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THE Zuisouroku

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2024/04/04
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カテゴリ:小説













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 ハロッズがしきりと見解を聞きたがっている神山は異次元空間をシヴァ神や一行の皆とともに漂っていた。シヴァ神さえ気を失ったままの状態だ。「般若」が彼らを弾き飛ばした力はそれだけ強力だったのである。シヴァ神がもつ知力と「般若」の力とは、互角なのだが、弾き飛ばされたのが一瞬の出来事で皆はその力の物凄さを忘れていた。余りの衝撃にシヴァ神もまだ目を覚ます事が出来ないのだ、一行の他の人たちが先に意識を取り戻す事など有り得無かった。

 インドの修行者の中には、修行苦行を見世物に、金儲けをするものも少なくない。「般若」の心は、その人類の醜さを凝縮した者達の行為を伝え聞いて瞬時に憤ったのだった。
 釈迦を捜し歩いて当てども無くインドの荒野を行くのは、一向にも骨の折れる事なのだ。「般若」が若し彼らの心を感じ取れたら少しは状況が好転したいたかもしれないのだが、「般若」はそれを異なる時空の彼方へと、弾き飛ばしてしまったのだ。こうなっては双方が再開できる目途も立たない。「般若」によって、再び時空の危機だけが進行するのだ。

 
 鬼気迫る「般若」の憤怒相で時空は重なり合い、捻じられて飴細工の様になる。
 祈りを捧げたその結果、その祈りが今、時空を捻じ曲げ、この世界を厭い嫌うその祈りが、人類に対する業となって報いたのだ。祈るなと言うのではない。祈りの中味が身勝手だったのだ。般若はその身勝手な祈りを包含しつつ作用している。
 
 神山は、仲間たちと時空の中を漂流しながら漸く自分の感覚を取り戻した。普通ならコーヒーが欲しい所だったが、今自分たちが置かれている状況を思い出した。
 見ればシヴァ神が一人、仲間の皆を手当てしている。文字通り皆の額に掌をかざし、シヴァの癒しの光を当てている。これは以前も多くの人たちを助けて来た光だ。神山も幾度か当ててもらった光である。
 シヴァ神は、神山をはじめに回復させたのだった。神山は「般若」の事が気に掛かり、辺りを探したが「般若」の姿は無い。あの時自分たちを、意識を失うほど強く飛ばした力は、少年の姿から憤怒の相に変化した「般若」のものなのだと気が付くまでに暫く時間が要った。そうしてやっと神山は自分を取り巻くこの時空の様子に目を転じた。時空は茶色がかった灰色の大気に包まれていた。大地は無い。皆は空間に浮かんでいるだけである。シヴァの「癒しの光」はその濁った大気の中に、仄かな明かりとなって灯っていた。神山もまた、他から見れば仄かなこの光に包まれているのだ。
 神山は、ゆっくり立あがってシヴァ神に近付いた。
「如何でしょう?どれ位で皆は気が付くでしょう?」
「なに、すぐじゃ。二日もすれば全員が元に戻るじゃろう。まだ、お前も無理はならぬぞ、少年はもう、逃げた」
「逃げた?ものすごい衝撃で飛ばされた気がしましたが、あの時に?」
「そうじゃ。あの時に苦行者の醜い業をみて憤ったのだ。既に時空を捻じ曲げている」
「では、また何か異変が起きるのでしょうか?」
「起きる。放っては置け無くなったわ!また何か悪しき者につけ入らても困る」
 ここで漸く青年助手が目覚めた。
 しかし、彼もまた、今はもう青年助手と言うものでもない。海野の研究助手は卒業したのだから。
 彼は、海洋生物学者の青年なのだ。

「えっ!?あれえ!インドですよね!」
「おい、何を寝ぼけておる。ここは異空間じゃ!わすれたか?」
「あ!シヴァ神様!あれ!インドは?」
「ある」

「あるって言われても!此処はどこなんですか?」
「異空間だと申して居る!」
「あ!はい!そうだったんですか。あのうっすねえ!喉がかわきました」

「そうか。じゃあ、おまえはだ!コロとお散歩じゃ!」
「わん!」
「ほおれみろ!コロはいい子じゃな~!」
「わん!」

 青年は喉が渇いたので、コロと一緒に清水へ行った。
「わん!」

 罰当たりは「般若」じゃ!と、シヴァ神は、苦虫を食んでいた・・・。

 (続く)

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Last updated  2024/04/20 02:09:57 AM
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