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カテゴリ:novel
狭い立方体の中の輪状のものに座り込んで、少し僕は落ち着く。
飯も食べ終わった8時過ぎの事だった。何気なく、いつもの様にトイレに入り込み、多少の時間を過ごした。 用を終えて出ようとした、まさにその時、僕の体はふわっと浮き上がり天井に叩きつけられた。 よく分からないが、とにかく痛いとしか理解できないまま、今度は床に激しく叩きつけられる。 と思えば、また天井に投げ出される。数回それを繰り返し、僕の意識は遠のいた。 しばらくしてそのふしぎな現象は治まった。僕は意識朦朧ながらも、床に伏せている自分が分かった。 一体何が起こったのか。全くもって理解不能だった僕は、何が起きたか確かめようとドアノブを捻る。 が、どう押してもドアはビクともしないのだ。向こう側に何かあるのか。どちらにせよ、とてもじゃないが開けられそうにはない。 開かないなら仕方ないと倒れながらも辛うじて動けた僕は砕けたトイレの窓から頭を出した。 暗くてあまりはっきりは見えなかったが、僕の家の正面の2階建ての家が平地になっていた。 事態がよく理解できず、僕は窓の破片が飛び散る中を体を引っかけながら這いずり出た。 すると、前の家だけではなかった。団地一帯、全てが瓦礫のくず山となっていた。 言うまでも無く、僕の家もだ。いや、僕の家は、僕の居たトイレだけがぎりぎりで原形を止めていた。 道路を見ると見た事も無いような激しい亀裂がアスファルト一面に広がっていた。 電柱は全てが全て、稲の様にひれ曲がり、あちらこちらで電線が千切れていた。 僕ははっとした。地震がおきたんだ。 そして僕はこのくず山の中に親が居る事を当たり前の様に忘れていた。 砕け散った僕の小さな街の小さな団地で、僕は事態を理解するのに一杯一杯になっていた。 何をしたらいいのか、何が必要なのか、どこに逃げれば良いのか、習った事も全て頭から消え失せていた。 しばらくして僕はその場に跪き… お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005/11/13 10:18:49 PM
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