個性と同様自然の力強さや美しさを積極的に描写しようとした結果が画面に表れているような気がします。 音楽や音響なども世界観にマッチしていて、時々出てくる食事風景や様々な生活に使う小物などのデザイン、建築様式やそれに合った生活風景など、とても高いレベルでしっくりときていて「無理を感じさせない統一感」が素晴らしい。 物語の内容や結末に好き嫌いはあるかもしれませんが、アニメの中で十二分に描写しきられた『世界観の存在』を見ることは、それだけでアニメを楽しめる魅力となっているはず。 話の中身としては、「キャラクターの人となりを掘り下げる軸」と「その世界で起きている出来事とそもそもの世界の成り立ちの謎」がバランスよく織り込まれています。 チャグムの成長を描いているようでありながら成長の方向性を型にはめたものにせずに人間的な熟成といった感じで扱っていること、武人としての完成度では高いレベルにあるバルサにもタンダとの関係では少し偏った人間像を持っている一面 があったり、女房的な役回りのタンダが未知なるものに対して発揮する直観力の素晴らしさをもっていたり。 強いとか弱いとか、一つの評価では人間をはかることができないという当たり前のことが、なかなか上手く表現されています。 そのうえで異世界で起こる先の読めない展開がグイグイと物語を引っ張ってゆき、一度見た後で最初からもう一度見直せば、台詞のニュアンスや行動に感じた不可解さの数々も新たな面白さとして再発見できると思います。 いわゆる、何度見ても見るたびに楽しめる作品に仕上がっている、と言っていいでしょう。 個人的にはバルサはあんまり好きなキャラじゃなくて、それよりも私好みの渋めのサブキャラがこの作品には多いです。 バルサとの関係に達観の域に入りつつあるタンザも悪くはないのですが、もっと地味に第一皇子とか、その教育係のガカイ(なんか終盤はやたらカッコいい/笑)とかもいいですね。 丁寧な作りを端々に感じる半面、序盤から中盤にかけては地味な展開が続くともいえ、NHK作品らしい優等生的な品の良さも感じられ、もうちょっと明るく楽しくアニメを楽しみたいという人にはもどかしさがあるかもしれません。 同時に、色々な立場や考えが錯綜して物語が進んでいく内容は、社会人になってから見た時など、見る側の意識の変化次第でかなり内容の楽しみ方も変わる可能性が高いと思います。 大人向けのアニメと言い切ってしまうとニュアンスが違う気もするので、大人になってからも何度も楽しめるいい作品だと評価しておくことにしておきましょうか。 まっ、なんだかんだ言っても、トロガイが最強キャラであることに間違いないわけだけど。(笑) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
May 22, 2011 10:33:53 PM
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