△●3種類の平均●△
「平均的な」と言うと、「ごく普通の」とか、ある集団の中で「例外でない」という意味になります。「平凡」と言い換えられる場合もあります。 数学の世界では、ただ「平均」というと、全ての値の和をデータ数で割った「相和平均」を指します。クラスの生徒の身長の平均、テストの平均点といったように学校在学時はおなじみの数値でした。「相和平均」は、一番「普通の」「例外でない」代表値になることが多いのですが、データの値によっては代表値といえないことがあります。「日本人の年収」は平均すれば、けっこう高いじゃないかという印象を受けます。ですが、これは少人数の億万長者が平均値を押し上げているので、平均値が代表的な数値であるとはいえません。 貧富の差がもっと大きい国では一層「こんなにみんなの収入が高いなんて嘘だろう」と思える数値になります。 たとえばこの平均値を元に、「これだけの収入があれば税金上げてもいいよね」と言われたら納得できませんね。平均値のマジックです。 「平均」その2は「相乗平均」です。 ある値が変化していく変化率の平均は、足し算ではなくかけ算で計算します。 たとえば前年度に対して今年度はどのくらい(○倍になった、○%伸びた)というデータは、かけ算(割り算)で算出します。そのデータを足し算の相加平均で出すのは誤りで、かけ算の相乗平均を使います。相加平均と相乗平均の間には、相加平均≥相乗平均の関係が成り立ちます。この関係を使うと、不等式を解く場合や証明が容易になります。「行きに時速○km、帰りに時速△kmで移動したときの平均の速度は?」と聞かれると、(○+△)÷2で計算したくなるのですが、誤りです。 時速○kmと△kmで同じ時間進んだ場合は相加平均でいいのですが、進んだ時間が違う場合は、時間差も計算に入れないといけません。 正答は、調和平均で簡単に計算できます。 調和平均は仕事算にも使います。同じ仕事を、Aさんは1時間、Bさんは2時間かかって仕上げます。ふたりで一緒にやったらどのくらいの時間で終わる?という計算です。もちろん、(1+2)÷2で1.5時間なわけないですね。 調和平均は、音楽の平均律と関係が深いそうです。