コシヒカリを越える品種を目指して【No.38 福井県産 いちほまれ】
コシヒカリ発祥県としての自負があるから、出せたキャッチコピーかもしれません。ふるさと納税で発注しているお米の到着時期と家庭での消費量ををGWで読み違えてしまい、前回紹介の福井県産コシヒカリの消費が進んでいたため、急遽つなぎで2kg米を購入しました。購入時には、特にどの品種を買いたいというプランはなく、週末に出かけた東急ストアの店頭の精米コーナーで「何にしよう」と悩んでの購入です。店頭の品種から、どうせなら前回の記事につながるからと購入したのは、産地県が一緒の「いちほまれ」でした。(結果論ですが、そちらのお米は発送連絡がないまま、このお米を購入した翌日朝に到着したため、消費するお米が一気に増えてしまいました。)いちほまれの特徴福井県農業試験場が、平成23年度から6年かけて選定を進めてきた、「ポストこしひかり」となる品種です。(ごはん彩々さんに、開発記があるので興味のある方はご参照ください)福井県は、戦後にコシヒカリの育成を担い、1970年代にはあきたこまちのもととなる株を生み出した県でもあります。それでも、コシヒカリは前回の記事で書いたように当初、栽培法に難があるとして積極的な栽培には至らず、奨励品種として育てた新潟県の品種というイメージが付きました。また、あきたこまちは福井県が交配・育種していた株を、当時設立したてだった秋田県の農業試験場から勉強に来ていた研究員がお土産で貰い、殆ど手持ちのなかった秋田県が虎の子のこの株を必死で育種して生み出したことから、育ての親の秋田の権利だとして、福井県は種苗登録を行いませんでした。(なお、秋田県も生みの親の福井県への配慮から種苗登録を行っておらず、その結果全国であきたこまちが栽培されるようになりました)福井県はその後も、「ハナエチゼン」や「あきさかり」といった他県にまで広がるような品種を開発していますが、それでも「福井らしい」質の高い品種が欲しかったのかもしれません。いちほまれの系譜としては、「てんこもり」と「イクヒカリ」のようですが、公式ホームページには言及がなく、門外漢の私がここではあまり細かいことはかけません。様々な紹介文で、「20万種の苗を植え付け、選び抜き、育て上げた」とありますが、最初からこの2種だった訳ではなく、結果的にこの2種の組合せにより出来上がったということなのでしょうか。ポストこしひかりではあっても、系譜上はコシヒカリ由来ではないことや、食味特性がコシヒカリとは異なる(甘いのは同じだが、もっちりではなく粒がしっかり系)ということを考えると、ブランド戦略としては、同じくコシヒカリの強い新潟県における新之助に近い立ち位置なのかなと感じました。命名は、「日本一美味しい、誉れ高きお米になって欲しい」という意図で、公募により選定されました。袋は統一したデザインですが、ロゴマークの使用要綱を定めたブランド化戦略を県単位で行っているようです。以下は、福井県全体の銘柄別生産量(検査量ベース)です。「こしひかり」「ハナエチゼン」「あきさかり」に次ぐ、第4位となっています。ただ、東京のスーパーで見かける限りでは、福井産コシヒカリといちほまれは見かけても、「ハナエチゼン」「あきさかり」はまず見かけることがありません。いちほまれは、今回購入した東急ストアだけでなく、東京南部のマルエツやライフといった店舗でも見かけることがあります。ハナエチゼンは早生で、早場米としての出荷が多いことも理由でしょうが、流通の大半は関西方面を向いているのではないでしょうか。購入した商品を色々見ていきます裏面です。「オカズがいらないくらい美味しい」という触れ込みとともに、20万の苗について書かれていますね。東急ストアで購入した商品なので、販売者は以前紹介した「ゆめぴりか」と同じく、系列会社の東光食品さんです。精米はこんな感じですそれでは、いただきます粒が大きく、粒感というか歯ごたえがあります。粘り気も、やや少ない。味は、そのまま食べても美味しいです。公式ホームページのチャートもみたのですが、大体その通りです。味はやや甘めも、キャッチコピーにある「コシヒカリを超える」のコシヒカリほどではありませんが、あきたこまちよりは甘いです。どこかで食べた食味だなぁという既視感があって、頭の中をいろいろ整理しました。「新之助」じゃん。粒感は新之助の方が固めかもしれませんが、それでも食感、甘みがとても似通っています。上で、位置づけやブランド戦略が近いのではと上述しましたが、まさか味まで近いとは思っていませんでした。「新之助」もまた、同時期(2008-2017頃)新潟県総合農業研究所の手により20万株の中から選抜された品種です。ただし、新之助の系譜には、「てんこもり」も「イクヒカリ」も含まれていません。2代前で、ようやく「どんとこい」が一致する程度です。にもかかわらず、新潟県と福井県という、コシヒカリの誕生に深くかかわってきた2県が生み出した「新世代の代表品種」が、それぞれ20万種の苗から選抜した結果同じような方向性のものになりました。現在の消費者の好みと「自信をもって送り出したい」品種、さらには高温耐性の最大公約数が収斂する場所がこのあたりなのかなと感じる一件でした。おかずなしで食べられる美味しいお米です。バランス型のお米ではありませんが、鳥そぼろや濃い味付けの豚肉などとは合いました。また、焼鮭やマグロの刺身との取り合わせもいけます。一方で、唯一もったいないと思ったのはカレー。お米の旨味とカレーがぶつかります。新之助に近いこの特徴なら、おにぎりにしても良さそうですよね。ちょうど、購入後・開封前にテレビをザッピングしていたところ、「いちほまれ」と「福井県産コシヒカリ」を使っておにぎりを作る専門店の特集がありました。cbcテレビからの中継だったので名古屋か東海圏のお店だと思われます。(多分ココ)プロが選ぶお米ならということで、真似しておにぎりにもしてみましたが美味しかったです。ごちそうさまでした。購入はこちらから紹介したものと同じ東光食品さんのお米は、東京・神奈川等のローカルチェーン、東急ストア系列の店舗店頭でしか入手できないかと思うので、価格面等からほぼ同等と思われる大手、名古屋食糧さんの商品を紹介します。いちほまれ 5kg 福井県産 令和5年 一宮精米 米 お米 単一原料米 【39ショップ対応】 【送料無料】エコ栽培米 【北海道・沖縄・離島送料別途必要】価格:2,880円(税込、送料別) (2024/5/20時点)楽天で購入